表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精物語  作者: シャチ
ゾエ帝国の聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/32

ゾエ帝国の聖女

 大神殿内もステンドグラスに金の装飾と豪華さが際立っていて目が疲れる。

 ハセストは平気な顔をしているけれど、エルフ的にも辛いんじゃないかしら?

 私は彼女の肩から飛び立ち一応振り返って手を振ってから大聖堂の奥へと向かう。

 今の所魔法が使われるような感覚もないし、誰かが目で私を追うようなそぶりもない。

 エルフでもいない限り私を発見できる人間はいないとは思うが、警戒しながら進んでいけば、一際豪華な扉が見えてきた。

 馬車の中で渡された見取り図から考えればここは宝物庫のはず。

 ここには用はなく、私はさらに進み上に向かう階段を見つける。

 聖女が住むのは最上階のフロア。そこは聖女とその世話をする侍女たちだけが入ることができるという。

 男子禁制であり、謁見の時は大神殿内の一番大きい大聖堂でのみ行われるという。

 だからこそ、聖女は存在しているにもかかわらず謎の人物というじょうたいだというのだ。

 教会側も、権力を高めるために王家に嫁がせるというような動きはしていないというし……


 ふわふわと上階へ向かう道中、結構な数の修道士たちがいるのを確認した。

 中には帯剣しているものもおり、護衛的な立ち位置なのだろう。

 物々しい警備なのは過去の歴史からもわかるが、どうにも違和感が拭えない。

 大神殿は教会であるにもかかわらず、あまり神聖な空気を感じず、聖女に近づいているはずなのにその感覚もない。

 今日は間違いなく大神殿にいるというハセストの言葉を信じるなら、やはり何かおかしいと感じるのはわかる。

 それに、妖精やエルフじゃないとこの魔力を感じるという感覚は持っていない。


 *****

 ようやく最上階に着くと、階段の終わりに扉があり、女性騎士と思われる人間が五名も張り付いていた。

 一筋縄ではいかないと思ったが、扉が開かない限り入ることは無理だろう。

 それに、ここまで近づいても聖属性の魔力は感じない。

 感じるのは禁忌の匂い。それが濃くなる一方だ。

 私は一度下の階にいき開いている窓から外に出る。

 初めから外に出てもいいのだが、高さがあると私の羽では風で煽られる。

 壁に掴まりながら上の階を目指す。

 どんな建物にだって窓がある。

 開いているかは別だがどこかから侵入できるはずだ。

 すこし壁を蹴って開いている窓を探せば、数箇所開いているのを確認できた。

 少々風に煽られるがこのまま飛び上がってその窓を目指す。

 窓からたなびくカーテンに何とか掴まって姿勢を安定させ窓枠に降り立つ。

 窓が開いているにもかかわらず部屋の中は暗く、鼻につく禁忌の匂いを一層濃く感じた。

 ゆっくりと部屋の中に降り立つと、薄暗い部屋ではあるがところどころに光源があるらしく、うすぼんやり光っているところがある。

 その一つに近寄ってみて私は息をのんだ。


「まさか、こんなことって」


 目の前にあったのはガラス製であろう円筒形の筒、青白くぼんやりと光る液体の中に少女が浮かんでいる。

 よく見ればほかの光の先にも同じ少女が浮かんでいるようだ。

 感じた禁忌のにおいは間違いなくこれらのせいだ。

 ゾエ帝国の聖女は神への冒涜による人の手によって生み出された”まがい物”という事だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ