誕生、0才!
拙くとも完結を目指します。直しはそのあと。
あっ、落ちたなと思った。
そう感じたけど直前のことは思い出せない。
気付けば目の前には見た事ないようなきれいな男女がいて、幸せそうな笑顔でわたしを覗き込んでいた。
「ティツィアナ・イーティアーテ・デルン」
疲れた顔で、それでもなお綺麗に笑う女の人がその音を口にした瞬間、ただ生まれたことを理解した。
◇
初めて名前を呼ばれた瞬間だけはっきりしていた意識は、その後しばらくはぼんやりとしていて常に眠たかった。 たぶん、寝たり泣いたりを反射で生きてたんだと思う。
それでもいろんな人に声をかけられているのはわかった。その人達はわたしが生まれたことを祝福してくれているのだと感じた。あと、なんか周りがきらきらしてた気がする。
◇
だんだんと起きていられる時間が増えてきたのは首が座った頃だと思う。
「あー」
「ねぇスヴェン、ティティが私に話しかけてるわ。」
「そうだな、エメル。」
あの時見た男女がいて、想像通りわたしの両親だった。
母:淡い金色の髪に翠玉みたいな目を持つ、妖精みたいな美少女。ものすごい美少女。
・・・・・・たぶんすごく若いんじゃないかな。
父:見ていると波打つように色が変化するふしぎな青い髪と、氷みたいに薄い色の目をしたものすっごい美人。たぶん人外。
人が持てる容姿じゃないし、なんなら物理的にきらきらしてる。
ああ、異世界に転生しちゃったんだなぁと遠い目になる。
父だけじゃなくてわたしの周りも現在進行形できらきらしている。よくわかない小さな何かがずっとチカチカしてる。
眩しくはないしイヤな感じはしないけどね。ずっと光ってて疲れないのかな?
あとね、ティティはやめて欲しいの。いい歳した大人だったからなんかつらいの。話せないから伝わらないけどね。
◇
わたしは一人部屋で生活していて、使用人が面倒を見てくれる。両親とはよく会うけど部屋は別だ。
衣食住から判断しても、いい家柄に生まれたんだと思う。 でも、使用人の態度に違和感あるんだよね。
わたしが知る限りずっと無表情。話しかけてこないし、わたしに触れるのを嫌がっている。
両親がいる時は抑えてるけど、わたしが一人だと少し態度に出ちゃうみたい。
お世話しにくる時や触る時に躊躇がある。
まぁ相手は仕事だ。 それ以外は丁寧にお世話してくれるからあまり気にしてないけど、中身がわたしじゃなかったら虐待では?
わたし何もしてないんだけどなぁ。
もしかしてこの家問題でもあるの?
◇
ある日のこと、わたしはベビーサークルに入れられて使用人の見守りの中、ぬいぐるみを振り回していた。
それが楽しいというよりは、周囲の目を気にしてしまう大人のズルさだ。
しばらく遊んでたけど、どうせひとり遊びをするなら動いてる方がいいなと考えて、ついきらきらに手を伸ばしまった。
実体はなかった。でもふわんとした温かいふしぎな感触がして、癖になる感覚。
何度も掴んでを繰り返していたら、小さな声がした。すごく小さなつぶやきだったのに妙にはっきりと耳に届いた。
言葉に連られて顔を向けると、使用人が、理解できない恐ろしいものを見るような目でこっちを見ていた。
彼女の言った言葉は《まざりもの》。
なんとなく察してしまった瞬間だった。
◇
嫌がっている人を呼びつけるのは気が引けるものがある。
どうせ中身は大人だ。変に演技したり我慢してストレスを溜めたくない。
呼ぶために泣くのは最低限にした。そうすると使用人に会うことも減った。
実はお世話してくれる人を他にみつけたのもある。周りにあるきらきら、アレ。
わたしが掴んだからかはかわからないけど、 あれから動物だったり人の形をした半透明のきらきらが増えた。ただのきらきらの方が多いけど。
そして、実体はないのに魔法みたいな力でわたしのお世話をしたり、遊んでくれている。
◇
「君は精霊に好かれる存在なんだよ。生まれた時も多くの精霊から祝福をもらった。精霊としての割合が大きいし、とても強い力を持っている。」
「スヴェンに似たのね。ティティ、お父様はとても力のある精霊なのよ」
両親にきらきら掴みを見られた時の言葉である。すごい甘い顔で言われた。
ふつうの乳児は理解できないと思いますよ。
まぁ父もきらきらしてるし見られても問題ないと思っていたけど、それ以外ない気がしたけど、やっぱり人外だったか。
結局、精霊ってなんなの?