この世界の成り立ち
翌日から、キャトルを含む教会の探査員たちと行動を共にすることになった。
なんでも、こういった古代遺物の管理をするために発掘する専門チームらしい。
「なんだか物々しい装備ね」
「魔物が出ないとはいえ別のモノが出る可能性もあるからよ。あと、リアちゃんには結構手伝ってもらうと思うわ」
そういって一番荷物を持っているキャトルがいう。
さすがドワーフ族。パワーが違う。
「ところで、魔物以外の別のモノって何?」
「一言でいえば防衛特化型のマリオネットね。機械人形よ」
「機械人形!」
「そ、紀元前の話なんだけれど……まぁそのあたりは調査をしながら教えるわ」
昨日は言ったダンジョンから堂々と私たちは中に入る。
なにせ教会から派遣されているからこっそり忍び込むとかない。
入口にいた兵士たちはへこへこ頭を下げていたぐらいだ。
しばらく進み私が見つけた細い通路についた。
ここにいるメンツだと私意外は通れそうにない。
「なるほど、通風孔からはいったのね」
「通風孔?これが?」
「そうよ、たぶんリアちゃんが見た機械の部屋へ空気を送っていた通路よ。だから風の流れがあったのね……ところでリアちゃん。機械はどれぐらい遠くにあった?」
「えーとどれぐらいだろ。そんなに飛んでないからすぐだと思う」
「わからないと、じゃあ延長コードとりあえず一番長いやつを渡すわね」
キャトルは私に黒い紐を手渡してくる。
先端には金属の金具があるし、なんだかこの紐独特な質感だ。
「機械、アーティファクトにそれを差し込める口があるはずだから、刺してみて。もしなかったらそのまま戻ってきていいから。もしなにかさせそうな場所があったらその形を教えてね」
「わかった。いってくる」
私は延長コードの先っぽをもって通路を進む。
特に引っかかることもなく広間にでると、まだアーティファクトの画面は光っていた。
少なくとも表に見えるところに差し込める口はないので、周囲を探してみる。
「これかな?」
薄い板の下のほうにそれらしい口があった。細長い楕円形の小さな挿し口?のようだ。
特に向きは関係ないらしく、私はもらった紐の先端にある金具をそこに差し込んでみる。
「結構固いな……んっ!」
力いっぱい押し込むと、カチッという感じで紐が刺さった。
「おーい!リアちゃんありがとうー」
通風孔からキャトルの声が聞こえてきたので、私は元の場所に戻る。
「何かわかった?」
「最高だよ。このダンジョンの中央コンピューターにつながる末端だ!」
「コンピューター?」
「そ、千五百年ぐらい前かな、人類が地球を脱出した時にほとんどおいていった遺物の一つ。いろんなことがわかる箱ね」
「え?千五百年前? この世界って千年より前は神の世界よね?」
「ちがうわよ。っとこの辺りは教会の高級司祭しかしらないか」
「なに、どういうこと?」
キャトルはどうしようかなという雰囲気を出しながらもったいぶる。
「まぁいいか。手伝ってもらっちゃうし話しちゃおう」
キャトルが言うにはこの世界は約二千年前、地球環境の悪化から人間が宇宙のかなたへほとんど脱出してしまったらしい。
その際、一部の人間は地球に残り環境が改善されることにかけたんだそうだ。
五百年後、眠りについていた一部の人間は目を覚まして地上に出てきた。
それが一般的に伝わる”神が人を作った”といわれる出来事。
その際、人間はあるものを作った。
人造人間。
ドワーフ族、エルフ族、そして妖精族。これらは遺伝子操作によって作られた生き物。
人に使役される存在として生み出された。
その中には人間のコピーもいた。
それが今外に多くいる人間たち。
では五百年前に目覚めた人間と何が違うのか。
それは血の色。
私も含めこの世界の人型生物の血の色は一般的に白い。
でも貴族の人間は赤い血が流れている。
”貴族の血の大切さ”はその赤さでもある。
特に王家や皇帝と呼ばれる人たちの色は当時目覚めた人たちの色なのだそうだ。
街中にいる色の薄い人々は作られた生き物という。
「それを信じろっていうの?」
「まぁいきなりこんなこと言われても無理よね。でも貴族の血の色の謎は解けたでしょ?」
「……まさかそんな」
え、この世界って作られたものだったの?
今まで習ってきたことは作られたものだったってこと?
「混乱するだろうから、教会に帰ったらいろいろ教えてあげるわ」
「え、えぇよろしく」
私は生返事しかできなかった。




