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妖精物語  作者: シャチ
ゾエ帝国の聖女

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21/32

マドレーヌとお別れ~南へ行きます~

 ゾエ帝国でのドタバタが過ぎて約半年がたった。

 夏の終わりにはマドレーヌの留学先の学校で学園祭と呼ばれるお祭りがあり、出店だとか生徒たちの展示品などをみてずいぶん楽しませてもらった。


 マドレーヌの頭の上に乗っかって見て回った学園祭ではほかの生徒たちがずいぶん驚いていた。妖精を見るのは初めてだったらしく、ハセストからもゾエ帝国の影響下のある地域に妖精族はいないと聞いて納得したものだ。

 だって寒い。

 秋の初めだというのに凍える寒さの朝を迎えることになった。

 マドレーヌの寮にある私のドールハウスで私は布団にくるまっていた。

 この時期のホークトアでこんなことはなかったので驚いたものだ。


「もう無理! 南に行く!!」

「リア様、落ち着いてくださいな」

「これが落ち着いていられるか!! 妖精族は寒いの苦手なんだぁ!! もうこんなとこ出てってやる!!」

「せめて、せめて南に行く船を抑えるまでは落ち着いてください」

「わかった今すぐ手配して」


 私の可能な限りの抵抗……セットされたマドレーヌの髪をめちゃくちゃにする抵抗により、マドレーヌはようやく南へ向かう船の手配をしてくれた。

 彼女はまだ留学中であり、私と彼女のメイドの一人だけが一緒に南に行くことになった。


「さすがに妖精族おひとりで乗船させるのは、何かあったときお助けできませんので、こちらのフィナをお連れください」

「保護者ってこと?」

「いえ、人以外で乗船許可が取れなかったのです」


 閉口してしまった。

 まさか人間しか船に乗れないとは。

 でも実際そいった種族差別的なものはあるからしょうがない。

 ちょっと前までは女が船に乗ると沈むなんて本気で言われていた地域もあるらしい。


「リア様、わたくしフィナンシェといいます。カイサルの港までお供をいたします」

「よろしくね、フィナでいいのよね? 私のことは呼び捨てでいいわよ。ところで、あなた船は大丈夫なの?」

「はい、ゾエ帝国までの道中マドレーヌ様を含め皆様のお世話をしていたのは私です」

「へぇ船酔いしないの」

「私はカイサル近くのバーナンの生まれでして、あの辺りは船での移動が普通でしたので」

「なるほどね」

「今回は私の特別休暇を含めての移動となりますので、リア様は余りお気になさらずご乗船ください」

「それって私ただ乗りじゃない」


 マドレーヌはにっこりとこちらを見つめている。

 この期に及んで恩を売ってくるのか……貴族怖い。


「リア様には返しきれない恩がありますので、素直にお受け取りください」

「……わかったわよ。恩を売った覚えはないんだけどね」


 *********

 私は旅立つ前にハコダ家にお邪魔した。

 ハセストに別れの挨拶ぐらいしようと思ったからだ。


「わざわざ挨拶に来るなんて、妖精族にしては律儀なんですね?」

「男のふりしてる女のエルフなんてなかなか会えるもんじゃないと思うから、ちゃんと挨拶しておこうと思ったのよ」

「まぁ確かにそうですね」

「でしょう? 末代まで自慢できるわよハセストの話」

「それは光栄です…私たちは長寿種ですから、またいつか会えることを楽しみにしていますよ」

「そうね、それじゃ」


 私は小さな手でハセストの人差し指を握り握手をする。

 翌日、私とメイドの格好ではなく普通の町娘風の衣装を着たフィナが船に乗る。

 目的地は神聖ゴーショ教国。

 道中またホークトアのマントガー側を経由してゴーショの北に到着する予定。

 私の最終目的地はそこから南へ向かったカイサルやバーナンの街があるサイカーン共和国へ向かう。

 サイカーンは各地にダンジョンがあり、ゴーショ教国の南側はダンジョン街がたくさんあるというので、ぜひ一度見てみたいと思っていたのだ。

 フィナがいろいろ道中教えてくれるという事で、なかなか気楽な旅になりそうだった。

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