おまえ
「今日も頑張ったなぁーーーーー!」
伸びながら独り言を言ってるやつにコーヒーを持って近づけば、
「要さん!お疲れさまです!」なんてホントに疲れてんのか?って言いたくなるくらい元気に言ってくる。
「おう。飲め。」と俺が淹れたコーヒーを渡す。
「要さんが淹れるコーヒーが一番美味しいんだよなぁ」
なんて言いながら当たり前かのように受け取る。
それもそのはず、これは俺らの日課だから。
「今日もバイトたちにモテモテだったな。」多分こいつのことを慕ってない後輩たちはいないと思う。
砂月が一番仲のいい後輩だとしたら、俺は一番慕われてる先輩ってとこだな。
「何言ってるんですか?毎日、毎日。」呆れたような顔で言い返してくるおまえ。
「気づいてないのは本人だけか。笑」狙ってるやつなんていっぱいいるさ。人の懐に入るのが上手くて、相手の話を聞き出すのがおかしいくらいに上手だ。なのに自分のことになると急に壁をつくる。
男はみんなその壁を壊したくて相手に夢中になることにおまえは気づかないんだもんな。
「要さーーーーん?聞いてました?」「わりぃ、聞いてない」やっぱり!とほんの少しだけ頬を膨らましながら怒ってる。「なんの話だ?」そう聞き返せば、さっきまでの顔が嘘かのように、今日の仕事の反省やら、明日から頑張ることを俺に永遠に話し始める。
「おまえ、疲れてないか?」たまに心配になる。頑張りすぎてるおまえが、たまに見せる寂しそうな顔に気づいてない奴はいないんだよな。
「何言ってるんですか?私が仕事人間なのは要さんや店長が一番わかってるのに笑」そんなことを言いながら俺が淹れたコーヒーをゆっくり飲んでいる。
と思ったらゆっくり俺が淹れたコーヒーを見つめながら
「要さんは、私がこの仕事辞めたら悲しい?」
そんなこと言うおまえが、今まで見たことのない表情で言うから思わず目を離さず、何も答えられなかった。
「俺は…」
「なーんて、うっそだよーん!」
俺の言葉を遮って被せてくるおまえの顔は
いつもと変わらないキラキラした太陽の笑顔だった。
「要さん!ありがと!コーヒー美味しかった!また明日がんばりましょーーーっ!」
って「お疲れ様でした!」なんて言いながら去るおまえの背中を俺はきっと今まで見たことのないような顔してんだろーな……
「俺は、何を言おうとしたんだ…」
(オレカラ、ハナレナイデホシイ)
脳内に浮かんだ文字は言葉にならないまま、
俺の心に新しい感情を残してった。
佐々木 要 カフェ店員 32歳




