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妖精物語  作者: シャチ
ゾエ帝国の聖女
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北へ

 マントガー侯爵家でのんびり生活を送ること一カ月。ホークトア王国は落ち着きを取り戻し、王太子には正妃腹の第二王子が指名された。

 だが、第二王子の婚約者にマドレーヌが指名されることはなかった。

 彼女には王家から自由な結婚を保障されている。

「何度かお見合いもしましたけれど、なかなか決まりませんわね」

「マドレーヌは家格が高いから釣り合う先はほとんど埋まってるんじゃない?」

「そうなんですよね……」

 王家からマドレーヌが犯した罪はなく、被害者であるという内容は国中に公布されたが、それで貴族たちがもろ手を挙げてマドレーヌに結婚を申し込むかと言われるとそういうわけでもなかった。

 結局お見合いも、前伯爵の後妻みたいなものが多く、婚約者の決まっていない次期当主となる者たちはまだ幼児というレベルでありマドレーヌの嫁ぎ先は決まっていない。

「王家が責任をもってマドレーヌの嫁ぎ先を決めるのが普通じゃない?」

「いえ、王家の命令が届く範囲で”まともな結婚できそうな相手がいない”のでわたしくの”自由な結婚”が保証されという流れなのです」

「なるほど」

 この命令、相手の家格を問わないというぶっ飛んだものだ。マドレーヌが望めば、その辺の平民でも結婚することはできる。とはいえ、侯爵令嬢である彼女の相手が誰でもいいと言われても、本当に誰でもいいとはならず、こういう事態に陥っている。

「リア様、どうしたらいいでしょう?」

「それこそ、未婚の幼馴染とかいないの?あるいは近隣諸国にいる知り合いとか従兄弟とか」

「未婚の幼馴染はおりませんし、他国の親類に年が近い人間もおりませんわね……」

「まぁいたらもう少しすんなり決まってるわよね」

「はい、別に好きな殿方もおりませんし……このままでは婚期を逃してしまいます」

 貴族の体面を考えてもマドレーヌが結婚しないというのは難しいだろう。

 かといって王家の命令通り”誰でもよい”からと例えば見た目だけマドレーヌの好みに合う男をあてがうのも違うだろう。

 まったくもって世の中上手くいかないものね。

 他国の親類とはいったけれど、マドレーヌが他国へ嫁ぐことは王太子妃教育も受けていたことから不可能だろうし……。

「そこで、お父様から留学しないかと言われゾエ帝国へ行こうと思っているのです」

「ここより北にある大陸よね?」

「はい、ホークトアと食料に関する貿易協定も結んでいて関係も安定していますが、よりつながりは深いほうが良いという事で、向こうへ婿探しをして来いというのです」

「マドレーヌが侯爵家を継ぐの?兄じゃなく?」

「我が家には使っていない子爵家の家名があるので、そちらをわたしが引き継ぎ新しい子爵家として婿を探せばよいという話になったのです。これなら私は他国に嫁ぐ必要もなく、仮に結婚できなくても一代限りの女子爵ということになりますから」

「ほーん、なるほどね」

 侯爵様はちゃんと娘のことを考えているわけだ。

 この数カ月一緒にいてもマドレーヌのことを気遣っているし、家族仲が悪くないのがわかっているけれど、結婚しなくてもいいようにしているとは思わなかったわね。

「そこで、リア様にもゾエ帝国へきていただきたいのです」

「えっ!? さらに北に行くの!?」

 ある程度落ち着いてきたし、このあたりで今度こそ南へ行こうと思っていたのに、さらに北へ行くことを提案されてしまう。

 マドレーヌの瞳には”ことわらないですよね?”という無言の圧を感じるし。

 別に私貴女に加護を与えたりだとかはしていないのに、ずいぶん懐かれているというかなんというか……そんなことなら貴族令嬢なんて拾うんじゃなかったわ。


 

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