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second.

なんか長くなってしまいました(汗



飽きずに最後まで読んでもらえたらと思います。

Second


「ここが駅ね。……ねぇ、変じゃない? 交通機関なんてずいぶん前から 使えなくなっちゃったはずなのに、なんでわざわざ地下鉄は残したのかしら」

いかにも不思議そうな声で立華が疑問を口にする。

「そりゃ単純な話だな。民間人には最後まで知らされなかったらしいが、発生した原食生物を核を使って掃討をしよう、なんて物騒な提案をした国があったらしくてな」

「―――――わかったわ、シェルターね? 国は念の為核から自分達を護る為のシェルターが必要だった。違う?」

肩をすくめて見せて、妥協するような動作をする。

「ご明察、だ。にしても、俺がなんでそんな事を知ってるか、訊かないんだな」

「あらかた、生き残りの集団の一部は軍だったんじゃない? こんな状況では情報の開示は避けられないんだし」

「……またまたご明察」

苦笑いしながら茶化すように拍手をする。

とは言え、このシェルターは使われる事もなかったのだが。

もちろん、かなり多くの人が入れるスペースなのだから、その判断は正しいと取れる。

その理由には二つあり、幸か不幸か、核の使用を推していた国々は早々にEE27が原因で滅びていったのと、もう一つは、原食生物が発生当初に地下まで入り込み、何体かで地中に穴をあけたせいでこの人工の洞窟は使い道のないままな訳である。

「でも、やっぱり矛盾していないかしら? 暁くんの情報量は一緒にいた人達のおかげにしては……」

急に思い付いたのか、二つ目の質問を口にする。

その立華の質問に一瞬足を止めて振り返る。

「いや、皆のおかげとしか言いようがないよ。でも、強いて言うなれば本や日記だな」

「日記って……」

「ほら、おまえも知ってるべ。感染でもなんでも、あのバクテリアで多勢の人が死んでからさ。皆して日記書いたんだろ。自分が生きていたという記録を残すために。収集に出るとさ、たまに見つかるんだ、それが」

それから更に、目的のビルまでの時間で、暁は立華に説明してやった。

自分があの学校に行き着く前から、そういった日記を見つけたら回収し、学校の図書館に保管するようになっていたこと。そして、それらから学んだ多くの事柄を短い時間が許すまで話した。

しばらく歩いた後、目標の目の前まで来て立ち止まり、銃を構えて、暁が続ける。

「他の皆がいなくなっても、日記の回収は重要な目的の一つだ。あれは……人が生きたしるしだから。その人の命と同じくらい大切な物だと、俺は思ってる。だから――――」

「わかってるわ。だから、その標を見つけてあげるんでしょ?」

立華も銃を構え、弾を装填する。

暁もまた、返事の代わりにスライドを引く。


今回の目標はさほど大きくはない五階建てのビル。といっても、地下にはずっと先まで階層があるのだが。地下の階のほとんどは地下に穴を空けた原食生物達のおかげで穴だらけ。悪いところだと、穴から地下深くのマグマが湧き出ているなんて事もあるらしい。

これらの点を簡単に説明して、暁を先頭に歩き出す。暁の指示でお互いに数歩分の間が空いている。これで、かなりの悪条件が揃わない限りは、奇襲を食らっても片方は逃げ延びれる可能性がある陣形だ。

暁はこれ以上彼女を不安にさせない為にはっきりそうとは言わないが、立華の頭のキレの良さにはとうに気付いている。恐らく、自分の意図に、彼女が気付いているとも考えていたりもする。

悪条件。出口が限られている封鎖された空間に、現場初日の素人娘。

何もなければいいのだが。

そんな不安を抱えながらも、暁は念を押すのを忘れはしなかった。

「最後に一つだけ言っておく。敵に遭遇したら、俺の指示は二の次でいい」

「……えっ? そんなんでいいの?」

「ああ。その代わり、パニクらずに落ち着いて行動してくれ。それさえ守ってくれりゃ後はテキトーだ、テキトー」

「は、はあっ⁈」

暁の発言に対して脱力した立華がすっとんきょうな声を上げる。

そんな彼女を見ていると、自然に微笑む自分がいた。

「ははっ……これな。俺が初めて収集に出た時に先輩に言われたんだ。その先輩さ、肩の力が抜けて良いだろう、とか言っちゃってさ。俺も、今のおまえのように言い返したっけか。だけど、本当に力、抜けたろっ?」

笑いかけながら言う。そして、その一言と共に所々ひび割れた自動ドアを蹴破り、中に入れるように用意する。

中に入ると、元は中小企業だったのか、埃っぽいロビーが眼前に広がる。ここの社長の趣味の悪さが見て取れる気味の悪い彫刻がいくつも並んでいた。あお絨毯じゅうたんの一部には、不自然な黒いシミが残っていた。

「ここの四階が社員食堂なんだ。そこを探したら、もう一軒となりのファミレスを見て今日は帰投な」

説明を続けながら上の階への階段を探して辺りを見渡す。

ものの数秒で階段は見つけたが、一応この階も何かあるかもしれないので散策する。

暁が周りを物色し、立華が警戒体制を敷く。本当は自分が戦闘体制を取ってやりたいのだが、文字通り血生臭い物も少なくない。さっきの絨毯もそうだが、彼女にはそういう荷をなるべく背負わせたくなかった。

一階から三階までは大した収穫は無かった。当初の予定通りである食堂に向かうための階段に足をかける。

その階段は今まで通った物の中で一番損壊が酷く、二人掛かりでも通過に少し苦労した。

穴が空いた瓦礫がれきの隙間から零れる夕陽が目に眩しい。

「なんだかんだ言っても建物の中は割りと安全じゃない? これだったら、一人で造作もないんじゃないかしら」

「馬鹿、そんな単純な訳あるか。じゃなきゃ死人なんか誰一人出なかっただろ……」


ーー☆ーー☆ーー☆ーー


四階は情報通り、小さな食堂になっていた。

辺りはあちこちに破損した食器やテーブルなどが覆っていた。これほど物が散らかっていては、どこに何があるかわかったものではない。

しばらく二人でそこらを探索する。

少しの静寂の後、静かだった空間に声が響く。

「おっ、立華ァ、これ見てみろよ。電池だ、珍しー」

三個ほど転がっている小さな円柱の形をした物質を手の中で転がす。割りと外装が新しく見えるので、まだ使えるかもしれない。

「私も見つけたわ、この缶っ……」

「どれどれ。開けてみんしゃい」

始めての収穫がよっぽど嬉しかったのだろう。やや紅潮した顔で、堪え切れない喜びを胸に、少女がアルミ製の缶を開ける。

「これは……」

「ベンガルオオトカゲかっ」

「違ーうっ! どこをどう見たらトカゲに見えるのよっ。クッキーよ、クッキー!」

とっさにツッコミを入れる立華。暁じゃないが、本当に掴みは完璧である。

「なんだ、クッキーか。すげー。おまえが来てからラッキー続きじゃねーか。ラッキーガールか、おまえは」

アルミ缶を閉めてから、手持ちのリュックに先ほどの電池と一緒に仕舞う。

さっき褒められたからか、嬉しそうな顔を隠し切れていない少女。そんな彼女を見ていると自分まで微笑ましかった。

確かに、乾パンの中にある砂糖以外に甘い物を食べる機会は滅多にない。だが、そのような喜びなんかよりも断然、他人といることの方が自分にとって有意義で、大切なことかもしれない。

そんな調子で感傷に浸り、壁の外へ目をやって息を呑む。

「やべっ……もう日が暮れるっ。行くぞ、立華! 今日は戻ろう。途中に時間を掛けすぎたんだ。夜になったら下手に動けなくなる」

急いでそう声をかけると、立華の反応は実に素早く、もうすでに階段に手を掛けていた。

脱出にはあまり時間がかからなかった。ビルの出口付近にも原喰生物の影も無く、学校に向かう為の道にすぐ着けた。


「ねぇ、収穫っていつもこれくらい?」

「いや……今回は普段よりもだいぶ時間無かったけど、ここまでっつーのもそんなに無いな」

「まあ、そんな物かしら」

「このご時世、食える物があんなにあるだけでもかなりありがたいことだでぇい」

指を一本前に出して言う暁を、立華は呆れた目で見る。

「あなたって、その救いようの無さげなキャラ、どうにか」

ーーーーできないの? とでも言おうとした立華の口を、暁が急いで手を伸ばし塞ぐ。

「しっ。奴さんのお出ましだ」

二人して角の民家の陰に潜み、数十メートル先を見ると、二匹の原喰生物が、かなり派手に壊れた建物から出て来たところだった。

しばし息を殺して待つと、あっさり彼らとは逆の方へ行ってしまった。

「暁くん、どうする? 別の道にする?」

「この道なら暗くなるまでに着けるんだ。ギリギリまではこの道で行く」

そう言って銃を構え直して更に進んで行く。

「比較的に少ないと言っても、やっぱりいるのはいるのよね~」

「当たり前だっ……だいたいな」

「あ~、聞こえない聞こえない」

両耳を手で塞ぐ少女を見て、珍しく暁が彼女に呆れるような視線をぶつける。

子供のような立華の言い訳に反論をしようとした所で、原喰生物が出て来た廃ビルに差し掛かった辺りで暁が足を止める。

「どうしたのよ?」

「なんつーか、何かあるような……無いような……」

顎に手を触れて何やらブツブツ言っている彼を見て、立華が暁を後ろから蹴飛ばす。

「ぐあっ」

「まどろっこしいのよっ。気になるんなら入ってみたらいいじゃない」

「よ……し。行ってみます」

蹴られた腰をさすりながら、再び暁が歩き出す。

(なんとなく行かなきゃならないような気がする……。でもなんだか嫌な予感っつーのかな、これ)

奇妙に囁く直感に疑問を抱くが、暁はあくまで足を止めない。

その建物は二階建てだが、先ほどのビルほど形を保てていない。一階は、壁が半分ほどしか残っておらず、何本かある柱が一つでもなくなれば二階もろとも崩れ落ちてしまうのではないだろうか。少なくとも、そう思えるくらいに悲惨な有様なのは明らかである。

「俺、上見てくるからさ。出口の確保だけ気にしながら、一階に何かないか探しといてくれ」

「わかったわ。……気を付けて、ね」

こんなタイミングで彼女にそんなことを言われるとは思っておらず、少し面食らってしまった。それでも、俺が黙っていると少し不安になったいく。そんな少女を見て、一応笑いながら手を降り答えてみた。

「え、ああ。おまえこそ、だよ、馬鹿」


二階まで上がって来て辺りを見回す。外見と同様に、荒れ方が先ほどよりずっとひどい。過去に誰かが荒らしたのかどうかは不明だ。確か、前の学校のメンバーも立ち入ってないはずだ。しかし、物を喰らうだけの原喰生物

がここまで物を散らかすのはまず無い。だろう。にも関わらずにこの有様。かなり不自然なのは目に見えている。

「さ~て、掲載開始から早数回……いよいよきな臭くなって来たなぁ、おい」

(そういや、立華……あいつ、たまにキャラ破綻するような発言しやがる。もしかしたら、俺もあいつのことを読み違えてんのかもな)

そこまで考えた矢先、出会って数時間の少女についての暁の思考に邪魔が入る。

「きゃああぁぁっ……!」

「ーーーーっ⁉ 立華っ」

瞬時に考えるより先に、身体が動いていた。気付いたら埃っぽい床にうつ伏せている立華の元に駆け寄るところで。

「どうしーーーー」

心配して話しかけた時になって、鼻につく臭いに気付いて言葉をつまらせる。立華が目を逸らしている方を見ると、まだ若い女性がその場に倒れていた。

「おい、なんだ、コレ……」

彼女に何があったのか訊こうと振り返る。

その時に、立華のすぐ前が吐瀉物としゃぶつで汚れているのが目に入る。

彼女はうつ伏せていた訳じゃなくて、前屈みで口元を押さえていたのだ。

そうとわかった暁が、立華の背中をさすってやる。

(おいおい……こりゃまた、なんで人間の死体がまだ……?)

例の女性に目をやると、辺りがまだ乾き切っていない血で濡れていて、腹の一部だけがごっそり持っていかれている。これは恐らく、先ほどの原喰生物の仕業だろう。

ついでに、近くに転がっている紅いポーチを拾い、自分のリュックに仕舞う。

とりあえずはまだ明るい内に二人で帰らねばならない。

「ほら、水だ。口、濯げよ。悪いがすぐに出るぜ」

言ってすぐにペットボトルを取り出して立華に手渡す。

顔を上げた彼女顔は真っ青で、唇は色を失っている。また、目も光を失ったようで、その瞳には涙の跡があり、少し目が腫れている。

「ん? なんだ、花?」

ふと目をやった女性の死体の手には一輪の花が握られていた。それだけではない。その体が虹色の光沢を放っている。……ちょうど喰われていない部分が。

そこで、口を濯いだ立華が無言で水を返して来た。だが、その後もなかなか足を動かそうとしないので、ため息をついて手を差し出す。

「帰ろう、おぶってやるからさ。飯食ったら気分も良くなるだろ、なっ?」

彼が笑いかけると、立華もゆっくりとその手を取るのだった。


thirdへ続く……

感想などありましたら聞かせてもらえれば幸いです。

どんどんください。参考になりますのでっ


また、次でやっと物語の一日が終わります。

ペース掴めなくてごめんなさい…


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