第5話 新技炸裂! “アクアブレッド”!!
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「まさか、少将の俺が、一等兵、それも新兵にここまで追い込まれるとはな。」
「まあ、殺すのは惜しいが、仕方あるまい。ユーレリアに生まれたことを後悔するんだな。」
目の前の男が、剣を構える。しかし、もう抵抗する気力もない。
私、リヴィエル・ヴィクトリアはここで死ぬみたいだ。
好きな人にあんなこと言って、そのままあの世へ旅立つなんて、せめて、誤解は解いておきたかったなぁ。
でも、村のみんなのおかげで、楽しい人生だった。ここで果てたとしても、悔いは---
「終わらねぇぞ!!!」
男が振りかざした剣は、なぜか私には、届いていない。
よく見るとそこには、少したくましくなったが、それでも見慣れた後ろ姿があった。
「セシルッ!!」
気づけば私は泣いていた。
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「グッ!」
男の剣はとても重かった。このままでは受けきれない。
「ルーク!!」
俺の合図で飛び出した男の剣は、敵軍少将の腹部をかすめた。
「おおっ!君、なかなかいい太刀筋してるねぇ!なんだか楽しくなって来ちゃったよ!」
!!、速い!このままでは…!
「土魔法、“土壁”!!」
ヘンリーがそう唱えると、俺たちと敵の間に土の壁が現れる。
「いまだよ!!」
そう言うと物陰から出てきたもう一人の仲間は、リヴィエルを抱えて森の中へ入る。
俺たちもそれに続いた。
「ナイスタイミングだ、ヘンリー!
しかしどうする?奴はすぐに追ってくるぞ!」
ルークがこちらを見る。
すると、リヴィエルは「ふふっ」と笑った。
「どうしたの?リヴィ?」
そう問いかけるヘンリーに、彼女はこう答える。
「ごめん、なんか、昔を思い出しちゃって。こいういことあったよね?村のみんなで鬼ごっことかするときは、よく四人でチームになってたっけ。」
「あったなぁ、そんなことも。--となれば次はお前の番だ、セシル。こういうときは、いつもお前の知恵で打開してきたからな。今回も考えがあるんだろう?」
ルークの発言に、リヴィエルも、
「そうだね」と言ってこちらを見る。あんなことがあったからだろう、表情は沈んでいた。
「あのね、セシル…」
そう切り出した彼女の発言を、俺は遮るようにいった。
「積もる話は後で、生きて帰ってからにしよう、リヴィ。
とりあえず、なんだ、昔みたいにまた、俺についてきてくれるか?」
「うん!」
リヴィの真っ直ぐな返答で、何もかもが元に戻ったような気がして嬉しかった。
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「さあ、覚悟はできたか?おや、他の3人はどうした?」
正直、奴を相手にできるのは、3人の中ではリヴィくらいだ。申し訳ないが、もう少し頑張ってもらおう。
「うるさい、あんたなんて、私1人で充分よ!」
<キンッ、ギィンッ!>
2人が戦闘している背後から、ルークが近づく。
「来ると思ったぜぇ!?」
そう言うと敵兵はルークの剣を弾き飛ばす。
「クックック、チェックメイトってやつか?
死ね!!!」
少将の1振りを、ルークは華麗にかわす。
「何ィ!!?」
「いいかセシル、二度は通用しないぞ!」
そう言うとルークは、動揺する敵少将を殴り飛ばす。
「いいか、俺の【神展スキル】は、【体術強化】だっっ!」
そう、剣士には合わないスキルだ、とルークは言うが、陽動作戦にはぴったりだ。
よし、【集中】だ。水系に変換した魔力を手に集め、高度に圧縮する。
---すごい…!--
青かった水魔法は黒色へと変化し、俺の手のひらの上で球体化する。圧力で周囲の大気をも引き込むこの技を、さすがにまずいと思ったか、敵将は俺の方に走ってくる。
「しねぇぇぇぇ!!」
「土魔法…、“土壁”!」
ヘンリーの力で、俺と奴の間に再度、壁が出現した。
「そんなもの、二度も通用するかァ!叩き切ってやる!!」
しかし、ヘンリーの作った壁に刃は通らなかった。
「僕のスキル【防御力+】は、魔法にも適用されるんだ!」
「何…だと?!」
「さあ、いくよ!セシル!
…風魔法、ウィンドロード!」
リヴィがそう唱えると、俺は風に乗って、敵の背後までたどり着いた。さすがだ、これなら俺はあとは、やつに技を当てるだけ…。
なっ!、奴はこちらを向いて剣を構えるが、
「遅い…!」
俺は手のひらの球体を、敵の腹部へと当てる。
うおおおおおおっ、
「水魔法 “アクアブレッド”!!!」
球体は前方へと破裂し、敵将を吹き飛ばした。
同時に、辺りに水が飛び散る。
「やったのか…?」
ルークがそう呟く。
俺は安堵からその場に膝まずく。右腕の感覚がほとんどない…。
「大丈夫?!セシル!」
リヴィと、ヘンリーが近づいてくる。
ここでハッピーエンドとしたかったが、そうもいかないのが戦場だ。
「あーあ、見事にやられちゃったねぇ。
まあ、ユーレリアの新兵がこんなにやるとは俺も想像してなかったけど?
でも、残念でしたァ、君たちはこのロック少将が仕留めまぁす!」
どうやら、新手のようだ。
ヘンリーの肩を借りて立ち上がる。ルークとリヴィは剣を構えた。正直、今あのレベルと戦えば勝てないだろう。
ここまでか…?
そう思った矢先、敵は雷に打たれて倒れ込んだ。
「雷魔法 “サンダートーン”いっちょあがり。」
覚えのある赤髪、魔法の主はエルザさんだった。
彼女、やはり王国の兵士だったのか。
何はともあれ、増援の到着か。ひと安心だ。
「上手くいったみたいで良かったよ。」
エルザさんは俺とリヴィを見てそう言った。
俺は静かに頷いた。
「医療班、彼らを治療しながら安全な場所へ。」
「4人ともよく頑張った。後は私たち第1部隊に任せなさい。」
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ちょうど、任務で近くにいた第1部隊の合流で戦局は、一変した。
エルザ=ファーガーソンを含めた5人の中将と、デール大将の力でカテリアは落城し、敵大将を撤退させることに成功した。
しかし、今回の任務は沢山の犠牲者を出すなど、大きな傷痕を残すものとなった。
ーーーーーーーここから読み飛ばし可ーーーーーーー
皆さん、こんにちは!作者です。
第5話いかがだったでしょうか?
「リヴィちゃんをこんなに早く、デレに戻すか否かは、1億年ほど協議しました。
というわけで、次回からもよろしくお願いします!」
正直、この物語をどれ程の方に閲覧していただけているか、わかりませんが、もし、気に入ってくれた方がいらっしゃいましたら、積極的に評価していただけると、大変励みになります。
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今後とも、よろしくお願い致します。