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月に橋?なに、この世界って、宇宙エレベーターじゃないけれど、月に橋を渡せたりするの?すごいな。魔法とかそういうので?
「数日前に目撃されて、あんなに噂になってるのに」
「マジか?月への橋って、神獣様が姿を現すというのかい?」
ダーナが驚いた顔を見せる。
神獣?神様の獣の、神獣?
「せ、戦争が、戦争が起きるんですか?」
ハナが青ざめてミミリアに迫った。
戦争?なんで、神獣で戦争なの?
「知らない。でも、神獣を巡って各国の動きが活発になるだろうって、備えるためにポーションが飛ぶように売れるようになるよ。冒険者以外も、いざという時のために買い集めに走ってる」
神獣を巡って?
取り合うってこと?地球でも、宗教を巡って戦争が起きることがある。
神という存在が人々を救うとは限らない。
「それに、私の作ったポーションの効き目が良かったからまた欲しいって客が待ってんのよっ!さっさとよこしなさいよっ!」
ミミリアが私の作ったポーションをさらに3つ手にして出て行った。
「ミミリアが作ったポーション?ポーションってここで作ってるんだよね?」
首をかしげるとハナが小声で教えてくれた。
「1本から3~4本作れるって言ってたでしょ?」
ああそういえば。確かに。純度100%という言葉があるくらいだから50%とか20%とかもあるわけか。
「水や時にはお酒と混ぜたり、飲みやすくはちみつや果汁を混ぜたりして作るのよ。売り子は各自自分のレシピを持っているわよ」
ああ、なるほど。
「調合するんだ。ミミリアは調合の腕がいいってことね」
「調合?そんなんじゃないわよ。何かと混ぜて効果が代わるわけないでしょ。もし変わるならみんな同じ材料で混ぜるようになるわよ」
ハナがすぐに否定した。あれ?
「でも、店によって効果が高いものが売っていたりするんでしょ?」
「一番効果が高いのは、聖女の祈りを受けたもの。あとは純度100%のものが高くて、薬葉に何かを混ぜれば混ぜるほど効果は低くなるって話」
私の怪我を治すためにディールが使ってくれたやつだよね。聖女の祈りがとか純度がとか言ってた。
混ぜると効果が下がるなら混ぜなきゃいいのに。ああでも、飲みにくいから?オレンジジュースでも果汁100%のもあるけど、果汁10%くらいのものも人気よね。
「この店は疲れが回復する程度の効果があればいいからって、純度100%1本から5本は作ってるって噂。だから効果が高いわけないのよ。買う方も女の子目当。ミミリアの作ったものが効果が高かったなんてきっと客のリップサービスよ」
なるほど。ミミリアと親しくなりたい人が、ミミリアの作ったポーションを褒めただけか。