表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/97

19

 理科の実験を思い出すなぁ。いろいろな野菜から汁を出そうっていうやつ。あれはまずビニールの袋に入れて棒でたたいてから絞ったんだったかな。

 ちまちますりつぶすよりも、叩いて汁を出した方がきっと早い。あ、叩いてないけど、踏んでるけど。

 ぎゅっぎゅっぎゅっつぎゅっ。何度も何度も踏んでいるうちに、次第に足に伝わる感触が代わってきた。

 汁がでてきたかな。そう思ってもまだ続ける。

 足踏みしているだけでは退屈なので、この後の工程を考える。

 万力やテコを利用したような機械は当然ないので、布を木でぐるぐる絞る方法が一番効率的だろうか。

 雑巾を絞るように作業している女性の姿が目に入る。人の手の力では絞り残しが出るだろう。出血した時の止血でも、木の棒を布に通してぐるぐる回すという方法がある。藍染の映像でも、絞る様子は木を使っていたと思う。

 そのあと。

 女性が汁を瓶に入れている様子を見る。

 注ぎ口の着いた小さな片手鍋のような形のもので瓶に入れているけれど、瓶の口は小さくてこぼさないようにかなり慎重に行っている。

「あっ」

 3年いると言っていたつり目女性の背中を、最年長の女性がドンッと肘で着いた。

 手元がくるって、3年いると言っていた女性は瓶を取り落としてしまう。

「何をするんだよ!ダーナ!」

「ごめんなさいね。ちょっと肘が当たってしまったようだわ。あはははは」

 絶対に、わざとだ。一番年長の女はダーナと言うらしい。

 なぜ、ダーナそんなことをするのだろう。

「自分がいまだにノルマをこなせないからって、嫌がらせ?」

「なんだよ、お前のノルマは20本だろ、私は25本ノルマが課せられてるんだっ!」

「知らないわよ、そんなのっ!」

 二人がののしり合いを始めた。

 何を足の引っ張り合いをしているんだろうと、ちょっと呆れる。もう一人は、おとなしく黙々と作業を続けていた。

 私も、黙々と作業をするだけ。

 今日は30本は無理だろうなぁ。そうすると借金か。例えば200本分借金したとしても、毎日50本作れば、ノルマ30本+20本返済分で10日で返済できるよね。1日が8時間労働ではなく、12時間労働と考えればなんかそれくらい作れそうだよね……。んー、でも20本や25本が無理って言っているけれど……。

 薬研でちまちますりつぶしてるからじゃない?

 瓶に移し替えるときに時間かけ過ぎじゃない?

 争ってる時間が無駄じゃない?

 足踏みをやめて布にくるんだ薬葉の様子を見る。

 布は緑に染まり、器に汁がしみだしている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ