ダーナ視点
真実を見通す水晶の前に立たされてしまえばおしまい。立たされなければ罪も罪として記録されることはないのだ。
聖騎士に逆らわないようにと、人々は過ごしている。
何も、聖騎士が立派で素晴らしい仕事をしていて尊敬しているわけではない。
権力をかさに来たどうしようもない腐った人間どもの集まりだと知っているからだ。
「すまない、少し話をさせてくれないか。町の人にブルーノから来た女を知らないかと聞いたら、君を紹介された」
思わず唾を飲み込むのをぐっとこらえる。動揺を見せてはだめだ。
「ああ、ブルーノから2日前に来たよ。ポーション屋で働いていたけど、クビになった上に、街を追放になったからね」
ニヤリと笑って答えてやる。
「おい、2日目ってこともポーション屋ってことも、街を追放って話も全部合ってるぞ」
背の低い男が小さな声で隣の男に耳打ちする。
聞こえてるよ馬鹿が。
そうか。やはり、そうか。
理由は分からない。
だが、リョウナを探していることは間違いなさそうだ。
……理由は、分からないが、きっとポーションに関することだ。
あの、以上に効果の高いポーション。
聖なる乙女の祈りをほどこしたポーションを使ったことはないが噂に聞いたことはある。
祈りの長さで効果は変わると言うが、一口で大けがを治してしまうようなもの乙女が1年間祈りをささげたポーションでもそれほどの効果があるのか。
王族のために作られるポーションはそういう効果もあると聞いたことはあるけれど。
そんな見る機会もないような代物を、リョウナはあっというまに作り出してしまう。
どれほど異常なことなのか。本人には全く自覚はないようだが。
そして、それを原料にして売っていた店も、まったく気が付かなかったわけだから、間抜けもいいところだ。
まぁ、今頃気が付いて、店長はリョウナの扱いを悔いているかもしれないけどね。想像すると愉快だよ。
「いや、だが、黒髪の女だと聞いているだろうから、この女性じゃない」
背の高い男が首を横に振った。
やはり、リョウナを探しているね。
町の人たちとの秘密。それはリョウナのことを誰にも話さないということだ。
私が、お願いした。
どうやら一緒に行動しているディールという男は冒険者によるとかなり重要人物のようだったから。
事情のある人間だろうから、何も言わない方がよいという判断も早かった。命の恩人を守るためだという私の言葉にも納得してくれた。
もし、リョウナのことを探している、探っている人間が町に現れたら、私のところに案内してくれと頼んである。