第12話 奈落の絆 俺×敵女騎士×幼女?!
---まずい、やばい、まずい!!!
俺は風魔法を使って、目線の先に見えていた2人に追いついた。しかし、”北方の魔女”と呼ばれていた女性には、銃弾による痛々しい傷跡があり、その影響だろう、気絶してしまっていた。
もちろん、彼女がしっかりと抱きかかえている女の子も、落下のショックで意識はなかった。
「俺が何とかしなくては..。」
今の俺には、ただでさえ苦手な風魔法で3人を落下ダメージから守るのは不可能だ。
「そうなると..」
俺は手のひらへと魔力を集中させる。と、言ってもこんな状況で”アクアブレッド”を出そうなんて思っちゃいない。
集めた魔力を炎系統へと変換し、形を剣状に、変形する。
「伸びろおおおっっ!!」
続いて俺がそう叫ぶと、炎は勢いよく伸長し、先端部分が片方の壁へと突き刺さる。
俺は右手で剣を強く握り、左手のほうで二人を抱える。
突き刺さった部分が、鈍い音を立て壁を削りながら、着実にスピードをを減速させる。
止まってくれ...。
そんな思いが届いたか、3人は地面すれすれで停止した。
「あ、危なかった..。」
安堵から、右手放すと、炎は消え、俺は地面に尻もちをついた。
「いてて..」
さて、一難去ってもまだまだ安心はできない。
俺は再び小さめの炎を練り上げ、周囲を照らす。
俺たちのいる場所は左右を壁に囲まれ、道幅は..6メーターくらいだろうか。前を向いても、後ろを向いても、はたまた上を向いても真っ暗だ。これでは助けも呼べないな...。
周囲に敵がいないことを確認すると、すぐさま元居た場所へ戻る。女性を止血しなければ、--結構シャレにならない量の血が出ていた気がする。
*****
「うっ....君は..?」
止血途中で、彼女が目を覚ましたらしい。辺りを見回したうえで、俺に問いかける。
「え..と、ガイルの兵士です..。あなたがこの子を助けに行くのが見えて、私も..」
そう言って、隣に寝かせておいた女の子を見る。下手に素性がばれて共倒れとか、最悪だし、ユーレリア側であることは黙っておいた。
「あはは、嘘はいいよ、私は一緒に任務にあたる人間の顔はすべて記憶している。そして、君の顔は、あの時初めて見たよ。痛かったろう?蹴飛ばしたりして、すまなかったね。」
嘘は簡単に見抜かれてしまった。しかし、戦闘の意志はないようだ、彼女は続けてこう言った。
「安心してくれ、こんな状況で戦いを始めるほど、私は愚かじゃないよ。--君には助けられたようだしね。私はイリス・ターナー。ここはひとつ、国のことは忘れて協力しよう。」
そう言って彼女は立ち上がった。彼女に倣って、俺も簡単な自己紹介をした。
「ふむ、ところで、セシル。君にはあてがあるのか?--残念だが、私の空間魔法では2人以上の人間を運ぶことはできなくてな...完全にお手上げだ。」
空間魔法..なるほど、だから戦ったときに視認できなかったのか。
「まあ、君の恋人のように感覚でついてくる奴も、たまにいるがな。」
俺の考えていることがなんとなく分かったのか、イリスさんは付け加える。
「..って、恋人ではありませんから!
ていうか、そんなこと言ってる場合じゃないですね..俺にも全く、当てはありませんから....。」
「そうか..。」
彼女がそう言ったときに、もう一つ、声が聞こえてくる。
「--お姉さんたち、だあれ?パパとママは?」
先程まで気絶していた女の子だ。良かった、気が付いた様だ。
「私たちは、そうだな…通りすがりの商人…かな?
君が悪い人に連れて行かれていたから、連れ戻したんだけど…ちょっと色々あって…。」
心配させないようにと、彼女なりの配慮なのか、ところどころ偽ってイリスさんは話す。
「しょーにん??…あ、そうか!スーパーヒーローのことだね!ジェシカのこと、助けてくれてありがとう、お兄さん、お姉さん!」
ジェシカと名乗った女の子は、にっこり笑った。
強くて、良くできた子だ。普通なら泣くところだと思うが…。
「か、かわぃぃ~!うん、そうだよ!必ず、パパとママの所に連れていくからね!」
そう言って、イリスさんはジェシカのことを抱き締めた。うん、確かに、かわいいわ。
それにしても、彼女が小さい子の前で、キャラ変することはよく分かった。
*****
「おーい、2人とも、少し休まないー?」
1時間ほど歩いただろうか、何の根拠もないが、微妙に広い方の道へと進むことにしたが、もうくたくた、だ。
「何を言ってる?ジェシカも頑張ってるんだ、お前がへこたれてどうする!」
イリスさんがこちらを向いた。
この人に言ってもだめだ..。
「おーい、ジェシカ~、疲れたんじゃないか?喉、乾かないか?」
「うん、大丈夫だよ!でも、セシルお兄ちゃんが疲れたなら休もうか!」
良い子っ!!この笑顔を見てたらおじさん、もう少し頑張れそうだよ..。
「2人とも止まってくれ!」
突然、イリスさんが言った。
「なんだ、やっぱり疲れてるんですね!..病み上がりだし、やっぱり少し休憩しましょう!」
「--そうじゃない、何か、変な気配を感じないか?」
イリスさんはそう言って、辺りを警戒する。はて、何のことだろうか?この時、特に何も変だとは感じていなかった。
「え..と、特には..?」
辺りが静寂に包まれた。
しかし、瞬間、地面から出てきた、影のようなものが俺に巻き付いた。
..!!!?
「クソッ!..なんだこれっ」
一瞬で身動きが取れなくなり、その場に跪く。
状況がつかめない..何者かからの攻撃を受けてるのか?
「落ち着けセシル!それは幻覚だ!!」
周囲を見渡すと、イリスさんは、何者かと交戦しているようだった。
そういえば聞いたことがある、闇魔法は、対象に幻覚を見せることができるんだって。
彼女はその後も、いろいろ話しかけていたようだったが、頭がボーっとしてよく理解できなかった。
イリスさん、すみません、もう遅そうです....
俺は、視界が真っ暗になっていくのを、ただ茫然と待つことしかできなかった。
皆さん、こんにちは!作者です。
第12話いかがだったでしょうか?
「この先どうなるのか、僕にも全く見当がつきませんね!!(お前が作者だろッ!)」
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