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ごめんね、ディール。トラウマになったよね……。ごめんね。
ディールの不安がなくなるまで、一緒にいよう。
ああ、違う。ディールのためになんて言い訳だ。
私が、ディールと一緒に居たい。
「ねぇ、ディール、私ね、ちょっとしばらく失った血が戻るまで、あんまり自由に動けそうにないんだ。あの、ちょっと手助けしてもらえると嬉しいな」
ディールの髪にそっと触れた。
「それって、リョウナ、一緒に居させてくれるってことか?」
「違う」
体を離して私の顔を見たディールの顔がゆがんだ。
「一緒に居させてあげるってことじゃないよ。私もディールと一緒に居たいし、パズ君とも一緒に居たいし、ディールが迷惑じゃなかったら、あの、私、今のところポーションを作るくらいしか能がないけれど……」
ディールの顔がゆがんだ。
「迷惑なんて思うわけない。パズだって喜ぶぞ。そうだ、パズを一人で置いて来たんだ。連れてこないと。行こう、リョウナ」
ディールが、私をお姫様抱っこで立ち上がった。
いやいや、ちょっと。
「大丈夫、支えてもらえれば歩けるから」
ディールががっかりした顔をする。
「荷物をお願いしてもいい?それから……ブルーノの町にパズ君を迎えに行く前に、この先の町に寄ってほしい。後から行くって言っていた私が来なかったら心配かけてしまうだろうし、それに……」
ディールの表情が引き締まった。
「ああ、そうだな。ウルビアの群れからはぐれたやつが町を襲うかもしれない。……そもそもこんなに大きなウルビアの群れが人里近くにいるなど、異常だ。ギルドに報告して調査してもらう必要もあるだろうな」
異常なんだ。
ふと、浩史の言葉を思い出した。
俺は勇者だ。勇者としてこの世界に召喚されたんだ――と。もし、それが本当なのだとしたら……。
勇者は何のために召喚されたの?魔王が現れたとか、魔王が復活したとか、それで魔物が世にあふれ出したとか。
町に向けて歩き出すと、ディールが考え込むように口を開いた。
「異常といえば、リョウナの作るポーションも普通じゃない」
え?
「私が作るポーション、何かおかしい?」
作り方は確かに他の人と違うけれど、それで何か出来上がりに違いが出た?
うーん。素早く加工することで新鮮とか?繊維の潰れ方が違うから口当たりがまろやかで苦みが少ないとか?
大根でも切り方で全然触感変わってくるとかいうし。
「あの時、俺も口に入れただろう?」
あの時って、口移しで私に飲ませた時だよね。思い出して思わず顔が赤面する。
いや、だから、キスじゃないんだって。人命救助!人命救助!
いつもご覧いただきありがとうございます!
いやー、なんか、あれよあれー。
(=゜ω゜)ノ
ところで、評価★とか、ほら、こういうタイミングだと、いれやすいのでは?
いいぞー、ひゅーひゅーって感じでぽちぽち……(あ、いえ、なんでもないです)