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神獣の愛し娘はポーション屋を追放されたので、お茶屋になりたい  作者: とまと(シリアス)


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★浩史サイド★

浩史サイド

 ガンガンと響く頭を抱えて下を向く。

「アイラ、この男は僕が引き取るよ」

 あ?誰だ?

「シャルル様、よろしいのですか?この男は小さな女の子を見殺しにするようなどうしようもない男ですよ?」

 アイラが様付で呼ぶ男?

 頭を押さえながら顔を上げると、緑のマントのイケメンがアイラの横に立っていた。

 向かいの牢にいて、途中から一緒に酒を飲んだ男。

 なんで、牢に入ってた男がアイラに様付で呼ばれてるんだ?

 俺を引き取るって?

「ふふふ、ちょっと、昨日面白い話を聞けたからね。本当、ここって、普通に生活してたんじゃ聞けないような話がいろいろと聞けるから大好きさ」

「だからって、勝手に何度も入られると困ります。シャルル様を牢に入れたと噂が広まっては、ギルドの立場もありますし」

「大丈夫だよ。普段は顔が見えないように気を付けてるし。おっと、コウ、僕の名はシャルル。君さえよければ僕の屋敷に招待したいのだけれど、どうかな?」

 シャルルが俺に手を差し出した。

「ここよりましなら行ってもいい」

「ぷっ。ここよりひどい屋敷なんて探す方が大変だろう?」

 ちゃんと俺を勇者だと認めてくれたシャルルだ。アイラめ。お前が様付で呼ぶシャルルが俺を認めてくれたんだぞ?

 後で、シャルルからお灸をすえてもらうからな。覚えとけよ!

 


「うおう、シャルル、お前、何者?」

 ギルドの裏口をシャルルと二人で出て、10分ほど歩いた場所に小ぶりの城のような立派な屋敷があった。

「ふふ、まあ、話は食事でもとりながらゆっくりと」

 豪華な部屋に通される。

「こちらの部屋を使ってください。何か必要な者があれば遠慮なく言ってください」

 20畳ほどありそうな広さ。キングサイズのベッド、テーブルと3人掛けのソファのセット、丸テーブルとイスのセットに、部屋の奥にはバスタブのようなものが見える。部屋の中に、バスタブ?

「十分だ、と、言いたいところだがシャルル、ポーションを分けてもらえないか?」

 手の傷はまだ痛むし、二日酔いの頭痛もひどい。

「ああ、これは気が回らくて。では食事の前にポーションを持ってきましょう。それから着替えを用意させますので、そちらを使って体を……水浴びを」

 シャルルがバスタブのようなものに視線を向ける。

「水浴び?風呂じゃないのか?」

「おや?風呂をご存じでしたか。さすが異世界からおいでくださった勇者様でいらっしゃいます」

「風呂は一般的じゃないのか?この世界じゃ」

「ええ、大量にお湯を沸かして体を洗うというのはとても贅沢なことですから」

 ん?

 ちょっと待て。

 この世界には、火魔法のようなものがないのか?

 確かに、薪などの燃料を燃やしてお湯を沸かすことは燃料の少ない土地では贅沢なことだろう。

 しかし、火魔法があるならそれほどお湯を沸かすのが贅沢なことではないんじゃないか?

 もしかして、魔法が使える人間というのは、ごくごく少数という世界観か?冒険者レベルの人間が使えるような一般的なものではなく、宮廷魔導士のように、魔法が使える人間は特別でお城に雇われるみたいな、そんな感じなのか?

 火の魔石のようなものもないということなのか?魔石も貴重品?魔道具みたいなものも普及していない?

 ん?

 だが、ギルドはあった。ポーションもある。冒険者らしい人間もいた。神獣なんてのもいるらしい。

 明らかにファンタジーな世界であることは間違いないだろう。

 まだ、分からないことだらけだな。

 すぐに、部屋に2人のメイドが何度か往復してバスタブにお湯を張った。

 ふーん、二人ともなかなかかわいいじゃないか?メイドとイチャイチャってのもいいな。

 勇者といい仲になるメイドとなると、モブじゃなくなる。もしかして、実はめっちゃ強い戦うメイド?暗殺者に育て上げられたとかいう護衛も兼ねたメイド?それとも実は人ではなく、オートマタとかだったり?

 などといろいろと妄想を繰り広げながらメイドが働いている姿を眺める。

「ご主人様、ご用意が整いました」

 ぺこりと頭を下げるメイド1。

 って、あれ?

 頭を下げているのは、シャルルに対してだ。

 あー。俺が、ご主人様では、なかった……。ちっ。後で専属メイドをシャルルに頼んでつけてもらうか?勇者の頼みだ。シャルルだって嫌とは言わないよな。

「コウ、風呂を知っているようなので、使い方を説明は省く。着替えはこちらで用意するから、さっぱりしてくれ」

 衝立でバスタブが覆われている。

 メイド2人は部屋を出て行った。

 ……あれ?メイドが服を脱がせたり、体を洗ったりとか、ないのか?

 と思ったら、入れ替わるようにごつい男が一人部屋に入ってきた。

 いらない。服も一人で脱げるし、体も自分で洗える!

 急いで衝立の向こうに移動。

 バスタブの近くには体を洗うための大きなタライやせっけんや桶なんかも準備してある。

 そうか、床をぬらさないように、体はタライで洗うのか。バスタブの中のお湯を見ると、風呂というには若干量の少ないお湯。半身浴……か。まぁ、贅沢は言わない

「シャルル様、ポーションをお持ちいたしました。こちらは上級ポーション、こちらが中級ポーション、こちらが初級ポーション、それから、こちらですが……ちょっと不思議な噂のあるポーションで、試していただければとお持ちいたしました」

 衝立の向こうから男の声が聞こえてきた。

 ああ、なんだ。俺の風呂を手伝うために来たんじゃないのか。

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