壱
短めです。
「亜漓栖。高校はこの学校へ行きなさい」
ある日、親に呼び出され、読んでいた漫画にしおりを挟んで、嫌々行ってみると。
妙に深刻な顔をした親二人が椅子に腰掛けていた。あたしも座るように言われ、お父さんたちの前の椅子に座る。
どうやら用件は、現在中三であるあたしの高校進学についてのことらしい。
「特に行きたいわけでもないけど、大学進学に有利なこの高校に決めてるんだけど…… というか、何で十二月に言うかな、それ」
「特に行きたいわけでもないなら、この高校でもいいだろう。この高校だって大学進学なら有利だぞ。亜漓栖が今行きたい高校より、名門大学の進学率良いし。お父さんはここ、オススメだぞ☆ 」
中年のおじさんがきゃぴっとした声で言う。うわ…… シュールというかなんと言うか……
「でも、十二月だよ!? 受験勉強間に合わないって」
「それなら大丈夫だ、ここは亜漓栖なら受験勉強も何もしないで入れる。何よりお父さんたちの出会いの場でもある。それに設備も良くてきれいだし、広いぞ」
「それって、まさか! 裏口入学!? 嫌だよ、あたしそんなの! 普通に勉強して入るよ! 」
「亜漓栖ちゃん、違うわ。普通の正当な入学よ」
お母さんが可笑しな子というようにふふふっと、笑う。いや、高校で受験とか推薦じゃないと入れないよね。義務教育じゃないよね。
「じゃあ、何であたしなら入れるのよ! 」 それは、とお父さんが口を開く。
「亜漓栖が珍しい名前だからだ」