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神獣の愛し娘はポーション屋を追放されたので、お茶屋になりたい  作者: とまと(シリアス)


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◇シャルルサイド◇

シャルルサイドは三人称です

「任せた。どれくらいの割合で、誰の作ったポーションに効果の高い物が混じっているのか調査してくれ」

 はいと、頭を下げて執事がシャルルの元を離れると、すぐにメイドの一人がシャルルの前に出て頭を下げた。

「シャルル様、コウ様が湯あみをしている間に、持ち物をチェックいたしましたところ、やはりこの世の常識では考えられないようなものがいくつかありました。すぐに持ち物はすべて元に戻しておきましたが、洗濯をするからと衣類はこちらに」

 メイドが浩史の着ていたトレーナーとジーパンをシャルルに差し出す。下着と靴下はさすがにはばかられたためすでに洗濯に回してある。

「このように、伸び縮みする生地は初めて見ました。ですが、再現しようと思えばできないこともないかと考えられます。ですが、これをご覧ください」

 メイドがジーパンのファスナーを開けたり閉めたりしながらシャルルに見せる。

「どのような仕組みなのかわかりませんが、一瞬にしてこのように、閉じたり開いたりできるのです。細かい金属加工が施されていますが、これを再現するのは腕利きの鍛冶職人でもかなり骨が折れるかと……」

 シャルルが手にとり興味深げにファスナーを上下に動かす。

「これが再現できれば、いろいろと使い道はありそうだが……確かにこれほど細かい細工ともなると、一つ作るのにも相当時間がかかりそうで実用的ではないな。それを、たかが服にしようしているとは……」

 メイドが首を横に振った。

「たかが服ではないかもしれません。縫い目をご覧ください。これほど細かく正確に美しく整った縫い目は初めて見ました。超一流のお針子が何年もかけて丁寧に仕上げた最高峰の服なのではないでしょうか」

 シャルルがふっと小さく息を吐きだした。

「コウは最高峰の服を着れるような人物に見えたか?」

 シャルルの言葉に、メイドがうっと言葉に詰まる。

「そ、それは……」

 メイドの正直な反応にシャルルは小さく笑って返す。

「突然舞い込んできた大金と地位に我を忘れて威張り散らしていた先代のバルサ伯爵を思い出したよ」

 メイドは、小さく息を飲み込んだ。

 バルサ伯爵はあっという間に別の者と入れ替わった。シャルルの嫌った、威張り散らした身の程知らずは、ほどなくして謎の死を遂げたのだ。

「コウは、賓客としてもてなすよ。まだ、彼には聞きたいことがたくさんある。勇者というのは怪しいとしても、違う世界から来たというのは真実味があるからね。もしかすると、本当に神獣様との関係もあるかもしれない。そうだとすれば……コウを手放すわけにはいかないからね」

 シャルルの言葉に、メイドは口元を引き締める。

「畏まりました。コウ様を賓客として、最大限のおもてなしをいたします」

 シャルルは、ジーパンをメイドに手渡し、凍えるような冷たい光を目に浮かべた。

「アレの使用を許可する」

 メイドがハッと小さく息をのんで頭を下げた。

「承知いたしました」

 頭を下げるメイドの前を通り過ぎ、シャルルは自室へと戻った。

 いつも執務に使う椅子とは違い、部屋に置かれている椅子は寝転ぶこともできる大ぶりのソファだ。その中央に深々と腰掛け、膝に肘をついた。

「動き出した……か」

 破滅への動きなのか、明るい未来への動きなのか。

 ――月へ橋が架かり、神獣がこの世へと姿を現すとき

 その一文から始まる文献にはいくつか種類がある。

 滅んだ国の視点で書かれた、この世は終わりを告げるというもの。

 新しく興った国の視点で書かれた、新しい世界の始まりだというもの。

 どちらにしても、神獣の加護を得た者が覇権を握り、神獣の加護を得られなかった者が亡ぶ。

 世界は再構築されるのだ。

 激しい戦闘の末に――。

次話から、リョウナ視点に戻ります。


いつもご覧いただきありがとうございます。


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