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Core Reid

作者: しまたん

あらすじだけ小説


この作品はあらすじだけです。

細かい部分はご想像にお任せします。

プロローグ

近海への隕石落下によって未曾有の大災害に見舞われてから15年が過ぎ、復興によって近未来化を果たしたこの国では、Reidと呼ばれる人型ロボットの普及によって、中高所得者層では一家に一台、家事手伝いや介護ヘルパーなどにReidを活用する時代であった。軍事利用も検討される中で、Reid同士を戦わせるロボットバトル「Reid arena」と呼ばれる競技は、近代的娯楽として人気を博していた。そんな中、廃棄物処理施設で、重機オペレーターの職務に就くリックは一体の女性型Reidを廃棄物の中からたまたま見つけだし、持ち帰ってしまうであった。この事が、自分の運命を大きく変えてしまうとは知らずに。


第一話

Reid arenaで3年連覇チャンピオンの西音寺レンは世界屈指の大手企業、西音寺グループの御曹司である。大歓声の中、今年も決勝戦で余裕の勝利を収めるはずであったが、結果は敗退。レイアと呼ばれた無敗のReidに、あっけなく廃棄処分を言い渡す。

それからしばらくして、いつものように廃棄処理場で重機を操作し、廃棄物選別の仕事をしていたリックは、廃棄物の中に女性の手を見つけ慌てて救出に向かう。失われた四肢から女性の正体は廃棄されたReidである事に気付くリックであったが、そのまま見過ごす事が出来ず、規則違反にも関わらず、同僚のキースの助けを借り名もなきReidを持ち帰るのであった。


第二話

キースによって状態がチェックされる名もなきReid、その中でReidに関する知識を得たリック。再起動にかかるメンテナンス資金を貯めるためにも、翌日残業する意気込みで出勤するが、正体不明の汚染物質によって、廃棄物処理施設がしばらく閉鎖となる。思わぬ長期休暇となり落胆するリックは、同じく長期休暇となったキースの家に転がり込み、しばらくキースのメイド型Reid、スノウの厄介になる。

そんな中、廃棄物処理施設では、謎の汚染物質によって重機AIが暴走し、施設に甚大な被害が出たため、西音寺グループの民間警備会社が派遣するReid特殊部隊によって暴走重機の鎮圧作戦が行われていた。


第三話

リックのReidを再起動させるための資金調達を行うため、実家に戻るキース。背中を押されたリックは、Reid arenaの観戦に向かう。エントランスで迷ったリックに話しかけたのは、幼馴染でReidマスターのカナエであった。カナエのReid、ヒスイの戦いを観戦し感動したリックは、自らもReidマスターになりたいと思い始めていた。夕食を賭けた試合に勝ったカナエは、リックと食事に向かうが、突然の豪雨に雨宿りを余儀なくされ、近くの家電店へ入る。ショーケースに並ぶReidを見ながらはしゃぐカナエに過去の記憶を重ねるリックであったが、モニターに映る重機暴走の報道にいい知れぬ不安を抱くのであった。


第四話

重機鎮圧の為に派遣されたReid特殊部隊9機は無惨に破壊され、処理場の廃棄物と化していた。唯一破壊を免れた隊長のベータは廃棄物の影に潜み無人司令機の指示を仰ぐが、大雨による通信障害により作戦行動不能となっていた。無機質に指示を待つベータであったが、ふとAIにノイズが走るのを感じ始めていた。それは生物だけが抱くはずの感情「恐怖」であった。また、指令書に隠された不可解な特別指令にも不信感を抱くようになっていた。その時、処理場区画各地でサイレンが鳴り響く。ベータの瞳は、上空を旋回する司令無人機の更に上の厚い雨雲の隙間に、鈍く光る大型の機影を捉えていた。


第五話

異例の処理場爆撃とReid特殊部隊隊長の「失踪」から2日後、世界中がこの報道に震撼する中でリックはキースと共にReidのコアパーツ換装とメンテナンスを終え、再稼働を果たしていた。途中不可解な点がありながらもリタと名付けられたリックのReidは、Reid arena出場のための審査基準を満たすためカナエの手を借りチューニングを行っていた。リックとカナエの様子を伺うスノウは、自らの思考回路にエラーとも取れる疑問を抱くのであった。

一方で、爆撃という異例の処置に対し国家保安省から査察を受けた処理施設を運営する企業マテリアルズゲートは一連の騒動を西音寺グループの独断によるものと表明し、白羽の矢は民間警備会社代表取締役、西音寺レンに向けられた。


第六話

ヒスイとの模擬戦で、ビギナーとは一線を画す動きを見せるリタ。それだけでなく人間的な動きや言動から、あきらかな不信感を覚えたカナエとスノウは、リタを取得した経緯をリックとキースに問い詰める。白状したリックに、処理場の不審な事件との関係性を推察するカナエであったが、スノウもまた、自らに芽生えつつある自我に戸惑っていた。キースは一連の騒動やリタの動きから、非公開となっているアリーナチャンピオン機の突然の失踪なども関連があるとして、調べてみる事とした。

拾得後初めてリタを自宅へ連れて帰るリックもまた、隣で浮かれるリタに戸惑いを隠せないでいた。


第七話

西音寺レンによる民間警備会社からの賠償と、西音寺グループの支援によって、兼ねてより建造されていた西音寺重工造船の敷地と施設がマテリアルズゲートに移譲され、新たな廃棄物処理施設としての再稼働が決定した。また、一連の騒動の責任を取り民間警備会社の辞職と解体を余儀なくされたレンであったが、すぐさま西音寺グループから脱退し新たに民間軍事企業の設立を表明。その背後には西側諸国の介入が取り立たされていた。処理場再稼働の知らせを受けたリックは、キースと連絡を取るが、浮かない声色に友人の異変を感じ、飲みに行こうと誘う。


第八話

キースより告げられた驚愕の事実にリックは言葉を無くしていた。多国籍企業であり、合衆連合国の元国有企業でもあるパシフィックバンク総裁の息子、再建したマテリアルズゲートの執行役員就任、西音寺グループ会長の孫との見合い話など、情報量を処理しきれず固まってしまったのだった。

その中で、リタの再起動にかかる費用の工面に実家に戻っていた事が発端ではないかと問うリックに対してそれを否定するキース。

両者の仲に徐々に亀裂が走っていく。

二人が口論となる中、最寄りのセレクトショップでReid二体が仲睦まじく服を選び合う姿があった。


第九話

合衆連合国上空を陸軍省総督専用機が兵器開発実験区へ向けて飛行していた。広大な荒野が広がる実験区の中央に50対10に分かれた人型の影が並ぶ。総督専用機が近くの高台へ降り立ってしばらくすると、人型の影達は対立する影に攻撃を始め、10体の影だけが残り、50体は無惨な姿と化した。高台からは拍手や乾杯のグラス音が響くが、もう一つの影の存在によって、再度高台は静まり返る。一体の影に対して戦闘態勢を取る10体だったが、仲間割れのように互いを攻撃し合い、残った1体は抵抗もなく最後に現れた影によって破壊された。静まり返っていた高台から数発の銃声が発せられた後、専用機が飛び立つ。荒野に残された影は、リタの換装前の機体「レイア」に瓜二つであった。


第十話

新たな道を踏み出したキースに返す言葉を持ち合わせなかったリックは、処理施設の再稼働前セレモニーの招待状を手に、カナエのもとに居た。事情を知ったカナエも驚いたが、ならば尚の事Reid arenaへ出場し、賞金を返済に充てることを勧める。出場審査に向かう途中、リタの検査管理費をどうしているのかというカナエの質問に、全く初耳の様相のリック。リタの管理責任者名義を照会するとキースとなっており、所有者はリックとなっている事から、検査管理費は全てキースが負担していた事をカナエから告げられる。知らぬ間にとはいえ、どこまでもキースに甘えていた自分に腹立たしさすら感じたリックはセレモニーへの参加とReid arenaトーナメント出場を決意した。


第十一話

Reid arena審査を余裕で合格したリタ。一月後に行われるトーナメント出場のため、そのまま予選会場へと進む。予選は10体でのバトルロイヤルが10組で行われた。リタの猫のようにしなやかな動きに翻弄され、一撃も入れられないまま倒れる対戦者達。難なく予選をクリアするその様子を報道関係の入館証を下げた男が眺めていた。

一方、着慣れないフォーマルな衣装に身を包むキースは、兄のレオンと共に首都高層マンションの一室にいた。兄によって将来の道筋を決定され、甘んじて従うキース。レオンによる事業計画が秘書Reidによって説明されるが、曇った瞳を晴らせずただ頷くキースに、スノウは「心」を痛めていた。密かにキースを外に連れ出すスノウであったが、その手を当人に突き放され、更にレオンによって所有権破棄を言い渡されたスノウは、主人を持たない「ノラ」と化してしまうのであった。


第十二話

マテリアルズゲート再稼働セレモニー。場違いながらも参加するリックは、まるで別人となったキースを落ち着いて俯瞰していた。原因が兄にある事を察し、レオンに対話を持ちかけるも、一般作業員と社長での間柄では対等な会話など成り立たず、今後キースに近付けば辞職を仄めかすような圧力までかけられる。なすすべなく会場を後にするリックであったが、すぐさまスノウの探索を開始する。リックのロッカーに貼られたメモには「スノウを頼みます」とだけ書かれていた。

闇雲に町を探すリックとリタに、トーナメント予選会場にいた報道関係の男、マジマが声を掛けた。マジマはノラとなったReidの行く先に案内すると言って二人をスラム行きの地下鉄へ乗せる。


第十三話

地下スラム街ではReidパーツの違法な売買や裏Reid arenaが行われており、有名人がお忍びで違法賭博を行う舞台となっていた。その裏Reid arenaの景品となったスノウを取り戻す為、出場を決意するリックとリタ。マジマによる企てであったが、苦戦しながらも結果的にスノウを取り返したリックは、マジマに感謝を表する。スノウが語るキースの苦悩を聞いたリックはキースを何とか引き戻す手はないかと考え込む。リックを気に入ったマジマは、スノウとリタがもう一試合出場するなら、策はあると言うが…。


第十四話

マジマの言うまま試合に出場するスノウとリタであったが、およそ格闘試合とは程遠い衣装と、謎のパフォーマンスを観客から要求され、戸惑うスノウに反してノリノリのリタ。

奇天烈な光景に唖然とするリック。試合の後、マジマに掴み掛かるリックだったが、その手に一枚の名簿が渡された。これは生かすも殺すもお前次第だ。そう言われて開かれた紙は、裏Reid arenaを牛耳る裏社会協賛者の名簿であり、キースの兄、レオンの名もそこに記されていたのであった。ここからは命懸けになる。その言葉に気圧されながらも、決意は固いリックの背に、スノウが身を寄せ感謝を込めるのであった。


第十五話

おかげで儲かったと手を振るマジマと別れ、地上行きの地下鉄を待つ三人に、みすぼらしい容姿のReidが一体近づく。リタは警戒してリックを庇い立つが、そのReidは真っ直ぐ向かってリタの手を取ると「マザー」と一言口にしてその場で平伏した。予想だにしない出来事に固まる三人だが「苦しゅうない?」と言ったリタにすかさずツッコミを入れるリック。横目にスノウが名を聞くと、そのReidはベータと名乗ったのであった。

処理場爆撃の日、ベータは重機鎮圧とは別にあるReidを回収する極秘命令を受けて出動したのだと言う。スノウが言うにはそのReidは、生産工程が記録から抹消されていたが、15年前の隕石から採取されたレアメタルが使用されている事がキースの調べでわかったとの事だった。処理場を爆撃するほど機密性の高いそのReidは、元チャンピオン機のレイアであった。


第十六話

地下鉄第七十三区間、廃線となって残置されたこの地下トンネルは、スラムにも属さないノラたちの聖域と化していた。ここに入ったノラには裏Reid arenaも手を出せないという。ノラ達のラボに案内された一行は、ベータの話によって、リタの換装前機体がレイアである事と、当時重機AIを暴走させ、ベータに恐怖という感情を与えた物質がレアメタル「マザー」によるもので、それに触れたAIを持つ機械は感情のような回路を取得して、自我形成に至るということが判明した。レイアの元マスター、西音寺レンはこのマザーを使って一体何を企んでいるのか、現在の情報ではまだ不明であった。ベータより前にレイアによって感情を得たマリアによって食事が振る舞われた。マリアの話によって、リタの出自が明らかとなる。一泊して七十三区間を立つリックは彼等が救われる事を願うのであった。


第十七話

処理場が再稼働を果たし事も無く運営される会社をただ座して眺めるキースは、言いようもない虚しさを感じながら日々を過ごしていた。リックが無断欠勤により懲戒処分となるのはなんとか食い止めたが、もうここには来ないのだろうとどこか諦めを感じ、その瞳は光を失っていく。午後、西音寺グループ会長の館に招かれ、孫のマイカとの見合いの席、国を動かす重鎮達の錚々たる顔ぶれの中行われた会食の後に、広大な庭園の東屋で二人きりになる。気まずい空気の中、マイカが親友はどうしたら手に入るのかなどと切り出し、急な話に意図を汲めず困惑するキースに笑いかけ、一通の開封された手紙を渡すマイカ。キースの友人からの手紙だと言うそれはこの国を大混乱に陥れる程強烈なスキャンダルの証拠であった。


第十八話

私以外がこれを手にしていたら血で血を洗う大惨事になっていたと笑うマイカに戦々恐々とするキース。しかしマイカはリックの要求通りキースをレオンから解放すると言って電話を一本かけた。まもなくレオンは姉のシオンによってマテリアルズゲート社長を解任され、新社長にキース、副社長にマイカが就任したのであった。腑に落ちないながらもリックとスノウとの再会を喜ぶキースだったが、全ては西音寺グループCOOのマジマの掌の出来事であった事をマイカ以外知る由もなかった。その後キースには新しいReidラボが与えられ、リックとリタのスポンサーにマテリアルズゲートが付きReid arenaへ向けた再スタートを切るのであった。


第十九話

キース(マイカ)による政府との交渉の末、七十三区間のノラReid達をマテリアルズゲート敷地内の特区へと移住させ、初の企業管理型Reid商業地区が完成した。ラボでベータやマリア、リタやスノウの機体データを解析していたキースは、ある結果に辿り着く。これまでにレイアによってマザーに「感染」したとされるこの4機体は、重機AIとは違い自我形成による破壊衝動を免れていた。マザーは人間と良好な関係を持つ事でその素性を安定化し、Reidの原則を理解して無闇に破壊を行わないような性質を持っているのだった。しかし現在のどの技術の干渉も受け付けないこの物体は、西音寺レンによって軍事利用されれば恐ろしい兵器となり得る事が懸念された。それを聞いていたマイカは「やっぱり天才ね」と言い残しラボを後にするのだった。


第二十話

中東の油田プラント内に秘密裏に設けられた軍事用Reid量産施設を内見する西音寺レンの姿があった。主要な兵器の殆どがただの抑止力となった世界で、戦争は傭兵軍や軍事用Reidによる代理戦争が主となっていた。ここで量産されるReid達もまた、中東連合の兵士として各国へ派兵される。しかし彼らが戦いに勝つ事は無い。既にマザーを兵器として確立させていたレンにとっては、この量産機達は主要国から派兵される最新鋭機のマトでしか無いのであった。世界各国を相手に死の商人と化したレンだったが、その目線はまだ遠くを見つめていた。このところ離縁した西音寺グループの一部での妙な動向がある事に違和感を感じていたレンは、祖国へ向けプライベートジェットを飛ばす。


第二十一話

着実にトーナメントを勝ち上がるリックとリタ。ジムにはカナエとヒスイも引き入れられワールドカップ出場も視野に入れたチーム、NMGニューマテリアルズゲートが誕生した。その一方で、処理場職員としての職務に励むリックは、廃棄物の中から再利用可能な物を選別し、商業地区のReid達に回す事で資源の循環を図っていた。リビルド品の品質の高さや環境配慮への取り組みがメディアに報じられ、経済効果は既にキースに対する負債額を大きく上回り、名実共にマテリアルズゲート幹部足り得る働きを見せていたのだった。そんな中迎えたトーナメント決勝戦でも、リタの戦闘テクニックに圧巻された観客は総立ち、リックの人気も相まって割れんばかりの声援と賞賛が送られた。


第二十二話

「アリーナに新星、無敗女王再臨か」スポーツ報知の一面を飾り一躍有名人となったリタ。リックが仕事の間は暇を持て余し、キースのラボに入り浸るかジムでトレーニングを行う日々であった。リタ達はマザーの性質上、人と距離を離さないよう、マスター不在の間は事情を知る者によって管理下に置かれている。最初はリックと一緒にいたいと子供のように駄々を捏ねていたが、最近ではリックに迷惑をかけまいと健気に帰りを待つのであった。そんな姿に「最新のペットロボットでもここまでの性能は無いわね」などとからかいながらもリタを外に連れ出したマイカは、一通り楽しんだ後、いつの間にかリタをCMの撮影スタジオに連れ込み、撮影を終えて帰社する。キースが動向を怪しむも、やましい事はしていませんわと笑いかけるマイカだった。


第二十三話

マイカやキースに促され久しぶりの休暇となったリックは、リタと共に海外旅行へ向かうため、空港に来ていた。至る所でリタが出演する広告を目にするリックは、変装したリタにすっかり有名人だねと苦笑する。

その頃MGでは、交易視察と称して海外企業の要人との会合が行われた。勿論その要人は西音寺レンである。だが世界中に敵の多い彼が連れているのは秘書と護衛の二人だけであった。マイカは悟った。既にレンの生死が彼の計画に支障が無いほどまでに進行してしまった事に。エントランスでの睨み合いの中、煙草を咥えたマジマが登場し、とりあえず場所を移す。人数にそぐわない会議室で煙草を叱られたおじさまがタブレットをボリボリ噛む音だけがこだまする。そんな中、先に口を開いたのはレンであった。


第二十四話

アレはどこかと尋ねるレン。アレとは?と言い切る前にリタの広告を再生しながら秘書にセキュリティケースを持って来させ、机に音を立てて置く。この隕石から採取されたレアメタルは人間の社会など容易く滅ぼせてしまう。そう言って映像を切り替える。軍事用ロボットやReidが制圧した南米の村落で機械達の暴走が始まり、瞬く間に村落を壊滅させ、同士討ちを始める映像が映し出される。マジマのお前は何がしたい?という問いにも間髪入れず躊躇いもせず返答する。「人間社会を滅ぼせると言ったはず」すぐさま会議室の出入り口や窓が隔壁によって封鎖される。レンの護衛が武器を取り出してマイカに向けようとするのを制止し、無駄な争いは嫌いだとマジマに視線を向け、私は既に交渉材料にならない、今後は自動的に実行されていくだろうと続けるレンだった。


第二十五話

先進11カ国には既にレンによってレアメタル内蔵Reid「オリジン」が1体ずつ配備されているという。オリジン達は単体でも暴走する事はなく、また感染対象を任意に決められるとの事だった。あらゆる人工知能を有する兵器のスイッチがオリジン達の手の内にあり、世界の運命が彼らReidの感情によって決まるという狂気の沙汰に言葉を失う一同。量産された軍事用Reidを人間がどのように使うか、それを目の当たりにしたオリジンがどう感じ行動するか、この始まりの特等席から眺めようというのだ。マジマは顔を右手で覆いここまでイカれてたとはな、万事休すだと笑い始める。しかしマイカは冷静に続ける。なぜリタの居場所を最初に聞いたのかと。するとレンはケースの蓋を開け銀色の液体が詰まったシリンダーを取り出し、この13番目のオリジンコアをリタに上書きし、この国のオリジンとする事が目的だと言う。


第二十六話

1番目のオリジンコアはレイアだった。しかしリタへの換装によってオリジンの素性は変化し、マザーとして人間やReid達と寄り添うようになっている。キースの見解を受け、リタへのオリジンコア上書きを見合わせるとしたレンは静かにケースを閉じた。マザーとオリジン、どちらがこの世界に相応しいのか、もはやその決定権は人にはないのだった。

その頃空港では、西側諸国の非常事態宣言によって、航空機は全便欠航となり足止めとなったリックとリタが、待合所のモニターに映る光景に絶句していた。西側最大の軍事基地が、ロボット達のクーデターによって占領されつつあるというのだ。しかも、基地の一部の大陸間弾道ミサイルが東側の国へ向け照準されているという。空港でも非常事態警戒アラートが鳴り始め、大混乱となるさなか、早く戻らないと大変な事になるとリックの手を引くリタ。このまま人類の終焉が始まってしまうのか。


第二十七話

空港のシェルターへと避難が開始される中、逆行して外へ向かう二人。自動回送のタクシーをハッキングしMGへと向かわせる。何が何だか分からず説明を求めるリックに、妹達が苦しんでるのは知っていた、でも今が壊れてしまうのも嫌だったと悲しい表情を向けるリタ。解せないながらも「大丈夫、私がなんとかするから」と一人で決意を固めてしまうリタに返す言葉を失うリックだった。

一方MGでも警戒アラートにより避難が始まっていた。弾道ミサイルの照準は、どうやらこのMGにも向けられているようだとマジマが冷静に情報収集にあたる。秘書と護衛にマイカ達と避難するよう伝え、静かに座してその時を待つレン。オリジン達の選択は甘んじて受けるとする彼に怒りと悲しみをぶつけるマイカの言葉は届かなかった。間も無く弾道ミサイルが発射される。


第二十八話

何かを察知し、落胆するリタ。私のせいだ、こんな事になるなんて、ごめんなさい。

そう言ってリックの頬に優しく手を触れると、ドアから飛び出したリタは瞬く間に見えなくなった。タクシーは急遽方向転換し、MGから猛スピードで遠ざかる。混乱しながらも、必死にリタを呼ぶリックの叫びはもはや届くはずもなかった。

国防軍の迎撃もむなしく、MGが立地する造成地に弾道ミサイルが着弾した。

瓦礫の奥に、身動きが取れずうずくまる二人の姿があった。腹部を鉄骨に貫かれ失血死寸前の男と、それを抱きかかえる背と左半身が焼けただれ内部があらわになったReidであった。レイアと呼ばれたそのReidは、優しく男を見つめる。しかし男は死に際にも、現状を説明しろとリタに迫る。ミサイルは通常弾頭であり、この国の自動報復システムは寸前で停止された。それを聞いた男から、初めて笑顔がこぼれた。「これだから脆弱なのだ、我々人間というものは」そう言い残し西音寺レンの息は絶えた。


第二十九話

同時多発的に兵器生産拠点や軍事用Reid量産施設が破壊されたことを受け、緊急国連決議により、世界非常事態休戦協定と、世界軍事AI一時停止措置が策定された。主要国の大半が賛同する中、反対派諸国はことごとくAIの暴走により軍事施設が壊滅する被害を受けた。小規模の紛争やテロは度々発生するものの「戦争のない世界」が束の間だが訪れたのであった。

MGでは商業特区のReid達が瓦礫の撤去を行い、その中から破損したReidと、男の遺体が発見された。遺体は西音寺家によって引き取られ、厳かな葬儀が行われた。破損したReidはコアのマザーが失われ、リタがリックの元へ戻る事は無かった。

時は経ち、過去の原因不明のAI暴走によって未だ「平和」が維持される世界で、かつて人と機械が心を通わせたこの地はマテリアルズワールドと名を変え、超大型商業区域となっていた。その一画の掘削現場で、謎のセキュリティケースが発見される。

ケースの中のシリンダーが、厳重に保管されていた一体のReidにインストールされると、そのReidは再び目を覚ますのだった。

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