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暴力描写あり、閲覧注意→苦手な人はあとがきに飛ぶ
どすっ。
けりを入れられ、手が離れた。
思いいきり空気を吸ったものだから、せき込んでしまう。
床に倒れこみせき込む私を見てダーナが笑った。
「あははは、せいぜい自力で何とかすることだね!」
ダーナの表情は月明かりのシルエットになって見えない。
ただ、いつもきっちりと整えられている髪が乱れている。それに狂気さを感じた。
「助けはいらないんだろ?助けを待たないんだろ?……助けを呼んだって、誰も来やしないんだから」
ダーナが唾を吐きかけて扉の向こうへ消えた。
何?何しに来たの?
すぐにその理由が分かった。
見知らぬ男が3人、扉から現れた。
一目であまり素行の良い男ではないというのが分かる。
「こりゃいい」
「タダで遊べるっていうから期待してなかったが、思ったより上玉じゃねぇか」
「俺が先だ、お前らは腕と足を押さえてろ」
これは、やばい。
ダーナがこの男たちをここに引き込んだんだ。
逃げないと。倒れこんでいたため、起き上がることに時間を取られてしまった。
気がつけば、三方をふさがれている。
「お、お金はいらない?」
交渉できないかと口を開く。
「く、はははっ、馬鹿が、金なんてここにいる女が持ってるわけないだろ」
そりゃそうか。
「売ればお金になるものなら……」
リュックの中。鏡一つがすごいと言っていたじゃないか。スマホとか絶対に手放せないものはあるけれど、鏡の一つなら……。
「あはは、馬鹿だ、こいつ馬鹿だな。自分で金目のものを持ってるって教えてくれてるぞ」
正面の男が舌なめずりをした。
「じゃぁ、遠慮なく”後で”もらって帰るとするよ」
しまった。
そうだよ、こいつらにとれば、別に金目の物だけもらって帰るメリットなんてないんだ。
逃げる道は男たちの向こう側のドア。
「あっ!」
男の一人が私の足首をつかんで引っ張る。もう一人が私の手をつかんで、そのまま床に倒して拘束した。
(*念のため描写を削除します。襲われてます)
やだっ!
「いやだっ!いやーっ!」
力を入れてもがくけれど、足も腕も押さえつけられていて逃げようがない。
「おい、しっかり押さえておけよ」
(*念のため描写を削除します。襲われてます)
助けて、やだ、やだ、やだ!
ダーナの言葉が頭の中で渦巻く。
助けてと言っても誰にも助けてもらえない人間の気持ちがお前に分かるもんか……。
血を吐くような色の言葉だった。
「くっそ、はずれねぇ、どうなってんだ、ちょっとナイフをよこせ」
ジーパンのボタンに業を煮やした男が手を押さえていた男にナイフを要求した。一瞬腕の拘束が外れた隙に、手を伸ばして近くにあるものをつかんで男に投げつける。
足踏み式で使っていた木の大きな器だ。
さして攻撃力なんてなくて、男を余計に苛立たせただけだ。
「俺はなぁ、別に生きてる女じゃなくたっていいんだよ」
ナイフを受け取った男が、私の顔を殴った。
っつ。血の味が口の中に広がる。
「大人しくするか、俺に殺されるか、どっちがいい」
男がけたけたと笑う。
頭がおかしい。いや、この世界はこれが普通なの?
「おいおい、殺すと冷たくなる前に急がなくちゃならねぇだろ」
「どうせ人が戻ってくるまでに急ぐ必要があるから一緒じゃね。もう抵抗されるの面倒だし、やっちゃえよ兄貴」
人を殺すことくらい、何でもない、そんな世界。
いや、いや、いやだ。
助けて。私は日本に帰るんだ。死にたくない。
これだけうるさくしていても誰も来ない。
叫んでも助けが来ないんだろう。いや、叫べば男の持っているナイフで殺される。
頭後ぐるぐると、ダーナの言葉が。
誰にも助けてもらえない人間の気持ちがお前に分かるもんか……。
ほろりと涙が落ちる。
ダーナ……。
努力もせず助けを待つだけで人を不幸にしてやろうとする最低の人間だと……。
ああ、確かに私は見下していた。
ダーナ。あなたは何度も、助けてと誰かに、いいや……神にかもしれない。
何度も、何度も助けてと叫んだのかもしれない。だけれど……誰にも助けてもらえなかった……そんな経験をしたの。
今よりずっと若い、まだ子供のようなころから……。
親にも友達にも……。国にも警察にも……本当に助けてもらえない、そんな経験……。
私は甘ちゃんだ。何が自分の力でだ。違う、違う。助けてもらえるなら助けてもらえばいい。
困ったときには助けてもらえると、そういう考えが根底にあったからこそ……自分で何とかするなんて……。助けを待つなんて甘えてるなんて……。
自分で努力もしないのかと……。
なぜ、私は意固地になっていたのか。
自分で何とかするなんて、それが自分で何にもしない人よりも立派だなんて思っていたのか。
「おい、おとなしくなったぞ、これなら殺す必要ねぇな」
「あはは、はじめからこうしてりゃいいんだ。ほら、ナイフよこせ邪魔なズボンを」
自己責任という言葉が頭をよぎる。
自己責任なんて無責任な言葉はない。人にはそれぞれ能力の限界があるというのに……。
3歳の子に自己責任だから飢え死にしても自分が悪いなんて言う人間がいるだろうか。
なぜ大人になれば無責任に自己責任だと言えるのだろう。同じことができる人ばかりじゃない。できない人はできない人が悪い?
そんなはずがあってたまるか!
なら助け合いなんて言葉も、福祉なんて制度だっていらないんだよっ!
「ディーーーーッル、助けて、あなたこそが正しかった!正しかったのよっ!」
強くて人を助けられる力がある者が、弱い者を助ける。
何も私はディールにいつも助けれるつもりなんてない。自分を殺したりなんてしない。
私には私ができることでディールや他の人を助ければいいっ。きっとできる。
いいえ、やってみせる。
たとえば足踏み式のポーションづくりがマチルダやハナの助けになったように。他にも私は誰かを助ける。助けられた分を誰かを助けることで返すんだ。
「うるせーっ、やっぱり死ねや!」
男のもつナイフが腹を貫いた。
ぐふぅっ。
口から血があふれ出る。
……ありゃぁ。これ、死ぬ?
ちょっとだけ月の精がまた助けに来てくれないかなぁなんて思ってたけど。
「ばっ、何してるんだいっ」
焦った声のダーナが飛び込んできた。
「こんなところで人を殺されたら困るんだよっ。それに、あんたたちも、もう街にいられなくなるよ?そっちの男は街を追い出されるのは4つ目だと言ってなかったかい?次は死刑だろ」
「やべぇ、俺は知らねぇ。俺は刺してねぇ」
腕を押さえつけていた手が離れ、立ち去る音が聞こえる。それにつられたのか他の2人も逃げて行ったようだ。
ダーナが引き入れた男たちに刺される→やりすぎだとダーナが焦る、男たちが去る
その中で、リョウナの気持ち抜粋
助けて。私は日本に帰るんだ。死にたくない。
これだけうるさくしていても誰も来ない。
叫んでも助けが来ないんだろう。いや、叫べば男の持っているナイフで殺される。
頭後ぐるぐると、ダーナの言葉が。
誰にも助けてもらえない人間の気持ちがお前に分かるもんか……。
ほろりと涙が落ちる。
ダーナ……。
努力もせず助けを待つだけで人を不幸にしてやろうとする最低の人間だと……。
ああ、確かに私は見下していた。
ダーナ。あなたは何度も、助けてと誰かに、いいや……神にかもしれない。
何度も、何度も助けてと叫んだのかもしれない。だけれど……誰にも助けてもらえなかった……そんな経験をしたの。
今よりずっと若い、まだ子供のようなころから……。
親にも友達にも……。国にも警察にも……本当に助けてもらえない、そんな経験……。
私は甘ちゃんだ。何が自分の力でだ。違う、違う。助けてもらえるなら助けてもらえばいい。
困ったときには助けてもらえると、そういう考えが根底にあったからこそ……自分で何とかするなんて……。助けを待つなんて甘えてるなんて……。
自分で努力もしないのかと……。
なぜ、私は意固地になっていたのか。
自分で何とかするなんて、それが自分で何にもしない人よりも立派だなんて思っていたのか。
自己責任という言葉が頭をよぎる。
自己責任なんて無責任な言葉はない。人にはそれぞれ能力の限界があるというのに……。
3歳の子に自己責任だから飢え死にしても自分が悪いなんて言う人間がいるだろうか。
なぜ大人になれば無責任に自己責任だと言えるのだろう。同じことができる人ばかりじゃない。できない人はできない人が悪い?
そんなはずがあってたまるか!
なら助け合いなんて言葉も、福祉なんて制度だっていらないんだよっ!
というわけで、リョウナの気持ちに変化ありました。
あーっと、念のため今回の表現はなろうで大丈夫?と運営様に質問しましたところ、個別に答えられないと返答いただきましたので(*念のため描写を削除します。襲われてます)ということになりました。
(本当か分かりませんがべろちゅーでアカウント停止になったって話も聞いたことがあるので……)
また、今回、1話のボリュームが多いのはニガテな方が1話飛ばせばよいようにと配慮です。
(*'ω'*)今後ともよろしくお願いします。
あ、襲われてるっていうのは、服を服を脱がされそうに適なので、無事です、無事。刺されたけど←別の意味で無事ではない
いやもう、なんていうか、基準があいまいすぎて、時々すごく厳しいみたいな話聞くので。
念には念です。はい。
これでダメとかはまずないはずなんですけど……15Rも前書きに注意もしたし。
(´・ω・`)思い当たる節がない。




