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妖精物語  作者: シャチ
婚約破棄された侯爵令嬢
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事件の真相

 はっきり言って私が聞けたことはそれほど多くない。しかし私が聞きだしたことと今までの騎士団の捜査の結果、浮上したのは宰相による計画と教会への裏切り行為だった。

 なにせ先代侯爵の頃からのたくらみだというのだから中々の物だった。

 先代国王に子供ができずらいというのは事実であったようで、その中で側妃や妾が大量に召し上げられた。結果、何人かの子供が生まれ跡継ぎ争いが勃発していた中で、現国王の父親に伯爵令嬢を進めたのが宰相であった。

 伯爵令嬢は曾祖に子爵の血をもち、若干だが貴族の血が薄い人間であった。

 この時点で現国王の”貴族の血”が若干だが薄まっている。

 さらには現国王の側妃も伯爵令嬢、王家に対してギリギリ釣り合いがとれる相手をあてがっているが、その母親は子爵の出、結果地下牢に入っている元王太子の血はぎりぎり伯爵家上位というレベルまで貴族としての血が落ちていた。

 側妃の見た目を色濃く継いでおり「金髪碧眼の貴公子」が誕生したわけだが、一般的に妖精族に伝わる”高位貴族の見た目”とはかけ離れている。

 本来は黒髪、黒目がより強き血のあかしだからだ。

 とはいえ、側妃がほかの子種をという可能性はなく、顔立ちは国王ににていたことから生まれた第一子として王太子となるべくかれに、貴族の血の濃さを保つために、王族の色に近いマドレーヌが婚約者となったわけだが、侯爵はここで隠し玉としてノーリ・セルベインを王太子に近づけ傀儡にしたわけだ。

 貴族の血の濃い娘を王太子にあてがい、自分が裏から操る。

 そしてゆくゆくは息子が国家を牛耳り、宰相の家が実質的な王家というような体制を作ろうとしていた。

 その切り札のノーリ・セルベインが脳内お花畑で役に立たなかったというのが現状だろうけれど。


 そもそもの動機は、先代宰相の婚約者を当時の国王が寝取ったという話からだった。

 おかげで最初は別の女性と婚約したのだが、当時の国王は彼に謝らなかったという。婚約自体が秘密にされていたとも言われているが、それは恨むのもわかる。

 しかもその女性は後に自殺しており、先代宰相の怒りは幾ばくかわからない。

 その後も王の女癖は悪く、子供ができないくせにやることはやるという彼を失墜させようと計画したのが、側妃や妾による跡目争いだったそうだ。

 結局、当時の国王に子はできなかったが、現国王に代替わりするだけだったことが彼を失望させ、王家を根絶やしにしようと計画し、最後の締めがノーリ・セルベインを使った傀儡化だったのだという。


「まさか、そんな大事件だとは思いませんでしたわ」

「マドレーヌが国外追放を言い渡された時点で大事件だと思うけどね」

 王城から戻ってきて1週間ほどで、宰相は拘束されることとなった。

 息子だけ切り捨てて切り抜けるという事は出来なかったようだ。

 何せ仕事ぶり自体は問題なく、彼の動機も「王家の血を途絶えさせられないなら傀儡にして私たちが国家安定を図る」というものだったのだそうだ。

 それに、宰相はどこから仕入れた知識かわからないが”貴族の血の濃さ”の意味を正確に理解していた。

 理解していなかったのは王家側という事だ。

 結局、ノーリ・セルベインを含む騒動を起こした者たちは極刑となり幕を閉じた。

 その処刑を見に行った際、クリスさんにまた会った。


「せっかく、国家安定のために昔は手を貸したんだがね」

「なぜ、そのまま王家をサポートされなかったんです?」

「私たち妖精は気まぐれだろ? 面倒になったり嫌なことがあれば出ていくもんさ」

 クリスさんの言葉に私は頷く。

 村でのつながりがなければ一個人の妖精なんてものは、何かあればさっさと逃げるものである。

 隠蔽の魔法や防御の魔法が優れていても、基本的に力でほかの種族にはかなわないからだ。

「それにしても、人間は防御魔法が苦手なんですね」

「私たちが得意すぎるのさ。代わりに攻撃魔法は人間のほうが強い」

「たしかに」


 私たち妖精族には伝わっているのに、他種族だと失伝している事柄も多いのだとクリスさんから教わった。特に人間は多くの記録が失われているという。

 私はもうしばらくマントガー侯爵家にとどまるつもりでいる。

 冬になる前には南に行きたいと思っているけれど……意外と居心地がいいんだよねここ。


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