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二十四話 ね、簡単でしょう?



「お、覚え方? えと……うーん、頑張れば覚えられると思います」


 スカヴェンジャーを一撃で倒してしまったので、またコメント欄は盛り上がっていた。しかしまさか、異世界で覚えましたなんて言えるわけないし、適当に濁すしかなかった。


『お姉ちゃんが言うならそうなんだろうな』

『覚えられる(覚えられるとは言ってない)』

『ただの雑談かと思ったら世界初の偉業成し遂げてて草ァ!!』


 俺がコメント対応であたふたしてる中、スバルはスカヴェンジャーの残りカスを漁っていた。


「あ、あった! 良かった、消し飛んだかと思ったよ」


 取り出したのはまん丸の石のようなもの。大きさはゴルフボールより少し小さく、色は黒に近い紫。中では雲のような渦が漂っていた。


『お、魔石だ』

『これがあるから、めんどくさくても倒す必要があるんだよね』

『しかもこのサイズで一番楽に手に入るのが、スカヴェンジャーという』

『プレちゃんの生命線だもんね』


 スバルは魔石を手に、俺に近づいてくる。


「お姉ちゃん、これ貰っても良い?」

「ん? 何に使うの?」

「アタシの武器に必要なの。これ、魔石をエネルギー源にして爆発的なパワーを出せるから」


 両手に嵌められたゴツいガントレット。名前はエルマナスらしい。

 魔石はいわゆる魔力が凝縮し、固形物となった物質だ。砕くことで一時的に魔力が高まり、高位の魔法を連続で撃てるようにしたり、一部のアイテムの扱いに必要だったりと用途は多岐に渡る。


「良いよ。俺は使わないから」

「ありがと」


 そう言ってスバルは右手のガントレットのレバーを引く。排莢口から古くなった魔石が排出され、新しい魔石をチャンバー内にセットした。ブン、とガントレットの表面に走る光のラインが発光。入れ替える前より明かりが強くなっていた。


「なんかお姉ちゃん見てたら、アタシも戦いたくなっちゃった」

「なら、一緒にやる?」


 俺は顎で示す。その先には、スカヴェンジャーたちがワラワラと集まって来てた。


『姉妹タッグ(゜∀゜)キタコレ!!』

『一応、雑談配信なのに戦闘おっぱじめる脳筋姉妹たちよw』

『世界ランク22位の戦いが見れるんだ、俺は構わねぇぜ。むしろ願ったりだ』


 群がる敵の群れを見て、スバルは好戦的に笑う。顔立ちは母親譲りだが、時折父さんのような獰猛さを垣間見せる時があった。


星脈活星・金牛ブーステッド・タウラス!!」


 スバルの身体が金色の魔力の光を噴き上げる。金だから複数の能力が上昇するスキルの類だ。その影響を受けて髪の毛と瞳も金色に染まっていく。その様は、某戦闘民族にそっくりである。


「お姉ちゃん、世界ランク22位の力、見せてあげるからね!」


 クラウチングスタートを切るスバル。ドォン! と地面が抉り取られ、吹き飛ぶ。

 正に猛牛の驀進と言うべきか、走った後の床は砕けて捲れ上がり、両足が蹴り飛ばした破片は殺人的なスピードで広がり飛んできた。


「危ないって」


 俺はその礫に晒されるが、向かってきたそれらは俺に近づくと急激にスピードを落とし、やがて空中で停止する。


『草』

『脳筋だなぁwホントww』

『つーかお姉ちゃんに当たりそうになってんじゃねーかw』

『平然と受け止めるお姉ちゃんも草』

『流石姉妹(笑)』


 種明かしすると、魔力を放出して止めただけだ。超能力で触れずに物を動かす奴の応用みたいなものだな。


「せぇい!」


 一方、妹は敵の群れのど真ん中にジャンプで突撃し、着地。その衝撃波がダンジョンを震わせ、周りのものがガラガラと崩れていく。

 おい、崩落しないだろうな?


「お姉ちゃん!」


 まあ、ダンジョンが崩れたなんて話は聞いたことが無い。大丈夫だろと杞憂を捨てて、剣を構えた。

 妹のやらんとする事が分かったからだ。


「オッケーだ」


 今の衝撃波はあくまでもスカヴェンジャーの足を掬うためで、ダメージ自体は全くない。故に無限増殖のスイッチは入っていなかった。

 よろめくスカヴェンジャーをスバルは次々と掴み上げ、まるでお手玉をするかのように空に放り投げていく。


「せーのっ!」

「ガァアアアアッ!?」


 そしてそれを俺に向かい、投擲。哀れな悲鳴を発しながら飛んできた奴を俺は星光斬グランドクロスで斬り捨てる。丁度、背後で消滅するタイミングだ。


「次、いくよー!」

「良いぞ」


 そんな感じで連中を処していく。俺の後にはドロップアイテムの魔石がどんどん積み重なっていった。最後の一匹をつつがなく処理し、数をチェック。目算でも十数個以上はあるかな。


「あー、いい汗かいた!」


 すっきりした様子のスバルも戻ってくる。髪の毛と瞳も元の色になっていた。


「お疲れ」

「うん、お姉ちゃんもお疲れ。――はい、これがスカヴェンジャーの倒し方です。ね、簡単でしょう?」


『簡単の定義壊れる』

『注意:真似しないでください。二人は特殊な訓練を受けてます』

『真似したくても出来ねーから!』

『そうはならんやろ』

『なっとるやろがい!!』

・スーパーチャット

『¥10.000 良いもの見せてくれて、ありがとう』


「スパチャ、ありがとう! これからもみんなを楽しませていくからね~」


 周囲を索敵するが、敵が来る兆候は無かった。そろそろ配信も終わりかな、と考えた刹那。


 探知スキルの警報アラートが鳴り響く。


「なっ!?」


 敵性存在の急接近を知らせるが、なんでここまで近づかれて――!


「え? 何の音? お姉ちゃ――」

「プレアデス!! そこから逃げろ!!」


 ボゴっと、巨大な腕がスバルの足元から飛び出してきた。

 

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