第0話 変態降臨
「さあ、これからは俺のターンだ」
着ていた服を脱ぎ棄て、全裸になり自分の身体をまじまじと見つめる。
胸筋から腹筋までの隆々とした、不要な部分が一切ない筋肉の凹凸を己の指でなぞり、腹の先にある見慣れたモノに触れ、確かめる。
俺を間違いなく男だと確信させてくれるその部分は、誰に見せても恥じる事がないほどずっしりと存在感を魅せている。
「い、一カ月ぶりの再会……俺よ、久しぶりだな」
懐かしくなりゆるりと握り、根本から先に向かって這わせると先端をさわさわと撫でまわす。
背筋を這う快感と、その程度で軽く反応してしまう己自身が少々可愛いと思えるくらい、体中で喜びを感じているド変態……それが俺、リンだ。
いや、ちょっと待ってくれ! だめだ、まだブラバするな!
こうなってしまった理由くらい気にならないか? 俺だってこんな変態めいたこと────自身を慰める行為は用事のあとでするわけだが────を毎日やっているわけじゃないぞ? 一カ月ぶりという少し前の俺のセリフ、きちんと読んでないだろ、お前ッ!
これには深い深いワケがあるんだよ、思春期男子の性欲ナメんな?
まさに“生殺”しなんだ。
今の俺は健康な17歳。超カワイイ女子に囲まれて生活している。毎日エロいことを考えても、俺は月イチしかコイツに会えない。この意味が分かるか? 辛すぎるだろ?
しかも整った顔と、憧れてもそう簡単に作り上げられない筋骨隆々とした肉体の両方が同時に手に入ったとすれば尚更だ。
誰でも自身の身体をまじまじ眺めて確かめたくなるって!
男の俺でもホレボレするほど鍛え抜かれた完璧な肉体を鏡に映す。その場でくるりと一周して男であることを再び確かめ満足し、その場に女が居たら完全に落ちるだろうイケてる笑顔を浮かべると、用意していた衣装に袖を通した。
着替え終わり、自室の窓を開けて念のために周囲を警戒しながら身を乗り出し、そのまま闇に紛れて学園寮の屋根に登ると、ゆっくり街全体を見渡す。
俺に残された時間はそう多くない。できるだけ早く出かけた方がいい。今日は何かが起こる予感がする。
この世界「ルミナス・セレナーデ」を隅々まで知っている俺は、イベントをなんとなく察知することができてしまうチート能力を授かっていた。完全な勘ではあることが前提とはいえ、この背筋がぞわっとする感覚は何かが起きると思っていい。
俺がどれだけこのゲームに時間を費やしてきたと思ってるんだよ。オタク舐めんじゃねー!
絶対にこのゲーム、完全攻略してピーーーーーーしてヤるッ!