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回復魔法が万能な異世界で、俺だけ治さない理由がある 〜触ると悪化するので、何もしない治療師やってます〜  作者: 夜凪レン


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第41話 真似をした人たち

 噂は、思ったより早く広がった。


 俺が次の街に着いた頃には、

 もう形を変えて伝わっていた。


「触らない方が治るらしい」

「回復魔法は、待ってから使うんだ」

「何もしないのが、あの異端治療だ」


 ――どれも、違う。


 だが、完全に間違いとも言えない。

 一番厄介な歪み方だ。


 宿の裏手で、小さな人だかりができていた。

 治療官でも、神殿でもない。

 ただの町医者と、その弟子らしい若者。


 地面に寝かされているのは、子どもだ。

 高熱。

 呼吸が浅い。


「……待て」

「今は、触るな」


 若者が、得意げに言う。


「記録にあった」

「動かすと、閉じるんだろ?」


 町医者は、不安そうに頷く。


「……そう、らしいな」


(らしい、か)


 俺は、離れた場所で立ち止まった。

 声をかけない。

 止めもしない。


 これは――

 俺が作った状況だ。


 若者は、じっと子どもを見つめている。

 待っているつもりだ。


 だが、呼吸が見えていない。

 脈も、触っていない。


 判断が、止まっている。


「……まだか」


 焦りが、空気に滲む。


「待てばいいんだろ」

「待つのが、正解なんだろ?」


 その言葉で、分かった。


(……正解を探してる)


 それは、もう俺のやり方じゃない。


 数分後、子どもの身体が小さく震えた。

 熱が、急に上がる。


「……まずい」


 町医者が、慌てて祝福を使う。

 光が灯る。


 遅い。


 流れが、受け取らない。


「……っ!」


 母親の悲鳴。


 治療官が呼ばれ、

 騒ぎが大きくなる。


 最終的に、子どもは助かった。

 だが――

 呼吸は荒く、後遺が残りそうだった。


 若者は、青ざめていた。


「……違った」

「書いてある通りにやったのに……」


 町医者は、何も言えない。


 俺は、その場を離れた。


 声をかければ、

 「どうすればよかったか」を聞かれる。


 答えれば、

 それが次の“正解”になる。


 それは、できない。


 夕方、街の外れで、ルドと再会した。

 偶然じゃない。


「……始まったな」


「ああ」


 短い会話。


「成功例もある」

「だが、失敗の方が多い」


「当然だ」


 俺は、歩きながら言った。


「判断を借りてるからだ」


「借りる?」


「自分で見てない」

「誰かの言葉を見てる」


 ルドは、帳面を閉じた。


「止めないのか」


「止めたら」

「俺が、正解になる」


 ルドは、深く息を吐いた。


「……残酷だな」


「優しいと思ってる」


 これ以上、俺がやれることはない。


 正解を渡さなかった。

 だが、考える余地は残した。


 それを使うか、

 捨てるかは、

 世界の選択だ。


 夜、野営をしながら、俺は息を整える。


 吐く方を、長く。


 真似をした人たちは、

 善意だった。


 だからこそ、

 一番、危険だ。


 それでも――

 止まるという発想は、

 もう消えない。


 それが、

 この物語の、

 最後まで残る火種だった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


あと数話で完結となります。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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