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妖精物語  作者: シャチ
ゾエ帝国の聖女

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17/32

偽りの聖女救出作戦

 リアとハセストは教会を後にし、そのまま帝都のハコダ邸へむかった。


「リアさん、マドレーヌさんを放置して大丈夫ですか?」

「別に彼女に加護を与えたりしたわけじゃないから平気よ。それに彼女のまわりには大勢のメイドもいるし問題ないでしょ」

「確かにその通りですね」


 しばらくしてハコダ邸につくと、多くのメイドたちに出迎えられた。

 高位の貴族は違うなぁと感じながらリアはハセストの後ろへ続く。

 迷うことなくハセストが向かったのは執務室だった。


「父上、申し訳ありませんがお目通しを」

「わかった、1分待て」


 部屋の中から声がして1分後、正確に部屋の扉が開いた。

 中は整理された執務室で、書類の山などはなかった。

 この1分で片付けたのかもしれない。


「連絡があった妖精族が彼女か」

「そうです、リアと言います」

「よろしく、リアです」

「ハセストから話は聞いた。急ぎの要件とのことだが何があった?」

「聖女は禁忌によって作られた物です。早ければ今日にでも失敗作が廃棄される」


 ハセストの言葉を聞いて部屋にいた執事に目配せした当主の男の指示で、部屋にいた召使たちは全員外に出た。


「ゾエ帝国の高位貴族ほど怪しんでいたが、やはり紛い物か」

「リアが確認してくれました」

「ハセスト、この人に話して大丈夫なの?」

「大丈夫だ、この方はハコダ家当主、セコマ・フォン・ハコダ、正式なハコダ家の人間だよ」

「私はハセストの正体を知っている。エルフ族と協力してゾエ帝国を裏から支えているのは我がハコダ家だ」

「なるほど」


 人とエルフが協力するとは、世の中は面白いと感じた。

 人間とエルフは一般的に反りが合わないと言われるのだけどね。


「リアといったか、どういう状況であったか話せるか?」

「人が入れるガラス製と思われる管が並ぶ部屋に聖女と同じ顔の女の子が浮いていたわ。そして檻に入れられたぼーっと一点を見つめてた子が失敗作として廃棄されるみたい。多分大司教と研究者と思われる男が話してた」

「ゾエ帝国の教会にエルフが入れなくなったのは50年前からだ……そのころから準備が進んでいたのかもしれないな」


 私の言葉にセコマさんは納得したようだった。


「ハコダの兵を借りたいのですが?」

「いいだろう、紛い物とはいえ聖女だった乙女だ。救出できるか?」

「野盗にでもなりすまして、馬車を襲います。たぶん教会の馬車では目立ちますから荷馬車で捨てに行くでしょう」

「わかった、ハセストに任せる。よしなにやってくれ」

「承りました。リアついてくるかい?」

「えぇ、こんな面白そうなことないもの。行くわ!」


 ハセストと執務室を後にした私は兵の詰め所に向かった。

 あえて騎士団の服ではなく、野盗のような格好で帝都の外に待機し教会から出る馬車を待つという作戦だそうだ。


 今日明日には馬車が出るだろう。

 教会から運び出されたものを積んだ馬車を襲う。あの教会から「外に運び出されるもの」は多くないからだそうだ。


 そして作戦が決行された。


 向こうも馬鹿正直に夜に荷馬車をだしたと草からの情報が届く。

 ハセストも見窄らしい格好をして兵士たちと待機していた。


「来たぞ」


 小さな声が聞こえ、向こうから馬車が向かってくるのが見えた。


「この辺りでいいだろう」

「殺して埋めろっていうんだろ?」

「ったく、面倒な仕事をやらせやがって」


 明らかに商人ではない服装の男2人が荷馬車から麻袋を下ろす。


「あれだ、行くぞ」


 ハセストの指示で野盗の格好をした騎士たちが馬車に駆け寄る。


「こんな時間に不用心だぁなぁ有金と荷物置いてけやぁ!!」

「こんなところに野盗だと!?聞いてないぞ」

「2人では太刀打ちできん!逃げるぞ」


 馬車に乗ってきた奴らはあっという間に逃げてしまう。


「ずいぶん拍子抜けね」

「安い金で雇われたんだろう。麻袋を調べろ」


 ハセストの指示で麻袋を開けると、白いワンピースだけを着た聖女だった女の子が入っていた。


「見つけました。寝ているようです息はあります」

「よし、ずらかるぞ」


 聖女を確保し私たちは一気に撤退する。


「こんな簡単に聖女もどきを拾えるとはね」

「多分何度も失敗作を廃棄してるんだろうさ。向こうも手慣れていた」


 彼女が目を覚ました時、多分びっくりするわね。

 でも何か話ができる状態だといいけれど。牢屋の中で見た彼女の状況を考えると期待できないのよね。

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