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「あー、1分1本ペースで作れたら、2時間もすれば100本は軽いと思ってたんだけどなぁ……。腕が……」

 待てよ?

 ディールさんの言葉を思い出す。ポーションは疲れが取れると言っていなかったか?

 作り立てのポーション、瓶の口から少し零れ落ちたものを指で救ってぺろりと舐める。

「あ、疲れが飛んだ」

 すごい。ほんのちょこっと舐めた程度で、この効果……。魔法みたい。いや、魔法の薬?ポーションって何なんだろうか。

 作業再開。少し欲張って入れる葉も増やしてみようかな。疲れが取れるのであれば抵抗が強くなって疲れても平気だよね?

 順調。あっというまに100本できた。できたものは、寝床に隠しておくことにする。板の下の地面を掘って穴をあけてあるのでそこに入れて板をかぶせ布をかぶって……お腹がなった。

 やはり、1日でパン1個は辛い。ノルマを達成できなくても夕飯を食べることはできるらしいけど、借金がその分増える。他の人たちはどうしてるんだろう。

 この時間、出かけているけれど、仕事をしながら食べているのかな。仕事って、やっぱりあれだよね。男性の相手をする系……。売春。

 まさか、このポーション屋が表では地下アイドルやメイド喫茶のような女の子たちが好みそうな華やかさがあるのに、裏では遊郭のように借金で逃げられないようにして体を売らせる場所だったとは……。

 まてよ?もし、遊郭のような……とすれば、表の華やかに見える子たちも……。いやいや、それならさすがにディールさんも知ってそうだし。

 パズを助けた私に、そんな場所を紹介するわけないよね?冒険者との出会いの場ってだけだよね。冒険者と出会ってやめていく女の子たち。

 行き遅れた者は……あー。ミミリアの顔が思い浮かぶ。20歳になったら……表から裏に回されるなんてことはないよね。借金が無ければ仕事を辞めるだけだよね?まじめに働いていれば、借金するようなことには……ならないよね?

 ハナは仕事を断っていたから、無理強いはしないようだ。ハナは仕事でないなら一体どこへ出かけているんだろう?

「ポーションちょうだい」

 柔らかな男の人の声が降ってきた。

 条件反射のように空を見上げると、昨日の月の精がいた。

「こんばんは」

 目の前に降り立った月の精に挨拶をして、隠した分とは別に、リュックの中に分けておいた作ったポーションを1本取り出す。

「ありがとう。あ、これ。お金」

 月の精が、ポケットからコインを一枚取り出した。

 え?精霊がお金?あ、やっぱり人間なの?パズ君のお父さんかお兄さんなら人間か。

 びっくりして月の精の顔を見る。

 綺麗な顔。月の光だけだと言うのに、まるで女優さんがスポットライトを浴びているように輝いて見える。

「お金?別にいいのに。リュックを取り返してくれたお礼だから」

「ううん、今日は別にお礼されるようなことしてないでしょ?お礼のお礼のお礼とかお礼ってことじゃなくて、お金を払って買えば、お礼してもらうことが無くなっても、リョウナの作ったポーションが飲めるんだよね?」

 あー。確かに。お礼だからいいよというのはいつまでも続けることはできないのかな。律儀だなぁ。

「えーっと、ポーションの値段が分からないんだ」

 私の知っている値段は、ポーション1本買い取り価格なら銅貨1枚。借金になるときは銅貨10枚。売り上げが10枚分減るからなのかな?ってことはポーションの市場価格は銅貨10枚?

 月の精の白くて滑らかな肌に乗せられたコインを見る。

「たぶん銅貨10枚で、えーっと、これは銀貨?」

 コインの色を見れば銀色に光っている。

「うん。銅貨100枚で銀貨1枚だよ。だから、えーっと、ポーション買えるでしょ?」

 にこりと笑う月の精。

「1本銅貨10枚なら、銀貨1枚で10本ね。おつりとか用意できないからポーションでいい?おまけもするね」

 ポーションを15本取り出して渡す。

「こんなにいっぱいいの?嬉しい」

 月の精にぎゅっと抱き着かれる。


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