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Days and the bloody starlit sky that begin from now on

Days and the bloody starlit sky that begin from now on     

☆これから始まる日々と血まみれの星空☆


First


「ねえ、ちょっと、暁くん。こんな真っ直ぐ目的地に向かっていいの?もっとこう……上手く隠れながら行ったりしない、フツー?」

銃を構えながら歩き、駅前を目指す途中に、少し呆れたような声音で立華が俺に訊く。

まあ確かに、自身もそう思うほど直線の道を選び進んでいる。

「いや、もう数時間で日が暮れる。下手に迂回うかいし過ぎても意味が無い。幸い、近くには原喰生物の気配も無いし、大丈夫だろ」

「気配って……さっきまでの暑さで頭やられちゃったんじゃない?」

(なんか、段々俺の立場が危うく……)

そこまで考えて思い留まる。これ以上考えるとうつになりそうだった。

「まあ、もし遭遇したら至急迎撃、及び離脱だっ。無理に殺る必要は無いんだから。俺が前衛、立華が援護。わあった?」

ヘコみながらもそう言うと、流石の彼女も緊張した表情でうなずく。

そして、立華の真面目な考えとは裏腹に、その時暁は思っていた。『出会ってまだ数時間なのに、掴みは完璧だよなぁ、二人でコントやってるみてー』と。

このようなアホな思考の暁とは違って、立華は周囲に、より意識を巡らす。自然と銃を持つ手に力が入り、額には汗が見られた。

だが、これといって問題は無く、静かな道路と、半壊している家並みが延々と続く。

原喰生物は多少の個体差はあるが、熊よりも巨大な体を持ち、体毛などが無く、代わりに岩のような肉体を持つ獰猛どうもうな生物なのだ。それほど大きな四足歩行するバケモノが接近してくれば、嫌でもその足音で気が付くはずだ。そして今、そのような音は皆無であり、むしろ不気味な静寂がこの場を支配していた。

「うん、もうすぐでB地区に入るな。旧居住区を抜けると、ほら。もう高い建物が見えてきてる。……道が開けたら原喰生物やつらに襲撃される可能性が上がるから、覚悟しとけよ」

このタイミングでプレッシャーをかける事が吉と出るかは立華の根性次第だろう。

自分としてもあまり気は進まないが、最悪覚悟だけはして置いてもらいたい。もし立華が動けないとしたら自分一人で彼女を庇いながら戦わねばならない。だが、やっと出会えた生き残りを簡単に喰わせるつもりなど、俺には毛頭無いのもまた、もちろんの事だ。

そもそも彼女は何故生き残れたのだろうか?

俺には過去の記憶が無いが、恐らく両親の研究施設に何らかの仕組みがあり、身を守られたのだろう。そして、自分は立華にその事を話したのだが、俺は彼女の身に関して一切説明を受けていない。

訊いてみるか一瞬迷ったが、言いたくない事があるのだろうか。そうじゃない限りは、すでに話してくれている気も―――――――――

「暁くん、止まってっ」

考えている途中に立華に腕を掴まれ、瞬時に足を止めてその場でしゃがみ込む。

目を凝らして遠くを見ると、比較的に小さめな原喰生物が旧居住区を抜けて、開けた辺りに一匹いるのが目に入る。

「何してるのっ」

「ああ……悪い。でもちょっと待て、奴らは人間が言うところの五感の一部がかなり鈍いんだ。まだやり過ごせる。戦闘準備をして少し様子を見よう」

すぐにいつもの思考が巡り、今にも走りだしそうな立華を引き留め、自分と同様にしゃがませる。

息を殺して待つこと数分。思っていたよりもずっと早く原喰生物はどこかに去って行った。

「――――――――何をやってるのよっ、色々偉そうに言っておいて!下手したらこんな所で、両方バッタンキューだったわ!」

「いや、バッタンキューって……。すみません、ボーっとしてました。ちっとした考え事と言いますか、まあ、俺が悪いです。以後気を付けますので」

暁が苦笑しながらそう言うと、立華はもの凄い形相で彼のことをねめつける。

(うわっ、俺が悪いのは確かだけど、立華こいつ、すっげー怖い……)

そんな思いで立ち上がる暁だが、立華は一向に立ち上がろうとしないでうつむいていた。

どうかしたかと手を貸そうとした時、彼女のしゃっくりが聞こえて伸ばした手を止める。

「バカッ、あなたみたいな人でも、私以外に生きているただ一人の人間かもしれないのよっ!勝手にそんなどうでも良い理由で死のうとしないで!」

なんと、声を掛けようと再びしゃがんで立華の顔を望みこもうとした瞬間、逆に俺が涙目の少女に怒鳴り散らされたのだ。

しばらく何も言えずにだまっていると、何を考えたのか、立華が俺に銃を向ける。

「ちょっ、んなモン向けんな!死ぬなと言っておいて、俺を殺すおつもりですかっ!?」

何歩か後ずさりしてから手を前にし、反射的に防御の姿勢を姿勢を取って叫ぶ。

銃口をあちこちにブンブン向ける立華はかなりヤケクソに見えた。

「お、おいっ、落ち着けっ。俺が悪かったから、とりあえずは落ち―――――――」

「うるさいっ!」

この時の彼女の顔を見て彼は悟った。『このままじゃられるっ……』

そうとっさに死の息吹を間近に感じた暁は、とりあえず彼女の動きを止めるためにと、瞬時に、出会って数時間の少女の細身な身体を抱きしめた。

まるで恋人のような厚く、優しい抱擁ほうように、立華は自らの身体を震わせ、喜びに満ちた泣き声を――――――

「いやぁっ……何すんのよっ!」

―――――――では無く、嫌悪に満ちた泣き声を発する。

それだけでなく、エグい音と共に彼は殴り飛ばされたのだった。

「があっ……おい、感動のシーンを拳一発で台無しにするな、お約束だけどっ。ほんの少しだけ、ワタクシ期待してたよっ?!」

勢いで突っ込んだ暁だが、殴られたほほは赤く腫れている。

だが、そんな事は耳に入らなかったように、今度は拳を四方八方に振り回す立華だった。なんだか手がいくつもあるように見えるほどのスピードで。先程のダメージが無ければ、暁は『北○神拳かっ』と突っ込んでいたに違いない。

そんな少女を見て、暁が無理矢理、立華の手を取り、彼女の目を見つめる。

「止めてってばっ……放してよ、暁くんっ」

「嫌だっ、断るね。良いだろ?女の子なんて、見るのも久しぶりなんだし、手ぐらい繋がなきゃ、欲求不満で死んじまうよ~」

暁が不敵な笑みを浮かべながら激しく不毛な発言をすると、立華は急にシンと鎮まり、その場に手を突いて泣き始めた。その泣き顔を目の当たりにして暁は更に身に刻んだ。

俺はこの娘を見つけた時に心から驚き、すぐにという訳じゃなくても、喜んだんだ。それなのに、その相手が『ボーっとしてた』なんて理由で死にかける程の危険に陥ったら、彼女と同じくらい憤り、悲しんでいただろう。……いや、昔もそんな理由で怒鳴られたかもしんね。あー、学習能力がない自分が不甲斐ない。

「ゴメンな……こんな展開で。ほら、行こうぜ。ガッコに戻ったら愚痴でもなんでも聞くからさ。今は仕事な?」

「うっ……バカァッ、死ねぇ! うぐっ、ヒック、バカァ…………」


なんだかんだ、しゃっくりしながら泣きじゃくる立華が落ち着くまで数分。やっと二人して立ち上がる。

「ふぅ……時間が無いな。とりあえず行こう。目的地はすぐそこだ」

ため息をついて歩き出すと、立華も黙ってうなずき暁に並ぶ。そして、何とか吹っ切れたのか、清々しい顔をして口を開く。

「暁くん?」

「んー?」

「帰ったら死んでちょうだい」

「えー?」

「問答無用」

「ぺー……?」


日がジリジリと暮れ始めようとする午後の陽射しの中、二つの影が楽しげ(?)に揺れるのであった。


Second に続く……。


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