第10話 出会いと別れ、そして再開! 新生第5班!
襲撃事件から一夜明けた。今回の事件に関しては、王国軍も大規模な調査に乗り出している。戦線の近くならまだしも、こんな場所まで敵の侵入を許したのだから、当たり前だろう。誰かが手引きをした可能性も濃い。
魔法学校のほうはというと、メガネのあの教師も、ほかの生徒たちも、3組のことを認めてくれたようで、今までのことを謝罪してくれたようだ。
さて、俺たちも、村と子どもたちを救った英雄としてもてなされた。しかし、居心地のいいこの村とも、そろそろおさらばしなくてはならない。なぜなら、俺たちは王国を守る兵士だからだ。
名残惜しそうに見送ってくれる子供たちが見えなくなるまで、俺たちは手を振り続けた。
そして、この班も..。主要拠点のあるラダリアに戻ると、各々、別の方向へと歩き出す。
もともと、臨時で組まれた班だが、終わってみれば、ずっとこの班でもいいと思えるような居心地のいい環境になっていた。
また、いつか一緒に仕事ができる日を楽しみにして、俺たちは自分たちのいるべき場所へと戻るのだった。
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「えー、これで晴れて新生第5班が揃ったのぉ!」
クラーク班長の言葉に、早速ルークが反応する。
「誰かさんはまだ怪我をしているようだがな。」
いつも通りの言葉だ。こいつのこういう言葉は、単にバカにしてる訳じゃなくて、早く直せと言う真意をはらんでいることを知っている。戻ってきたって感じで、落ち着くなぁ…。
そう、俺は任務での“アクアブレッド”2発でまた、骨折を再発してしまった。
「お帰り、セシル。」
「セシル、ちゃんとご飯食べてた?マーシャとか他のメンバーにいじめられなかった??」
ヘンリーにリヴィエル、2人の声を聞くのも久しぶりだ。
「早速だが、訓練を始めようかのう。次回の訓練が、いつ発表されるかもわからんしの。」
そう言って班長は、俺たちを演習広場へとつれてきた。ここなら、王国軍の施設で、周りを気にせず訓練が行える。
「さて、今日君たちに教えるのは、中・広範囲魔法じゃ。」
「文字通り、広い範囲を攻撃対象とする魔法で、任務を行っていれば、必ず必要となってくる技術じゃ。」
あ…!俺はマーシャが使っていた、光魔法を思い出した。あれはすごく助かった。
「百聞は一見にしかず、見せてみようかの。」
そう言って、クラーク班長は広い方に向き直し、大きく息を吸った。
「炎魔法 “ファイアブレス!”」
そう唱えた瞬間、彼の口から吹き出された炎が、前方を覆った。大きさは、大きめの一軒家がすっぽりと入ってしまうほどだ。班長は、これでも抑えたほうだと言っている。
「この魔法では、体内にためていた魔力を、吸い込んだ息とともに一気に吐き出す。その時に、口の中で炎系統に変換を行っているんじゃ。ほかの系統の魔法にせよ、この”呼吸法”が魔法で、一番スタンダードだといえる。」
全体の訓練は、俺たちの魔力の量の問題もあり、少し早めに終了した。もっとも、ルークは、そもそもの魔力が少なく、今回の魔法には向かないため、班長と体術の訓練を行っていた。そして、クラーク班長は、訓練の後、俺を呼び止めた。
「さあ、セシル…君には追加で、特別補修を付けようかのう。--君が今、やるべきことは何だと思う?」
クラーク班長が問いかける。
はて、怪我を直すことだろうか?
「それもそうだが、君は“アクアブレッド”をリスクなしで打てるようにならなければならない。でなければ、あの技を打つことは<禁止>する。」
まあ、打つたびに怪我をしてたんじゃ仕方がない。
「でも、どうやってです?」
骨の強化など、どうしようもないのではないだろうか。
「もしかしたら…打つときに、魔力を腕に集めることが出来れば、衝撃を抑えられるかもしれないのぉ。」
なるほど、それなら何とかなるかもしれないが…。
「残念ながら、無理だと思います…」
手のひらに全神経を集中しているなかで、更に腕に意識をかけるなんて……。
「いいや、どうだろうな、セシル。君のスキルは、今まで見たことがないと言ったね、出来ないと結論付けるのは、早いのではないか?」
「さっき教えた中・公範囲魔法もあるし、ゆっくり覚えればいい。でも、わしがあとどのくらい君たちに教えられるかもわからない。わしはな、君たちのチームワークや、秘められた力が開花していく姿を見ていてすごく楽しい。そう長くない、もう少し、年寄りのささやかな楽しみに付き合ってほしい。」
そう言うと、班長は照れ臭そうに「また明日な。」と言って去っていった。
…そう、この時間は永遠には続かない。俺たちが兵士ならなおさらだ。だからこそ、今を全力で生きるしかない。
ーーーーーーーここから読み飛ばし可ーーーーーーー
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第10話いかがだったでしょうか?
「遂に、今回で累計10話目です!」
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