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「ディールに会いに行こう……」
決めた。
「え?ディールに?パズにも会うの?」
月の精がびっくりした顔を見せる。
「え?ああ、もう寝ているだろうから、顔だけでも見られるならパズ君にも会いたいなぁ」
にこりと笑うと、月の精がぎゅっと唐突に私を抱きしめた。
「パズもリョウナにいつも会いたいって思ってる。ずっと一緒にいたいって。でも、今は小さいパズはいない」
「え?パズ君、ディールといないの?」
なんで?ディールはパズ君のことかわいがっていたようだし、途中で放り投げるような無責任な人にも思えないのに。
「あの、えっと、朝に戻る、パズえっと、夜は……」
もしかして、夜はディールさん、パズを誰かに預けているのかな?ギルドの前の宿に泊まっているといったけれど、誰かパズ君の面倒を見てくれる人が他にいる?
女性とか……。
綺麗でグラマーな女性が、ディールと仲良さげに笑っている姿を想像して、うっと息をのむ。
いや、別に、ディールさんがどういう人とお付き合いしていようと……パズ君をちゃんと面倒見てくれる人なら、それで……。
バクバクと自分の内側に芽生えた複雑な感情に理由を持たせようとぐるぐると考えを巡らせる。
パズの面倒を見てくれる女性がいた場合……夜にのこのこ別の女が訪ねて行っては迷惑だよね。うん。
月の精が妙に焦った様子なのも分からなくない。
「明日にしようかな。ポーションをまとめて買ってほしかったんだけれど。あ、ディールさんに伝言は頼めますか?」
「え?ポーション?まとめて?ほかにもいっぱいあるの?」
寝床の板を上げて、中に隠してあるポーションを見せる。
4~500本ほどのポーション。
「うわぁ、すごい!こんなにたくさん。あの、お金あるから、全部、ちょうだい。リョウナの作ったポーション、毎日飲みたい」
「え?全部?」
ディールさんはギルドとの行き来もありそうだし、ハナに連れられた宿では冒険者相手にポーションを売ることもあると言っていたから、大量に買ってもらっても誰かに売ってもらえるかもと思ったけれど。
月の精さんは、こんなに大量に買ってどうするつもりなんだろう。毎日2~3本飲んでも半年分とかあるよ?
「はい、あの、これで足りる?足りなかったらまた持ってくるね」
手に金貨を1枚渡された。
「あ、金貨?ごめん、金貨の価値が分からない……」
銅貨100枚で銀貨1枚だったから、もしかして銀貨100枚で金貨1枚なのでは?だとするともらいすぎ。
10本で銀貨1枚だから、500本あったとしてもおまけとかいろいろして銀貨30~50枚もあれば……。
「あのね、リョウナが言ってたでしょ?」
「私?」




