表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/97

18

「ノルマが達成できない日の分は借金になるんだよ。宿代と食事代は借金」

 借金?

「そうさ、1本足りなければ銅貨10枚、2本足りなければ銅貨20枚……借金はどんどん膨らんでいく」

 は?

「ノルマを超えた分の買い取りは1本銅貨1枚だと聞きました。足りない分は銅貨10枚?ノルマが達成できるようになっても、借金を返すの大変じゃないですか」

 もし、10本しか作れなかったら、銅貨200枚も借金になってしまう。1日でそれだけの借金。

 返そうと思ったら、ノルマに加えて200本も作らなければいけないということだ。

「別の方法で稼ぐように言われるだけだ。借金まみれになったころに声がかかるさ……」

 別の方法?

「そっちで稼げなくなりゃ追い出される。リョウナといったか、あんたの人生も終わり」

 店長にお尻を撫でられたことを思い出す。

 別の方法って……体を売るとかそっち系?

 ぶるると体が震える。

 借金がかさむ前に、やめなきゃ。今すぐ出て行く?

「ぼやぼやしてていいのかい?今日のノルマだって1本も減らないよ?」

 え?そんな!

 30本作らなければ、今日だけで借金が銅貨300枚。太陽はもう傾き始めている。

 彼女たちは名乗りもしない。ただ私を笑うだけ笑って仕事に戻る。

 当然、誰も作業の仕方を教えてはくれない。

 薬葉を絞って汁を瓶に入れる。たぶんするのはそれだけだ。

 皆の作業の様子を見れば、薬研のようなものに葉を入れてすりつぶしている人、すり鉢のようなものに入れて作業する人と、やり方は自由のようだ。

 使えそうなものは無いかと見渡す。そば打ちに使うようなサイズの木の器が2つ目に入る。

 よし、とりあえずやってみよう。

 器を地面に置き、布に薬葉を大量に包む。

「馬鹿だね、たくさん一度に作ろうとしたって無理なのに」

 また笑い声が聞こえる。

 ……ああ、薬葉は、匂いも見た目も茶葉にそっくりだ。懐かしさに胸がいっぱいになる。

 布にくるんだものを器の上に置き、その上にもう一つの器を重ねる。

 靴を脱いで、その上に立って、足踏み。

 そうだよ。ワインを作る時には葡萄を踏みつぶして汁を出す。うどんを打つときも腰を出すために足で踏む。

 力がいる作業は、手でやるよりも圧倒的に足でやったほうがいい。

 笑い声が止まった。顔をあげると、一斉に視線をそらされる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ