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「何を言ってるのリョウナ、僕がお礼したんだから、お礼のお礼なんていらないよ?」
月の精は、神々しい姿で年齢的には20代半ばに見える。けれど、ずいぶんと話かたは砕けているし、それに……どうにも、なんだか知り合いに話かけているような感じ。
と、キラキラしている月の精の顔をじーっと眺める。
あれ?誰かに、似てる。
そんな馬鹿な。この世界で会った人なんて少ないのに。
「あ、パズ……」
髪の色、肌の色、瞳の色……それから線の細い感じとか、パズに似ているんだ。
パズの名前を口にしたとたんに、月の精が両手を広げて嬉しそうに私に抱き着いた。
「え、あ、の」
「パズのこと覚えててくれた」
いや、そりゃ半日前に会ってたんだから覚えてるけれど。月の精……のように綺麗なこの人は、パズとどういう関係なの?
親子?兄弟?事情があって一緒にいられないからディールさんにパズ君を預けてるんだよね?でも心配だから様子を見に行ったりしてるってことかな?
「もちろん、パズ君かわいいから、忘れるわけないですよ」
抱き着かれてびっくりはしたものの、西洋風な顔立ちの人たちであれば、コミュニケーションも西洋風かも。ハグやほっぺチューにいちいち驚いちゃだめだよね。うん。
「パズかわいい?パズのことリョウナ好き?」
月の精が、体を話て嬉しそうに私の顔を覗き込む。
いや、近い、近い。綺麗な顔が近いよ。キラキラまぶしい。驚きはしなくてもどぎまぎはします。
それにしても、うん。パズ君の話題になるとずいぶん興奮気味。親ばか?兄ばか?ふふ。パズ君確かに可愛いもんねぇ。
しゃべれないけれど、あのお顔で「リョウナしゅき」とか言われたらメロメロでしょう。メロメロでしょう(大事なことなので2回)。
「リョウナっ、怪我してるっ、どうしよう、ああ、リョウナが怪我っ」
つつーっと、額から何か垂れてくる感覚がある。
そういえば額も殴られたし、血が出てきたかな。大した怪我ではないと思うけれど。
月の精は血を見たことがよほどショックだったのかパニックのようになってる。
「大事なリョウナを傷つけたの誰っ。許さない」
「あはは、ありがとうございます。そこまで怒ってくれて。でも、大丈夫です」
大丈夫と言っているのに、月の精はまだ気持ちが落ち着かないようだ。
「リョウナ、だって、血。痛いよね?怪我、痛いよね?」
うーん。
「あ、そうだ、ちょうどいいや。気になってたんだ」
「え?」
月の精の両手を取って顔を見る。
ちょっと落ち着いたかな。




