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妖精物語  作者: シャチ
ゾエ帝国の聖女

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20/32

ゾエ帝国の後始末

 偽聖女事件が明るみなり、ゾエ帝国における教会……特に大神殿の権威は失墜した。

 人間たちが信じる教会の教義には「神の御業に手を出すことなかれ」とあり、これは過去に滅んだとされる超文明が神の御業に手を出し続けたことに神々がいかり、この世界を統べる女神が文明を崩壊させたという物語から導き出された教義だ。

 地域によって差はあるが、過度な錬金術や黒き液体をつかい自動で動く機械など禁忌とされ、教会だけでなく国としても取り締まりの対象となることがある。

 過去には魔女狩りと称して、これら神の御業の技術を扱おうとした者たちが告発され火あぶりにされるなんて歴史もあったという。


 教会自体の権威が失墜したかといえばそうでもなく、ゾエ帝国から教会総本山のゴーショに対する抗議文を送ったが、関与を否定し大司教だけの責任であるとのたまった。

 さらに、ゾエ帝国各地の教会も大司教一人の暴走であったと関与を否定、各地の教育や食糧配給なども担う教会を駆逐することは難しく、失墜したのは大神殿の神官たちだけとなった。


「まだ、すべてが解決したわけではありませんよ。大司教たちは口を割らないためどのように聖女培養の技術を得たのか不明なままです」

「ハセストはゴーショも怪しいと思っているの?」

「それはありません。ゴーショには多くのエルフ族も務めています。彼らの目をかいくぐり同じようなことはできないでしょう。それにゴーショは”聖女”という存在に実は否定的なんですよ」

「あら、そうなの」

「過去の歴史でも、聖女と言われる女性が”当時の常識を鑑みた結果まともだったものがいない”ことからも教会として扱いをどうするのかもめる原因でもありますからね」

「それなら、ゾエ帝国の発表をゴーショは確認していなかったの?」

「見つかった資料からは、大司教が聖女の力をつかってゾエ帝国の皇帝家に介入し、そこから総本山での地位向上をもくろんでいたことがわかってきました」

「なんで、ああいう人たちって日記を残すのかしらね。証拠になっちゃうのに」

「誰にも語ることができないからこそ、何かに記録に残すのでは?」

「そんなもんかしら」


 よくわからないわね。

 わざわざ証拠を残すのがそういう異常な考えの持ち主の行動なのかしら?


「ゾエ帝国の教会は少なからず帝政の干渉を受け入れることでしょう。しばらくは安定した政治がつづきますよ」

「でも後始末はまだ残っているのでしょう?」

「我々が保護した聖女は心身ともに現時点では問題ありませんが、教会側の新しい聖女は精神が崩壊しました。やはり神の御業はまがい物だったのでしょう。完全な聖女の再現はできていないようです」

「つまり、ジャンヌもそのうち?」

「ハコダ家と皇帝家で保護という形で経過観察です。あまり自由を得られずかわいそうですが」

「まぁでも友達もできたみたいだから大丈夫じゃない?」

「それはあなたが無理やりマドレーヌ嬢をジャンヌと引き合わせたからでしょう!」


 はっはっは、私はハセストの周りをわざとくるくる回って笑う。

 あの事件の後、マドレーヌがすっかり機嫌をわるくしてしまい、ハセストに黙ってむりやりジャンヌに合わせたのだ。

 そこで、二人は意気投合したようで、マドレーヌは留学の傍らジャンヌに毎日会いに行っている。

 これでマドレーヌは私無しでも問題なく生活できるだろう。

 そもそも、ゾエ帝国に来てからはだいぶ放置してたからね。


「ジャンヌの精神の安定にマドレーヌ嬢が一役買っていることは事実ですから、ゾエ帝国にぜひ引き抜きたいところですね」

「無理でしょ、彼女婿探しに来てるのよ? どちらかといえばジャンヌを連れ帰る勢いよあれ」

「セコマ殿はすでにマドレーヌ様の婿探しに協力的ですよ。親類となればジャンヌを連れていかれてもそれほどダメージはありませんし、連れて行かないにしてもジャンヌとマドレーヌのつながりが出きれば精神の安定は保てるでしょう」

「そうだといいけどね」


 残りの後始末はゾエ帝国とエルフ族が何とかする話だ。

 私はようやく南に向かう事が出来そうでほっとしている。

 さて、次はどこへ行こうかしら?

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