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第15話 悲しき決戦!セシルvsイリス

 「--ハァ、ハア....」

 激しく息が上がる。頭が痛い、昨日から非日常的なことが起こりすぎだ。

 イリスさんが繰り出した雷魔法によって、辺りは黒焦げになっている。俺に死角を供給してくれているこの木も、もうもたないだろう。

 協力して共に窮地を脱した仲間が今、俺に本気の殺意を向けていた..いや、仲間と言うべきかはわからないな、しかし少なくとも俺は.....


 「貴女を信頼していました!!」

 覚悟を決めたと言うべきか、本当はまだ、心のなかで期待していたのかもしれない。戦わずにすむのなら、それに越したことはない。俺は彼女の前に出た。


 「私もだよ、セシル。でも、協力関係は終わったんだ。もともと私たちは敵同士、ジェシカを無事に送り届けた今、優秀な君を生かしておく筋合いはない!」


 俺は彼女の剣を、すんでのところで避けた。雷系統の魔法を絡めてあるのだろう、少しビリッときた。こうすることで、少しでもかすれば痺れて上手く魔法が練れなくなる、そう聞いたことがある。

 彼女は続けて体を上手くひねって、蹴りのモーションに入った。展開が素早く避けきれず、俺は腕と足を使って受けた。

 風魔法を使っていたのか、その蹴りはとても重く、俺は元居た木の方へ、思い切り飛ばされる。


 息が出来ない、体の至るとことが痛む。あんなでたらめな戦闘に付き合っているからだろう。スピードが段違いで、一撃が生死を分けるほどに重い。一瞬も気を抜けないが、ずっと彼女の姿を追うため意識を集中していた目が、既に限界に近い。


 俺は目を瞑った、少しでもそれを休めるためでもあったが、諦めに近いものでもあった。

 俺にあの人は殺せない。--もちろん、力量差もあるが、それよりももっと、精神的な面で、俺は彼女を殺したくないんだと思う。

 一緒に協力していくなかで、俺にとってはもう仲間だった。敵味方なんて関係ないと思ってた、だから、殺すくらいなら、殺してくれ、そういう思いもあって閉じたつもりが、...まぶたの裏には村の皆の姿が浮かんできた。


 --父さん、母さん、先生…もちろん、リヴィ、ヘンリー、ルークも。


 もしここで、俺がなにもせずこのまま死んで、大切な人や村が危機にさらされたとしたら....俺は、一生後悔するっ!!

 

 俺は立ち上がると再び彼女の方へと向き直った。

 俺があの時と同じ、炎魔法で作った剣を持っていたからか、はたまた、本当に表情が変わったのか、彼女はこう、声をかけてきた。

 「いい顔になった、やっとやる気になったみたいだね」と。

 いつでも君を倒せるんだ、そんな余裕も感じた。そもそも俺のような階級で、中将である彼女と対峙していること自体がおかしいんだよなあ。


 そう、チャンスは一度きり。俺は自分に移動強化魔法をかけると、すかさず驚いたように表情を演技しながら、こう大声で叫んだ。


 「よせジェシカ、危ないからそっちに行ってろ!!!」

 

 この俺の言葉に反応して、彼女は勢いよく振り替える。

 そう、彼女には俺がちゃんと送り届けたかどうかなんてわからない。もしかしたらまだ近くにいるかもしれないのだ。


 なにもない空間を少し見つめてから、彼女は状況を理解したらしい、急いでこちらを向こうとするが、体は動かない。それもそのはず、俺の闇魔法が決まったからだ。


 闇魔法には、今俺が使った金縛り系や、イリスさんがジェシカに使った催眠系など、様々種類があるが、一貫しているのは、相手に心の隙があればあるほどかけやすいことだ。

 イリスさん程になると、戦闘体勢ではまずかけることは不可能だが、さっきの彼女は、動揺と困惑の中にいたため、俺でも成功できたのだった。


 「はは、まんまとやられてしまったな..君の勝ちだ、さあ、一思いに殺ってくれ。」

 イリスさんはなんとなくすっきりした表情で、俺を見つめた。

 

 「そう言うわけにはいきませんよ、俺は貴女を殺したくはない、魔法が解けるまでここでじっとしていてもらいま---。」

 

 「..君ならそう言うと思ったよ。」

 言葉を遮るようにして、彼女は呟いた。

 その綺麗な唇からは次の瞬間、赤黒い液体が吹き出した。


 「ゴフッ..」

 見ると俺が持っていた剣が、彼女の腹部を貫いていた。

 俺は急いでそれを消すと、彼女は力なく俺にもたれ掛かった。

 

 「..は??」

 俺は言葉に成らない声を漏らした。何が起こっているのかわからない。


 「詰めが甘いよ、セシル。魔法をかけるところまでは良かったけど...あの程度の拘束じゃ、私は縛りきれない。

 ....ありがとう、セシル。君のお陰で..私は....」

 それっきり、イリスさんは動かなくなった。

 

 <---ザァァァァッ..>


 見計らったかのように、雨が降り始めた。まるで、心のなかを具現化してくれているようだった。

 俺は、馬鹿だ。彼女はこれだけの覚悟を持って、向かってきてくれていたのに..最後まで無知な理想論者のままだった。


 「ははっ!何が兵士だ、戦場とは何かを、全く理解していないじゃないか…」


 そう呟き、俺もその場に倒れこんだ。

 冷たい雨水と混ざって、時々生暖かい液体が頬を伝う。

 その感覚が、あの時あそこでのあり得ない物語、その最後の思い出となった。

 

  皆さん、こんにちは!作者です。


 第15話いかがだったでしょうか?


 「いろいろ忙しく、久々の投稿になってしまい申し訳ありません!

 これからも遅くなることもあるかもしれませんが、なにとぞお付き合いいただけると幸いです!」


 正直、この物語をどれ程の方に閲覧していただけているか、わかりませんが、もし、気に入ってくれた方がいらっしゃいましたら、【公告の下にある、★マークから積極的に評価】や、【ブックマーク】していただけると、大変励みになります。


 また、感想などもらえたら今後の執筆活動(ちょっと偉そうですが…)の参考にさせて頂こうと思っているので、時間のあるときにでも、ぜひ、お願い致します!


 以上、最後の戯れ言までお付き合い頂いた方、もちろん、物語を読んで頂いた方も、ありがとうございました。


 今後とも、よろしくお願い致します。


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