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二十三話 逆ランドマークタワー


 八十二号ダンジョン、通称【逆ランドマークタワー】。その名前の通り内部の構造はランドマークタワーを逆さまにしたような作りになっている。

 国が超音波による地中調査を行ったところ、外観も完全にランドマークをひっくり返した形になっていたという。


 大体のダンジョンが代り映えのない洞窟を進んでいくスタイルの中、この奇抜な見た目は人気を呼び、高難易度ダンジョンながら知名度は高い。


「では、早速! 雑談しながら歩こうと思います! あと質問は全て拾うのは難しいけど、可能な限り応えるから、気軽に送ってね~!」


 地下一階。地上だと横浜ロイヤルパークホテルのフロントロビーに該当する部分だ。内装も完コピして作られているのだが、それを維持する人も機材もなく、魔物たちが好き放題に荒し回るので廃墟同然になっている。


『お姉ちゃんについてkwsk!』

『今まで紹介しなかった理由が気になる』

『剣を持ってるってことは剣士系?』

『スリーサイズ教えて』

『SNSとかやってないの?』


 流れるコメントは全て俺に関する事ばかりだった。

 スバルの配信なのに完全に話題は俺一色なんだが、なんか申し訳ない……。


「今まで言わなかった理由は、配信に興味が無かったからだよー。でもね最近、出たくなったんだって」


 それっぽい理由を伝えるスバル。……紆余曲折ありすぎて、真実を伝えるのは無理だろう。


「ほら、お姉ちゃんも質問に答えて。一杯来てるんだから」

「あ、うん。えっと……剣士ですね。あとまだSNSはやってません」


 本当はあらゆる武器を使いこなせるんだけど、これを言ったら収拾がつかなくなりそうなので黙っておく。妹の配信枠を使わせてもらってる身だし、ある程度は自重しておこう。


『なるほどー』

『SNS始めたら教えて!絶対フォローするから!』

『ついでにチャンネル作成もオナシャス!』

『魔法は?魔法はどれくらい?』


「魔法は一応、炎属性メインです」


 本当はあらゆる属性(以下略。


『無難な組み合わせだねー』

『でもプレちゃんの姉だから絶対強いだろ』

『強いけど、配信で緊張しまくってるの可愛い』

『お姉ちゃん、こっち見て!』


「こう、ですか?」


 俺はドローンを見上げる。それだけなのに何故かコメ欄は白熱する。


『!!!!』

『オイオイオイ、死ぬわオレ』

『ツリ目の上目遣い良いゾ~これ』

『切り抜き頼むぞ』

・スーパーチャット

『¥5,000 お姉ちゃん推し代』


「ほら、お姉ちゃん」

「あ、はい。ガートさん、お姉ちゃん推し代、スーパーチャットありがとうございます」

「スパチャありがとうね~!」


 俺とスバルは揃ってカメラに向かって手を振る。


『今スパチャしたら姉妹セットで読み上げて貰える!?』

・スーパーチャット

『¥2,000 野郎共、続け』

・スーパーチャット

『¥3,200 おうよ』

・スーパーチャット

『¥6,000 よっしゃ』


 えぇ……。


「――はい、じゃあこの辺でそろそろ魔物と一つ、戦ってみようかな! アタシのカンだと、敵の気配がすんだよね!」


 区切りの良い所でスバルは流れを変える。確かに、俺の常時発動の探知スキルが魔物の気配を捉えていた。


『ついに来たか。B1だからスカヴェンジャーかな』

『無限増殖野郎だろ。あいつマジ嫌いだわ』

『剣で斬っても魔法で焼いても増えるもんな』

『あいつ即死させる方法あるの?』

『ないね。分裂させまくって力を分散させ、自滅を誘うしかない』

『お姉ちゃんの戦い方、気になるし実験台にしようぜ』


 暗がりからノソノソと現れたのは、呻きながら歩く腐った死体だった。変色した皮膚、腐敗した肉体、白く濁った瞳孔。正にゾンビ然とした容姿だ。


「では、リクエストにお応えしてお姉ちゃん! ぜひ、やっちゃって!」


 俺はこくり、と頷き剣を抜く。

 無限増殖か……魔法でも増えるんだから、質が悪そうだな。

 ここは速攻で終わらせよう。手を抜いた結果、スバルがケガでもしたら嫌だ。


「ふっ!」


 大きく踏み込み、剣に祈りを込めて翻す。戦士の職を極める事で得られる『気』を操る力と、聖職者に精通する事で目覚める『聖なる力』。この二つを掛け合わすことで会得した技。

 ――対不死者用の剣術スキル。


星光斬グランドクロスッ!」


 刀身が光り輝く山吹色の魔力を放ち、十字を描く斬撃が迸る。スカヴェンジャーの胸元へ吸い込まれるように収束、一瞬の無音の間を置いて炸裂した。

 魔王四天王の一人、偉大なる骸骨王ノーライフキングを葬った技だ。無限増殖程度ではどうにもなるまい。


「オォオオオ!?」


 爆ぜる灼熱の聖なる光に焼かれ、苦悶するスカヴェンジャー。だがすぐに悲鳴を上げる喉もろとも焼き尽くされてしまい、黒い塵となって崩れ去っていく。

 俺はまだ赤熱する剣を軽く振るい、背中の鞘に戻した。


「こんな感じ……ですね」

 

『・・・・・・え?』

『( ^ω^)・・・』

『ファーーーーーwwwwwww』

『おっかしいなぁ。スカヴェンジャーが即死したように見えるぞぉ』

『ワイ剣士スキルコレクター、あんな剣術スキル知らない』

『【朗報】お姉ちゃん、やっぱり最強だった』

『技撃った時の横顔、イケメンすぎてヤバい。抱いてくれ』

『照れてアワアワしてた時とのギャップ萌え……』


 あ、同接10万超えてら……。


 


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― 新着の感想 ―
[一言] 不死者特効の山吹色オーラ、というとメメタァ的なアレですかね。
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