プロローグ
大東ホウキは、平凡な家庭に育つ男子高校生であった。少しだけファンタジー系のゲームや小説を好むだけの凡人で、月並みに友人を作り、月並みな生活を送っていた。
しかし、ある日彼は地球とは異なる場所――遥か別の次元に存在する異世界へ召喚される。そこは彼の想い描いたファンタジーそのままの世界だった。
彼はその世界に勇者として呼ばれたのだ。数々の力と、聖剣を授かったホウキは選ばれた仲間たちと共に幾多の苦難を乗り越え、ついに魔王の喉元へと差し迫る。
互いの技が交錯し、紙一重でホウキの一撃が魔王の命脈を絶った。
だが崩れ行く中、魔王は最後の魔力で渾身の呪いを打ち放つ。それは姿を変える呪い。魔王は勇者が異世界の人間だと知っていた。そして戦いが終われば、帰還することも。
魔王は嘲笑う。変わり果てた姿で帰った時、誰が貴様を迎えようか、と。その姿で命尽きるまで孤独に狂い、苛まれろ、と。
こうして魔王は滅び、ホウキは異世界から姿を消した。ある国の記録では、一説によれば絶望して命を絶ったとも、世界のどこかで静かに余生を過ごしたとも言われているが、真実は定かではない。