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「おい、こんなところで死ぬなっ」

 パチンと頬を叩かれる。

「あ……私の、鞄の、ポーション……」

 内臓までいってる傷が果たしてポーションでなんとかなるかどうかは知らないけれど。

 出血が止まるだけでも助かる可能性が上がるはず。

 それに、ポーションはもしかすると抗生物質のような役割もあるんじゃないかと思っている。

 だって、傷がふさがっても菌がそのままだったら腫れたり熱が出たり膿んだりやばいよね?そういうことがあるなら消毒してからポーションを飲むはずだし。

 破傷風は怖い病気だ。

 今でこそ日本人は予防接種で怪我したからとばい菌にそれほど怯えるようなことはないけれど。それでも、汚いナイフで腹を深く刺されたとなれば、話は別。絶対抗生物質ないとやばいような気がする。うん、あの獣の汚い歯でかじられたやつも、狂犬病とか何も心配することもなかった。

 ダーナが私のリュックからポーションを取り出して手渡してくれた。

 血まみれの口の中に乱暴にポーションの瓶があてがわれる。どうやら、うまく蓋を開けられなかったのでダーナが蓋を開けて口に入れてくれたようだ。

 ……それが、ダーナ自身の保身のためだったとしても素直に感謝しておこう。

「何、なんでこんな効果が高いポーションを持ってんのよ……」

 ダーナの声が遠くてよく聞き取れない。

 意識が……遠のく……。


 目が覚めると、月明かりがまぶしかった。

 と、いうのは大げさな表現でもなんでもなくて、心配そうに光り輝いてる月の精が私の顔を覗き込んでいるもんだから、まぶしい。

「リョウナァ、よかった。よかった。リョウナが死んだら、この国滅ぼしちゃうところだった」

 何を物騒な。

 冗談にしても、月の精のようなあなたが言うと冗談に聞こえないんですけど。

「大丈夫だよ、ちょっと怪我したけれどポーションで治ったよ。便利だね、ポーションって」

 上半身を起こして、刺されたお腹を確認すると、すっかり治っている。あちこちに乾いた血の跡がなければ、何にも起きなかったようだ。

 いや、ちょっと血を失ってくらくらするかな。もうちょっとポーション飲んでおこう。

 リュックをさがすと、ちゃんとあった。ダーナに何も盗まれた様子はない。

「はい、どうぞ」

 1本を自分ように、もう1本を月の精に渡す。

「ありがとう。あ、お金」

 そうだった。買ってくれるんだっけ。

 ふたを開けてごくごくとポーションを飲む。血は補えなくても水分も補う必要があるから、2,3本続けて飲む。あとはやっぱり鉄分豊富な食材食べないとなぁ。よし。もう、予定を変更してさっさとここを出よう。

 助けてもらえる時は助けてもらう。

 それから……。

 私に力があれば私が誰かを助けられるようになる。

 マチルダやハナ…それに。

 ダーナを助けたいかと言われれば複雑な気持ちになる。けれど、これから同じような目に会う人が出ないように、やましい商売はやめさせたい。

 きれいごとばかりを言うつもりはない。本当に行き先が無くてわらをつかむような人の受け皿としてはいいところなのかもしれないのだから。

 だけど、まっとうに生きて行こうとするものを阻むようなシステムは駄目。何とかして法的に整備できないのかな。

 契約書……だとか、最低基本賃金だとか……。

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