拾参
ザビエルはイケメンです。
六月十五日。午前十時。珍名学園高校付属図書館第一塔。
蔵書の数は、国立国○図書館を超えるかというほどたくさんあり、一つの建物では入り切らずに三つまである。
外観は、中世の塔を思わせるようなステキな造りで、ファンには人気が高い。
さて、バリバリ現代都会っ子のあたしは、あんまり本を読まない。イコール、図書館へ来ない。
あれ? でも、何であたし今、図書館にいるんだ?
答えは簡単、調べたいことがあるから。
今日の深夜、さっそくやろうと思う、メジャーな呪い方、丑の刻参りの儀式のやり方である。
何故って?
まず、教育○員会と珍名学園の教師を呪いたいから。
いや、殺そうとかそんなことは思ってないよ? せいぜい、腹痛で寝込むくらい。
よし! さぁて、今から丑,の刻参りの方法の本を探しに__
「待ちなさい、亜漓栖ちゃん」
「撫子ぉぉ! これだけは、ご堪忍を!」
「私は、どこぞの悪代官なのかしらね。現実逃避してないで、勉強しましょう、勉強」
制服のすそをにぎり、逃げ出そうとするあたしを撫子が満面の笑みでつかまえる。
そう、それはまるで。獲物を追うハンターのような……!
「一週間後には、テスト期間があるのよ。勉強しなさい」
「命令形!?」
「ふふふ…… この世の全てを呪ってやるのですわ……」
「そうだね、あけちゃん……!」
「亜漓栖ちゃん、曙ちゃん。現実逃避しても何も始まらないわよ」
仕方なしに図書館館の勉強スペースで、撫子の目の前に座る。
日本史の教科書の適当なページを開いて、出てきたザビエルに落書きをしていると。
あたしの隣にいたあけちゃんも同じように、勉強したくなかったようで黒魔術の分厚そうな本を読んでいた。
顔に陰りがましてて、怖い! 怖いよ、あけちゃん!
「鷹月亜漓栖。何故落書きといえば、ザビエルなのですか」
「え? 何を言ってるのかな、亜覇ちゃん! 落書きといえば、ザビエルでしょうが!」
丁度、頭のあたりに落書きし終えたとこで、
口をへの字にした不機嫌そうな亜覇ちゃんが話しかけてくる。
いやいや、落書きといったらザビエル! 多分、学生の落書きされてる肖像画トップに入ってもいいくらいだよ!
「知っていますか。その日本人が書いたザビエルは、後の想像画です! 見るがいいのです、鷹月亜漓栖! これが、西洋のザビエルなのです!」
「うわぁぁ、まぶしいっ!」
世界史のノートをとっていた亜覇ちゃんは、勝ち誇ったような笑みで私にどこかの黄門様並に神々しくノートを高々と見せる。
それにしても、何だっ、このフサフサなザビエルはぁぁ! お髭をたくわえた、ダンディなイケメンじゃないか!
「負けた…… 負けたよ、亜覇ちゃん……」
「ふふふふふ、亜覇の勝ちです!」
「静かに勉強しろ」
隅で勉強していた惣福脇にしかられました。