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怪我描写あり、閲覧注意

「でも、ダーナがっ!」

「借りは作るつもりはないって言ったろ、これで貸し借りなしだっ!早く行け!走れないならその辺の木にでも登れよ、クズが、ぐずぐずするなっ!」

 獣の鋭い歯が、ダーナの振り回す籠をかみちぎるのが見えた。

 逃げろって言ったって、この足じゃ……。

「あ、そうだ」

 作ったポーションを指につけて舐める。思った通り、すぐに痛みが引いた。

「ダーナ、私がおとりになるから、あなたが逃げて」

 ダーナの後ろに立つと、ばしんと、激しくダーナに裏拳をくらわされた。

「どこまでも嫌な奴だねリョウナ!私だって、少しは……」

 思わずしりもちをつく。

 目の前では、ダーナが獣に腕をかみつかれながらも、首根っこを押さえつけようとしていた。

「誰かのために何かをしたんだって、人を助けたんだって、誇りをもって、死ぬ時くらい……」

 死ぬ?

 冗談じゃない。

「誰も死なないっ、皆で助かる」

 突き飛ばされた拍子に、リュックの開いた口からころりとこぶし大の塊が落ちてきた。

「狼煙……」

 ディールの、狼煙。

 火、火を。

「あぁああっ」

 ダーナのうめき声が聞こえる。

 ああ、腕の肉を食いちぎられている。

 急いで手動ミキサーの中にポーションの瓶を突っ込み、半分くらい瓶を満たす。

「ダーナ、ごめん、ちょっとだけ頑張って。これをちょっとずつ飲みながら……」

 口に、瓶を押しあてる。

 すると、ポーションが少し口に入ったのか、すぐに腕の血が止まった。さすがにちぎられた肉はじわじわと戻るだけで即効性はない。当たり前か。

 ダーナがちょっとおかしな笑い方をしている。

 ポーションの瓶を、肉が盛り上がってきた手でつかんだ。

「はっ、なんだい、こりゃ……」

「助けを呼ぶから」

 弓切式の手動ミキサーの弓だけ取り外す。

 そのすきを狙って、獣が私にとびかかってきた。

 やばいっ。

 喉さえかみ切られなきゃポーションで……と、腕を出して体をかばう。

 が、痛みはやってこない。

「ダーナ」

 私の体を身を挺してダーナが守ってくれていた。

 今度はダーナの肩に獣がかみついている。

「ぐぅっ。愚図リョウナ、助けを呼ぶなら早く呼びな」

 痛そう。痛いに決まってる。

「ありがとう……」

 ダーナはポーションの瓶から少しポーションをなめて傷を治すと、再び獣をにらみつけた。

「いくらでもかかってくればいい」

 急がないと。急がないと。

 いくらポーションで傷が治ったって、痛いことは間違いない。

 それに、血を何度も流してしまえば失血死だってある。


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