第9話 緊急任務、ウィーレ村解放作戦 炸裂、“アクアブレッド”!
「クソ、遅かったか..。」
集落を高台から見渡すが、いたるところから煙が上がっており、村人と、魔族が争っている様子が伺えた。
まずいな、これではさっきと同じだ。数、さらには範囲も大きすぎて対処しきれない。
こうなれば、術者を直接抑えるしかないな。方針が決まった。
「2人は、危ないから、ここで待ってろよ。」
俺は、合流していた、マーティン、サーシャに語り掛けたつもりだったが、そこにすでに2人の姿はなかった。あの2人..あれだけ言ったのに..。
しかし、俺はこうなるだろうと予想し、あらかじめ2人に発信道具をつけておいたのだ。
この魔道具の発する魔力を感知することで、位置を確認できるのだ。
「さてー..とりあえず、2人を回収して...。」
「こんにちは..はて、まさかここに兵士がいるなんてね..?」
そう言って、突然、俺の隣に現れた男は、俺の肩に腕を回す。
...っ..体が..動かない....。
「おっと、無理をする必要はないよ?このまま、楽につぶされようね..?」
今まで気がつかなかったが、俺の後ろには大きな影があった。
「あんた、まさか..?」
こいつ、たぶん、召喚魔法の術者だろう。だとすると、後ろにいるのは..
「遅いよ。」
後ろにいる影が動き出す。
何とかこの状況を脱しなければ..。
「ここで..!ここで、俺を殺すのは、ナンセンスじゃないですか..?
俺は、こちらの動きを知る、唯一の存在なんですよ?」
一瞬、奴らの動きが止まった。
ここしかない!俺はポシェットから煙球を取り出し、地面に落とす。
俺のそばにいた男は、用心深いのか、すぐさま俺のそばから離れ、後ろの影に指示を出す。
「やれ!!ビッグオーク!!!」
煙の中でも、お構いなしに腕を振り回す。ビッグオークと言えば、C級魔族だし、普通なら、俺の手には負えないだろう。
しかし、こいつが術者となれば、何とかしてここで叩かなければ。
暴走するオークをとらえるのは容易だ、そうなれば、こいつはなんとかできる。幸い、右腕は完治している。
「"アクアブレッド!!!"」
俺は、病み上がりお構いなしに、全力で奴の体にかましてやる。
術者にとっては、煙の中から自慢の魔族が飛んできたのだから、さぞ驚いただろう。
「さて、やるか??」煙から出ながら、俺は最大限自分を強く見せながら言う。ホントはすっごく腕が痛い。頼む、これで引き下がってくれ....。
「残念ながら、君のステータスはわかってんだよ。この目でね、【チェック】っていうスキルがあるんだ、悪いね新兵!
セシル・ハルガダナ、ステータスは、お世辞にも強いとは言えないね、君、何者なんだい?」
しまった、そんなスキルがあったとは。
「あ、あんたこそ、知らないのか?【フェイクニュース】ってスキルで、ステータスは改編できるんだよ!」
もちろん、嘘っぱちだ。しかも、すぐにばれてしまった。
「ははっ、嘘つかなくていいよ、ステータスは見られないようにガードできるけど、それ自体はどうやっても変えられないものなんだよね、ああ、この神展スキルか、【集中】…見たことないスキルだな。」
「興味あるけど、敵なんだから仕方ない、ここで殺すしかないよね。」
奴はそう言って構える。よし、意識を目に集中しろ。今だけは、全神経を、やつの動きをとらえるだけに使うよう意識した。
<ヒュッ>
そんな音をたてて、敵の拳が俺の頬を掠めた。
よし、かわせた。だいぶ目は慣れたぞ。次は…。
俺は魔力を足に集める。
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「はあ、はあ…。」
まさか、ここまでやるとはね。
足に集めた魔力によって、奴のスピードに追い付くことができた。
「しかしまあ、君とこんなところで遊んでいる暇はないんだ。早くガキどもを葬ってやらないと。」
やはり、それが目的か。将来を見据えて、ユーレリアの有望な子供たちをねらったのだろう。
「早期決着はつきそうにないし、僕は行かせてもらうよ!
召喚魔法 “コールデーモンズ”」
奴がそう唱えると、俺の回りにゴブリンが10匹ほど現れた。
クソ、あくまで足止めのつもりか…。
奴が、学校の方へと走り出す。そのときだった。
「水魔法 “ウォータープール!”」
「風魔法 “ウィンド!”」
「「合体氷魔法 “アイスバーン!!”」」
幼い声がそう唱えると、奴の足元に氷が現れた。
「なにぃ!?」
勢いに乗っていた男は、そのまま横転する。
よし、上手くやったな。
マーティン、サーニャの2人が戻ってきたのだ。
先ほど2人は、授業で教えたように、周りの状況を見に行っていただけで、すぐに戻ってきて様子を伺っていたらしい。俺もそれを魔道具で感知していた。2人は俺の方を向いて、「どんなもんだい」とでも言いたげなポーズをとった。
「そうさ、俺たちのチームワークは、一朝一夕じゃねぇ。なにせ、こいつらに《戦術》の講義をしたのは他でもねぇ、この俺だ!!」
そう言って、俺はゴブリンたちの間を駆け、奴の上へと飛び上がる。
「終わりだ!水魔法 “アクアブレッド!!!”」
渾身の一撃は、奴の懐へと決まったのだった。
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皆さん、こんにちは!作者です。
第9話いかがだったでしょうか?
「魔法学校編も、いよいよ佳境ですね!」
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