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神獣の愛し娘はポーション屋を追放されたので、お茶屋になりたい  作者: とまと(シリアス)


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「返してください、取り分って、それはもともと私のものです」

「誰も信じないわよ。じゃぁ、私はこれ、もらってくわね」

 ミミリアがダーナに手を振る。

「待って、持って行かないで、私のよ、返して」

 ミミリアの腰に縋り付いて止める。

「もうっ、うっとおしいわねっ!」

 ミミリアが近くにあった木の皿をつかみ私の額を殴った。

「これ以上痛い目に会いたくなければおとなしくしてなさいよっ」

 一瞬目の前がちかちかっとして、視界がおぼつかない。

 ちかちかが収まると、ミミリアをにらみ上げる。

「返してください」

「うるさいっ」

 ドンッと今度は肩に衝撃が走る。

 皿で殴られた。それから横からダーナのけりが入る。

 痛い……。

 痛みに、ミミリアの腰から手が離れ、地面に這いつくばった。

「返して、返してっ!」

 涙が落ちる。返して、返して!

 声が枯れそうなほど同じ言葉を口にする。

「眠れ」

 ふと、静かな声が頭上から降り注いだ。

 すると、まるで糸が切れたように、3人がぱたぱたと倒れる。

「有るべき者の手に帰れ」

 再び静かだけれどしっかりした、何もかも包み込むような不思議な声が頭上から降り注ぐ。

 すると、すぐに散らばっていたリュックの中身がリュックに戻っていく。

「ま、魔法みたい……」

 じゃなくて、魔法なのかな。この世界、魔法があるんだっけ?ポーションもすごいし。

 屋根の途切れた場所から、月明かりに照らされてキラキラとした青年が下りてきた。

「月の……精?」

 思わず口走りハッとする。

 魔法があるからといって、妖精の類もいるとは限らない。

 けれど、それほど、神秘的で美しい青年がそこにはいた。

 ふわりと音もたてずにゆっくりと空から……まるで月の光に紡がれて姿を現したように地に降り立った。

 薄い金色の髪。美しい濃い金の瞳。すけそうな白い肌に、白いローブのような服を身にまとっている。

 整った顔に、いつかどこかで見た天使の絵を思い出した。ううん、天使というよりは神々しささえ感じる。

「大丈夫?リョウナ?」

 え?私の名前をなぜ知っているの?という気持ちと。名前を知っているなんてやっぱり月の精か月の神さまなんじゃないかという思いとで、うまく返事を返すことができなかった。

「はい、荷物」

 月の精(仮名)が、リュックを差し出す。

「ありがとうございます」

 受け取りすぐにぎゅっと抱きしめる。

 よかった。戻ってきた。

「よかった。お礼ができて僕は嬉しいよ」

「お礼?あの、私の方こそ何かお礼をしなくちゃ、でも、あいにくとその」

 こちらの世界のことがまだ全然分からないし、こちらの世界のお金もない。どうしよう。


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