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その瞳に映るもの

作者: 白鷺雪華

今宵は中秋の名月


庭の縁側に女が腰掛けている。

側には白玉·あんこ·抹茶と色とりどりの団子。

女は料理やお菓子作りが好きで全て手作りである。

そしてその横にお酒が置かれている。


女は夜空で輝く満月を見上げてつぶやく。

「……綺麗ね」

「今年も見れて良かった」

膝の上で丸くなるウサギをなでながらお酒で口を湿らせる。


「そういえば、月にウサギがいるって話、クレーターがウサギがお餅をついてるように見えるからって言われてるけど、今日読んだあの話が元になってるのかな?」

女は今日図書館で読んだ一つの話を思い出し、再びお酒を口に運んだ。



時間は少し巻き戻り、図書館での出来事


女は1冊の本を開いて読み始めた。

「ウサギ、サル、キツネが善行を積むために修行していた……うん、いいことね」

女は心の中で感想を呟いていく。

「ある日老人が空腹のあまり助けを求めてきた。3匹は老人を助けるため、食べ物を探しに行く……素晴らしい」

「サルは木を登って木の実を、キツネは魚を取ってきた……自分の得意分野で取ってきたのね」

「しかし、ウサギはなにも取ってくることができなかった……う〜ん、本当に取れなかったのかな?」

少しの疑問を持ちながらも読み進めていく。

「ウサギは食べ物を取れなかったので自分を食べてくれと焚き火に身を投げた……そこまでする?」

「実は老人は帝釈天という神で3匹の善行を試していた……テストしてたのか」

「帝釈天はウサギの犠牲を憐れんで他の者の手本となるようにウサギの姿を月に映した……蘇らせたって説もあるね」

読み終えて本を閉じた女は少し思案する。

「う〜ん 自分の身を犠牲に他者を助ける……そしてその行いは後世まで語り継がれて、その姿は天に映し出される……か」

そこまで考えて、他の本なら違う解釈がされているのではと思い、読んでいた本を手に椅子から立ち上がった。



「……他の本も同じような内容だったけど、それだけ大切に語り継がれてきたのね」

納得のいった女はあんこの団子を手に取ると口に運んだ。

「う〜ん!」と頬をおさえて我ながらいい出来だと自賛し、満月を見上げて秋の夜長に想いを馳せた。



草木も眠る丑三つ刻……


小屋に戻されたウサギは目を覚まして、

天で赫く煌々と輝く満月をその赤い瞳でじっと見つめていた……

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