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妖精物語  作者: シャチ
ゾエ帝国の聖女

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19/32

マドレーヌとみる教会断罪劇

 聖女救出後、ゾエ帝国はにわかにあわただしくなっていた。

 そんな中私はマドレーヌの元に戻り彼女の平和な学園生活のお供をしている。


「そのようなことがあったのですか」

「今ゾエ帝国の社交界では暗躍が始まっているわよ」

「わたくし、今度教会が主催する聖女様の礼拝に参加する予定なのですが……」

「あー、それハセストが言ってたやつだ。参加するといいよ危ないことはないと思うから」

「なにかあるんですの?」

「参加してのお楽しみかな」


 私は何となくマドレーヌに対して答えをはぐらかす。

 たぶん当日は国による協会幹部の断罪劇になるはずだ。

 イベントが中止されていないという事は教会側は気が付いていないという事だ。


 聖女が参加する礼拝当日、私はマドレーヌと一緒にゾエ帝国の大神殿に赴く。

 まさかこの神殿にそびえる塔の先っちょで聖女が作られているとは一般市民は誰も考えていないだろう。

 私は隠蔽の魔法を使いマドレーヌの肩に乗っている。

 視界を巡らせるとハセスト率いるハコダ家の面々がかなり前の報に座っているのがわかる。

 ハセストの横にいるのは救出した聖女だな…… フードで顔を覆っているが、あの魔力の波長は間違いない。なにより彼女も認識阻害の魔法を使っているらしい。

 マドレーヌが招待された席に座りしばらくすると、招待客がそろったのかパイプオルガンから厳かな曲が流れ始める。

 偽りの作られた聖女だというのにずいぶん凝った演出だ。

 まぁ教会側は聖女を使い政治に絡みたい野望を持っているようだから、聖女に箔をつけるのは当然か。

 オルガンの曲と共に大神殿奥の扉が開くと、純白の布を大量に使い、金糸で装飾が施された服を着た聖女が大司教と思われる男と、身なりを整えたであろう研究者風の男と共に現れる。

 聖女がセンターの演台にたつと、大司教が手を上げ静かにするよう促す。


「これより、聖女様のご祈祷と祝福を始めます」

「意義あり! そのもの聖女にあらず!!」


 大司教の宣言をハコダ家当主のセコマ氏が止める。

 会場は騒然となるが、マドレーヌより前にいる人たちは冷静だ。

 座る皆の身なりから考えても、ここから先は貴族席であり、皆が此度の出来事を理解しているのだろう。


「何をおっしゃられるのか!? 聖女を……いえ教会を侮辱されるおつもりか!」

「教義を侮辱しているのはそちらであろう。私たちゾエ帝国の国王派は教会による聖女製造という禁忌に対し告発する! 証拠はこの娘だ!!」


 その言葉にすっとハセストの横に座っていた少女が立ち上がり、フードを外すと同時に認識阻害の魔法が解除される。

 演壇に要る聖女は明らかに動揺している。

 全く同じ顔の人間が目の前にいるんだから、当然だろう。


「わたくしが、そこに要る聖女の失敗作として捨てられた聖女です」

「大司教、すでに我家の騎士だけでなく、王国騎士団も大神殿の塔の上に向かっているころだ。観念したまえ」


 大司教の目がこぼれんばかりに開く。


「ばかな! なぜ廃棄しなかった!!」

「と、盗賊に襲われたと連絡を受けており死んだものと……」


 研究者と思われる男がうろたえているが、情報をちゃんと上にあげていなかったのか。


「捕らえろ! 奴らは禁忌を犯した極悪人ぞ!!」


 セストの声と共に礼拝堂には騎士たちがなだれ込み、大司教と研究者の男を拘束する。

 聖女は拘束まではされていないまでも、保護されたような形だ。


「リア様。これが面白い事ですか?」

「そうよ、なかなか見られない光景でおもしろいでしょう?」

「面白いというにはいささかことが大きすぎます」

「そうかもしれないわね」


 こうして、ゾエ帝国の教会は国が接収する形で、偽聖女事件は終結した。

 後始末はたっぷり残っているようだけどね。

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