森と魔物
クレンダンシーから馬車に乗り、1日かかるベアーヤという宿場町へ向かっている。
道はあれど山の中という道を馬車は進む。
乗客はそれなりに乗っており、クレンダンシーが貿易港の一つであることを物語っていた。
「それにしても、ずいぶん護衛が物々しいわね」
「この辺りは魔物がよく出るのです。森には魔物が多いですから」
「確かに魔物が多いとは思うけれど、ゴーショは各国の信仰を集める地でしょ?それなのにホークトアなんかより治安が悪いの?」
「数が多すぎるんです。どれだけ討伐体が編成されても魔物の繁殖力のほうが強いようですよ」
「何か原因があるのかしらね?」
「ダンジョンも多いのでその影響ではないかと言われていますね」
フィナと会話していると馬車が急に停車した。
馬車に同行している護衛のうち馬に乗るものが駆けていったので、魔物が出たのだろう。
何せこの馬車のほか荷馬車が2台も一緒に移動しているため、騎馬の護衛が10名に徒歩の護衛も30名もついている。
それだけの護衛が必要なほど魔物が出るというのも驚きだ。
しばらくするとまた馬車が動き出す。
「乗客はずいぶん落ち着いているわね」
「慣れっこなんですよ。見てくださいすでに討伐された魔物が転がっています」
言われて外を見ると今討伐されたのとは別の物であろう魔物が転がっていた。
それほど大きくはないが、八つ足の魔物だ。
この森には、このタイプの魔物が多いという。
私なら隠蔽の魔法でやり過ごすやつね。
地元で観た魔物といえば、四つ足か六つ足の昆虫型魔物が多かったから、それよりも強いと思う。
魔物は足の数が多いほど大きくなって強くなると言われているからね。
黒光りする固い甲殻をもち、足のほかにカマやハサミを持つ者もいる。
何故森の多く生息するのかについてはまだわかっていないと言われている。
そもそも森に棲んでいるため、森を開拓しようとする人間を襲うだとか、人も含めた動物を食らうための襲ってくるとか言われている。
結局のところ、よくわからないというのが答えだ。
「また止まったわ。本当に多いのね」
「これなので、普通の馬車移動よりも時間がかかるのです。ベアーヤまで丸一日かかることもあるんですよ」
「この辺で生活するのは大変ね」
「ですが、北方から来る船の停泊地としてどうしてもクレンダンシーは魅力的なのでしかなく使っているという状態ですね」
「そして、護衛を養えるだけの利益も出ると」
「そういう事です」
移動するのが大変なだけで、それだけの労力をかけられる産業ってことだもんね……そらゾエ帝国に御殿が立つわけだ。
こうして、何度かの停車を繰り返しながらも馬車は順調にベアーヤの町に到着したが、すでに日が落ちる目前だった。
ここからまだゴーショに行くにも三日はかかるというのでちょっとげんなり気味。
いっそ一人で隠蔽を使って移動したほうが安全で速いかもしれないわね……




