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神獣の愛し娘はポーション屋を追放されたので、お茶屋になりたい  作者: とまと(シリアス)


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「前に、銀貨1枚渡した時に、おまけもつけるねって」

 え?おつり分はおまけ?

 いや、でももらい過ぎ、って、ああ消えた。

 月の精の姿もポーションも消えた。

「もらい過ぎ……た分は、またポーションを作って今度おまけ……あれ、でも、今ポーション需要が高まっているから値段も上がってる?店長は明日から倍の値段で売るとか言ってたし……そこまで気にしなくていいのかな?」

 助かったなら素直にありがとうと厚意を受け取ることも、世の中を渡っていくには必要なスキル……か。

 電車でお年寄りに「どうぞ」と席を譲ろうと立ち上がったのに「大丈夫です」と断られると気まずいもんなぁ。あれは素直にありがとうと座って貰えたほうが嬉しいし助かる……。

「ありがとう」

 大事に使う。自分のため。それから誰かのために。


「おはよう、ハナ」

「あ?リョウナ、今日は早いのね。って、それ、どうしたの?」

 いつもハナに起こされていたけれど、今日はハナよりも先に起きて荷造りを終えた。

 あれからまたできるだけポーションを作って鞄に詰め込んだ。それから手動ミキサーを風呂敷のようなサイズの布にくるんだ。

 使っていた寝床の布は綺麗に折りたたみ、板の上に丁寧に置いた。

 小学校のキャンプや修学旅行の時から学んでる、ちゃんと畳んでおきましょうというやつだ。いくら粗末な寝床でもぐちゃぐちゃにしたままでは後味が悪い。

 いつもは、手動ミキサーやリュックを布で覆うようにして広げている。

「リョウナ?」

 ハナがいつもと違う寝床の様子に何かを察したようだ。

「うん。これ、昨日刺されたんだ」

 ハナにどうしたのと聞かれたシャツに広がった血の染みについて説明する。

「さ、刺されたって、大丈夫なの?」

 ハナが青ざめた。

「うん、ポーションですっかり良くなってるよ」

 服をめくって傷跡すらないお腹を見せる。

 本当、ポーションってすごいよね。

 止血と抗生物質と疲れを飛ばすのと……高級なヤツじゃなくても、スパンと切っただけならくっついちゃうなんて。

「え?どんなポーション使ったの?」

 ハナが驚いて私のお腹を見た。

 どんなって。そりゃ、自分で作ったヤツで。わざわざ人の作ったポーションをもらうようなことは……。

「まぁとにかく、刺されて、それでいろいろなことに気が付いたの。私は……ここにいちゃダメなんだって」

「え?どういう……?」

「はっ。リョウナ様は、こんなところにいるような人間じゃないそうだっ!」

 いつの間に起きたのか、マチルダが近くにあった椅子を蹴った。

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