03 ~高貴side~
「よし、帰るか…」
高貴は鞄をとって立ち上がり、教室からいつもの通り、一人で立ち去ろうとした。
が、その時だれかに呼び止められた。誰かが俺に話しかけてくるなんて、珍しいな…。
「なぁあんたさ、いつも一人なのか?」
なんだこいつ…?
唐突に失礼ともとれる質問を投げ掛けてきたこいつは、クラスでも浮いた存在である榊隆也だった。
何でこいつが俺に話しかけてくるんだ?
「何か用ですか?」
不審に思いながらも、俺は猫をかぶってそれに対応する。
「お前ってさぁ友達いないだろ?」
「……何なんですか、いきなり?」
友達がいないだと?それはお前の話だろう。と言い返すと後々面倒そうなので、それは口には出さなかった。
「いや、だって見てる限り誰かと話してる風もないしさ…ちょっと、気になって…」
「見張ってたんですか?趣味が悪いですよ?」
「バッ、しゅみじゃねぇよ!」
はぁ。
ため息がこぼれて、再び疑問が脳裏をよぎる。
何でこいつ、俺に話しかけてきたんだ…?嫌みを言うためになんの接点も持たない自分に話しかける動機があるとは思えない。
「で、本当に何か用ですか?ないなら僕はお先に失礼します」
「いや待てよ、あのさ…その~何て言うかだな…」
「考えがまとまっていないのなら、明日改めて話してくれると助かるんですけど…」
口ごもる隆也を一瞥して、ドアの方に視線を向ける。
「あ、わりぃ。用事でもあるのか?」
「えぇ」
「じゃ、また明日にするゎ。忙しいのに引き留めてごめんな~。じゃあな!」
そう言って隆也は去って行った。
用事があるというのは本当だ。
今日だって、家庭教師が来る。あの家庭教師は課題を出すから面倒なんだ…。
家に帰る、という学校にいる時とは違う憂鬱感に高貴は再びため息をつく。
そして、今日も一人で、学校を去った。
…続く