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神獣の愛し娘はポーション屋を追放されたので、お茶屋になりたい  作者: とまと(シリアス)


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ダーナ視点

「あんなかすり傷で、大げさなっ」

 カッとなった男を、背の高い方の男が止めた。

「待て。それより、今のポーションのことを教えてくれないか?」

 さてと。こっちの男はどこまで賢いかねぇ?

 さっと、血の跡は残っているが傷あと一つ残っていない手を男に差し出す。

「金貨1枚」

「は?ふざけるなよ!さっさと教えろ!」

 背の低い男が、またカッとして怒鳴っているのを、背の高い男が手で静止する。

「何言ってんだい?さっき私が教えてやろうとしたのに、断った挙句、乱暴して怪我を負わせたのはどこのどいつだい?なんでそんな奴に、親切にただで教えてやる必要がある?教えてもらいたいなら、怪我の治療費としてポーション代を支払うことくらい当たり前じゃないか?……いや、謝罪もない相手に話すことは一つもないね」

 くるりと背を向けて、部屋の中に戻ろうとすると、腕をつかまれた。

「すまなかった。そのポーションのことを教えてほしい。もしかして、リョウナが作ったポーションじゃないのか?」

 背の高い男が私の手をつかみ、手に平に金貨を2枚握らせた。

 ふん。なるほど。

 なかなか分かっている。

「そうだね、リョウナが作ったと言えば作ったが、作ってないと言えば作ってない」

 背の低い男の方は騙しやすそうだ。ちょっと挑発すれば怒り狂って冷静な判断力を失う。

 だが、背の高い男……。嘘だと見抜かれないように慎重に相手をしなけりゃならない。金を請求したのも演技だ。

 こういう輩は、私らのような下々の人間は金をちらつかせれば思い通りになると思っている。だから、金貨1枚なんて大金を吹っ掛けてやった。

「どういうことだ!いい加減なことを言うと、聖騎士詰所に連れていくぞ!」

 さっそく脅しの言葉を出したね。ここで、おびえるふりをした方がいいか。それとも余裕を見せた方がいいか。

 一瞬の判断で余裕を見せることにした。

「ああ、かまわないさ。私は嘘なんてついちゃいない。なんなら、真実の水晶の前で話をしてやってもいいよ。旅費をくれるんならね」

 ニタリと笑って金の要求を入れる。

 背の高い男が、ポケットから銀貨を4枚取り出した。

「すまんが、手持ちはもうない。これで教えてもらえるか」

 本当に連れていかれては困るんだが、余裕を見せたことで嘘は言わないと信じたようだ。

「おい、金額に見合わない情報しかなきゃ、詐欺で訴えるからなっ!」

 背の低い男がぎっと、睨んできた。

 ちょうどいい。話をもったいぶらずにするタイミングをくれてありがとうよ。

「分かったよ、話すよ。これはもともとリョウナが使ってた道具さ。それを、私がもらったのさ」

 嘘は一つもついていない。だけれど、今度は嘘をついているように思わせないとダメだ。


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