第11話 勝利と倫理 戦場のジレンマ
新たな任務が、俺たち第5班に出された。
敵、ガイナ王国側にある、国境付近の農村地帯、ルザンヌへの進軍計画に召集されたのだ。
リヴィを除いた3人は、主要部隊として初めて戦地に赴くこととなる。そう考えると、マンネリ化してきた魔法訓練にも、気合が入った。
ルザンヌ攻略部隊は、ガイナの支配地区に入ってから、いくつか村を転々としたが、そこには最低限の警備しかなかった。
おそらく、元からここ、クレーバレー付近で迎え撃つつもりだったのだろう。別名、「暗黒谷」とも呼ばれる、底の見えない谷だ。
この辺りは、土着自治の志向が強く、ガイナの兵士も、地図的にあまり精通しているわけではないという話を聞く。そこで、俺たちもここから攻め込ることになったのだ。
さて、予想通り、谷で待ち伏せにも遭った訳であるが、部隊は氷魔法を駆使し、谷を超え、全て順調に進んでいるかのように思われた。
しかし、1人の女性の出現によって選局は180度変わってしまった。
「遅くなってすまない…」
そう言うと女は周囲の兵士を、次々となぎ倒した。中には大尉や、少将もいたはずだが。
敵軍の士気もあからさまに上昇している。これは早めに決着をつけなければ。
<ギインッ!>
俺の後ろで突然、刃物が重なりあう音がした。
「この人は殺らせない…!」
振り替えると、リヴィが俺を守るようにして、先程の女と対峙していた。
「すまない、リヴィ。」
そう言って俺も彼女の隣で剣を構えた。
「ううん、大丈夫。それより気をつけて、この人の動き、普通じゃ…。」
彼女の話を聞いている途中だが、横腹部に強い衝撃がり、俺は崖近くまで飛ばされる。そんな、今回はしっかり目に神経を集中していたのに…!
リヴィや、クラーク班長らが一緒になって戦うが、防戦一方だ。
そう言えば、ルークとヘンリーの姿も見えない。クソ、無事なんだろうな…!
事態を憂慮したのか、部隊長、カークランドが声を張る。
「やはり来たか、北方の魔女よ。」
彼は何故か、小さな子供を連れていた。ここに来るまでの村にいた子だろうか。
「お前らガイナは..罪深き集団だ。.....こんな抵抗をしなければ、この子もきっと幸せに暮らせただろうに。」
彼は、崖に近づく。おいおい、なにをするつもりだ?!まさか…
「よせ、止めろ!!」
誰かが制止を試みるが、遅かった。
---子供が崖から落とされた。この光景を見ていた者たちは皆、瞬間、停止した。ただ1人を除いて。
先ほどまで戦場を無双していた、《北方の魔女》は、落とされた子供を追って崖に飛び込んだ。
すると不敵な笑みを浮かべたカークランドは、がけ下に向かって数発、発砲した。
「ククク、動揺を誘うほどのつもりだったが、思わぬ収穫だ!こうして我々は、また1歩勝利に近づいた!」
そう言って、カークランドは大笑いする。
---これでいいのか?そんな彼を見て、俺は自答する。
この先、ユーレリア側は、こんな戦い方を続けるのか?
これでは、勝利したとしても..
「全然うれしくねぇよ!」
---セシル・ハルガダナはそう言うと、彼女たちを追って崖に飛び込んだ。
「嘘..!セシル!!」
リヴィエルはそう言って崖に近づこうとするが、部隊長に止められる。
「あんな売国奴、ほおって起きなさい。一時の感情に流されおって。彼は兵士失格だよ。」
「どいて...!!」
彼女は彼を、力いっぱいにらみつけた。
「なあっ、貴様、上官に向かって..!」
憤る二人の間に、クラーク班長が仲裁に入る。
「なあに、セシルもやわな訓練はしていない、今は信じて待つしかなかろうのぅ。」
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第11話いかがだったでしょうか?
「新章突入!」
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