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【書籍&コミック4巻発売中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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21 女神は微笑む

 むしろ会長の方が大惨事で、白いブラウスにスイカ味の赤い染みが出来ていた。赤の方がもちろん目立つ。

 張りのある胸部のド真ん中が染まっていて……目のやり場に困る!


「と、とりあえずこれ! これで拭いてください!」


 俺は会長から目を逸らしながら、勢いよくハンカチを差し出した。本人は至って冷静に受け取る。


「庶民のアイスって、食べ方が難しいのね。勉強になったわ」

「まあ知らない間に溶けていますね、よく……」

「紳士的にハンカチもありがとう。お借りして、洗って返すわね」


 俺の飾り気のない安物ハンカチを、会長はふにっと胸に押して当てる。次々と垂れてくるアイスは舌先で掬い取っていた。

 いちいち所作に色気があるせいで、俺じゃなかったら健全な高校生男子は軽く弄ばれていそうだ。hayateにもこれが『男の色気』として加わっているのか。


 俺が雨宮さん一筋のhikariでよかった。


「どこまで話したかしら……そうそう! 私はhayateとしてまだまだ躍進したいから、hikariさんにはコラボを受けて欲しいのよね」


 思い出したように言う会長と、路地を出るため角を曲がる。スタジオはもうそこというところで、まさかのコラボ打診だった。


「あー……その件ですか」

「hikariさんが断ったって、クリスティーナから聞いたわ。私、とっても残念で悲しくて泣いちゃったの」

「明らかな嘘ですね……」

「泣いたのは嘘だけど、コラボしたいのは本当よ」


 一歩前に出て、会長はくるっと俺に向き合った。

 亜麻色の髪が夏の気配を孕んだ風に揺れる。


 ブラウスは拭いても染みが残ってしまっているが、それより蠱惑的に吊り上がる唇に視線が吸い寄せられる。


「晴間くんがコラボを受けて、ついでに生徒会にも入ってくれたら……最高のお礼をしてあげる」

「最高のお礼……?」


 またもや、健全な高校生男子だったら良からぬ想像をしそうだ。

 だが俺を動かせるのは、雨宮さんの可愛さのみ。


 生徒会入りはもともと、その雨宮さんのおねだりでOKするつもりではあるが、コラボはまた別だ。中身が男装女子だろうとなんだろうと、イケメンとセット売りは光輝の小さな自尊心が傷付く。


 ちゃっかりどちらも言質を取ろうとする会長に、俺は負けない。


「そう警戒しないで。雨宮ちゃんにも関わる取引よ」

「雨宮さんに……?」

「晴間くんは可愛いカノジョと、素敵な一夏の思い出を作りたくはないかしら」

「そりゃ作りたいですよ」


 脈絡のない質問だが、俺は反射で答えていた。

 本気の本気で作りたいからだ。


「私のお礼っていうのはね――」


 会長の告げた取引内容は悪魔の囁きだった。

 思考時間は約二秒。

 俺はあっさり負けた。


「……生徒会もコラボも、やらせて頂きます」

「決定ね!」


 ああ、雨宮さん。心の弱い俺を「めっ!」と可愛く叱ってくれ。


「hikariとhayateなんて、世間が大騒ぎになること間違いなしよ」


 ちょっとだけhayateモードになった会長が、「僕も全力で挑まないとね」と、色男の顔つきでウィンクする。


 完全敗北した俺はなんとも複雑な気持ちで、小さくなった残りのアイスキャンディーを口に入れた。

 このアイスは運試しのくじ引き付き。

 当たればもう一本もらえるやつなので棒を裏返すも、そう運よくはいかず普通にハズレだった。俺、こういうの当たったことないんだよな……。


「あら、当たったわ」

「え」


 しかし、同時に食べ終わっていた会長は、当たりと書かれた棒を片手にいたずらっぽく笑う。


 初めて食べて一発当たりを引くとは。

 それってどのくらいの確率なんだろう。


 過酷な環境から吹っ切れた男装令嬢には、運の女神も逆らえないらしい。



「そういうことで――これからもよろしくね、晴間くん?」


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書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
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