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「ここね、ポーション屋で、私はポーションを作ってるのよ。でも、作ったポーションを飲んだことがなかったから。今から作って飲んでみる」
どれくらい効果があるか試してみたかったんだ。
葉っぱを少し取って急いで瓶1本の半分くらいのポーションを作る。
一さじすくってなめてみる。
「ん?ポーションってすごい……」
スプーン一さじだけど、すぅーっとあちこちの痛みが引いた。
血が出ていたおでこに手を当てれば、すっかりつるつるだ。
誰でも作れるポーションでもこんなに効果があるんだ。そりゃ、最高級って言われるやつは大怪我治るよねぇ。
「ポーションが飲みたい。リョウナの作ったやつ」
月の精がキラキラした目で私を見ている。
「ちょっと少ないけれど……どうぞ」
月の精に器を渡すと、すんっと鼻を鳴らして香りをかいだ。
「いい匂い」
「そう?」
青臭い葉っぱの汁の匂いだ。……私は嫌いじゃないけれど、特別いい匂いというわけでもないと思うんだけどな。
「リョウナのいい匂いがする」
え?私の匂い?作る時にうっかり化粧品の匂いでも移っちゃった?リュックの荷物いっぱい散らかされたし……。
ごくごくと月の精が器に残ったポーションを飲むと、ぱぁーっと、月の光を反射……いや、反射するほど月の光は強いわけはない。目の前の月の精が、自ら輝きだしたのだ。
その光が、月へと昇っていく。3つある月のうちの一つへと、光が伸びて行った。
すごい。
「うわぁ、すごい」
いやいや、月の精さんが驚いたような声を上げたけれど、そのセリフはこっちでしょう。
「リョウナのポーション大好き。また今度作ってね」
にこりと微笑む月の精は消えて行った。
「消え……た」
本当に月の精だったのかな?それとも、魔法?
使ったものを井戸の水で洗って片付けて、もう少し寝ることにした。……たぶん月が出ている間は月の精の力で3人は眠っているでしょう。
あ、そういえばハナはこの騒動でも寝てるの?
と、あたりを見回すと姿はない。逃げた?
まぁどうでもいいや。夕食も抜きだったから無駄に動くつもりはない。おやすみなさい。
「起きて、ねぇ、起きて」
ゆさゆさと体を揺さぶられる。
目を開くとハナの姿があった。
「早く起きて食べないと、ダーナたちが起きてからだと食べられちゃうよ」
朝だ。ハナがパンを手に持って私に渡してくれた。
「ああ、ありがとう」
どうやら朝食が運ばれてきたらしい。パンだけという粗末さだけれど、ありがたいことに大きさだけはしっかりあるし、カビてるわけでもない。
両手に乗り切らないようなサイズのパン。
残念ながらふわふわなパンではいけれど、逆によく噛んで食べれば空腹が満たされそうだ。半分は取っておいてリュックの中に入れ、半分だけ食べることにした。




