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三十一話 プチバズり



「おかえり。お姉ちゃん、お疲れ」


 家に戻るとスバルが出迎える。


「ただいま、どうだった?」

「結構良かったよ。あんな感じで良いと思う」


 そりゃよかった。ちょっと反応が気になるから確認してみるか。

 俺はスマホを取り出し、自分のアカウントを開くと……。


「……ひゃ、百十一人!?」


 幻覚か、見間違いを疑い何度も見直して目をこする。しかしどれだけ見直しても登録者の数は百十一人と表示されていた。


「そりゃ、だってお姉ちゃん有名なインフルエンサーにアピールしてたじゃん。バズるのは当たり前だよ」

「インフルエンサー?」

「あ、もしかして知らないの? 陽キャみたいなカップルに話しかけてたでしょ? あの人たち、今ホットな二人組だよ。バえるダンジョンの写真を上げたり、動画を撮ったりしてて」


 俺は貝殻のアイテムをくれた二人組の男女を思い出した。あの人たち、そんな有名人だったのか……。


「お姉ちゃん、もっと他の配信者の情報とか知っておいた方がいいよ?」

「……そうだな」


 そういや、世界ランクとかいずれは目指す予定だもんな。周りを知るのは大事な事だ。異世界でも敵の情報を仕入れるのは、重要な要素だったし。


「ホウちゃん、帰ったの? お風呂湧いたから入っちゃってね」


 キッチンから母さんの声がしてきた。髪の毛の色も落としたいし、丁度いいや。


「はーい」


 俺はそのままの足で洗面所に向かう。スマホは防水シートに入れて、ゆっくり湯船に浸かりながら他の配信者を調べてみよう。

 服を脱ぐと、見慣れた身体が露になる。それを見ると、水着を着るという過去最大の難易度を誇るイベントが待っている事を思い出してしまう。


「はぁ~……」


 俺の心情を反映してか、アホ毛もヘナヘナと萎れている。

 まあ、出るといった手前、やっぱり止めますなんて言うつもりはない。


「何とかなる、さ」


 多分。きっと。



 頭を洗い、身体の汗を流して湯船に入る。そしてスマホで、まずは日本国内のトップレベルの配信者を確認する。


「……国内なら、やっぱりこの人か」


 国内ランク1位、ギガキング。ダンジョンが生み出された直後から、配信者として活動を開始した。元自衛官で、ブレイキングダウンにも出場経験があるという異色の経歴の持ち主だ。

 逆ランドマークタワーを単独で踏破し、その後『バシレイア』という配信事務所がスカウト。現在でもトップ配信者として君臨し続けている。


 戦闘スタイルは古流武術をベースにした刀剣術。ダメージを恐れず敵の懐深くへ踏み込み、文字通り肉を切らせ、骨を断つ戦術を得意としている。

 ヘカトンケイル戦の切り抜きも見たが、多くの被弾を貰いながらも一瞬の躊躇いもなく、斬り込んでいっていた。


「凄い戦い方だ。……しかも笑ってる」


 全身から血を流し、口角を吊り上げ戦う様は正に鬼神。この死を恐れない気力が強さなのだろう。

 しかしリスナーとのやり取りや、インタビューでは爽やかな好青年だ。戦いでスイッチが入るタイプなんだろうな。


「直近の動画も見てみよう」


 俺がヘカトンケイルを倒した日の翌日に動画が上がっていた。開くと、事件の事に言及するほか、俺に対しても一言添えられている。


「あ、会いたい……」


 社交辞令か、本意か。日本最強の配信者が俺に触れるなんて、とんでもない事なのでは……?

 コメントも日本最高峰とヘカトンケイル殺しのコラボ配信を期待する声で溢れている。


 デビューする時、何かこっちも言った方が良さそうか?

 この辺は父さんに聞いてみよう。


 ギガキングのプロフィールをスクロールすると、もう一人の所属配信者が出てきた。


「クイン、国内ランク2位。世界でも有数な魔導士で、史上四人目の六属性保有者である」


 長い黒髪は片目を隠し、八の字眉のせいか自信なさげな顔に見える。そして何がとは言わないけど、デカかった。現役高校生。あまり配信はしないスタイルだが、人気は高い。確かにスバルや視聴者も度々、この人の名前を口にしていた。


「そして……スバルより強い」


 逆ランドマークでもあんなに強かった妹が勝てない相手……、でもそんな二人も世界ランクのトップ10には入れていない。

 世界の壁の厚さを実感する。


「お姉ちゃん、風呂長いよ? まだ出ないの?」


 噂をすれば何とやら。風呂場のドアに妹のシルエットが映る。ご立腹のようだ。


「ゴメン、もう出るよ」

「早くしてね」


 俺は湯舟から立ち上がった。


日間2位、週間3位まで来ました

ポイント、感想等、いつもありがとうございます

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