8 世界で二番目に浴衣も可愛い
「ご、ごめんね! 多忙なhikariさんの時間を奪うようなこと、つい口にしちゃって……!」
「いや、俺も入るよ生徒会。この夏はやっぱり生徒会だよな、生徒会しかない。一緒にやろう、レッツ生徒会」
「いいのっ!?」
雨宮さんのおねだりに負けて、俺は生徒会入りを了承してしまった。
hikari活動はもちろん仕事なので大切だが、カノジョと学校で過ごす青春の時間も大切だ。俺は切実に、雨宮さんとの青い春も謳歌したい。
「嬉しいな……晴間くんといられる時間、増えるの」
箸を手に頬をピンク色に染めて、はにかむ雨宮さん。これは殺傷力がヤバい。
すでに可愛いさで天下を取れる。
「でも一応、美空姉さんには報告してからかな。許可出ないなんてこと絶対ないだろうけど、俺は許可取ってから生徒会長にOKしにいくよ」
「じゃ、じゃあ私もその時にお伝えするね! 文化祭までに人手が欲しいって話されていたから、私たちが生徒会のお仕事を始めるのも、きっと夏休み開けからだろうし……」
そう、夏休み。
夏といえばプールに海、お祭りとイベントが目白押しだ。
昨年まではhikariとしてモデルの依頼をこなすしかなかったが、今年の俺には世界一可愛いカノジョがいる。
ハレルヤ。
神に感謝しなくては!
そうして生徒会入りを決めた俺たちは、夏休みの心踊るワクワクな予定もちょっと話しつつ、昼食タイムを再開するのだった。
※
「へぇー、夏休みの予定に、生徒会入りの話! いいねいいね、青春盛り沢山だね!」
アメアメも御用達の、有名スタジオにて。
俺は撮影開始を控え、控え室でココロさんの魔法の手によって、hikari仕様へと変身しているところだった。
今は飴色のウィッグをつけたところで、ヘアアレンジ中だ。
その最中、いつものようにココロさんに、学校での出来事を世間話ついでに語れば、若者の話題に飢えているらしい彼女は嬉々として食いついた。
「ただでさえ学生さんの夏は、若々しい夏服が眩しい季節……! hikariちゃんのセーラー服とか見たいなあ。あと水着! ビキニ!」
「ちょっと……ビキニは遠慮したいです……」
ドレッサーの鏡越しに見るココロさんは、「タンキニとかならイケる、イケる!」とはしゃいでいるが、俺のメンタルがイケない。
なおタンキニとは、『タンクトップ・ビキニ』の略だ。トップ部分がタンクトップやキャミソール型になっていて、通常のビキニにより露出が控え目である。
まだセーラー服なら……hikariは確実に似合うだろうな。
男子高校生たちの性癖を歪ませる恐れさえある。
雨宮さんのセーラー服も最高だがな。ほっそりとした白い腕が目の毒で……いやいや、俺は変態か!?
「ゴホンッ! さ、さすがにそれはNGとして、こうやって別の夏らしい格好はしているじゃないですか」
俺は正面の鏡に目を向ける。
本日は企業主催の花火大会において、イメージモデルとしての依頼が来て、浴衣姿でポスターの撮影である。急遽決まったため、日程的にも失敗はできない。
しかし……赤い花と蝶が華やかに描かれた黒地の浴衣に、浅葱色の帯にレエスもあしらい、髪は編み込んでシニヨンにまとめた俺は、いつもに増して可愛かった。
ココロさんいわく、シニヨンは『うなじ』を意味するフランス語が語源。アレンジの仕方が無限大なおだんご風のまとめ髪だ。
おかげで品のいい大人っぽさの中に、愛らしさが完璧に共存している。
こんな俺が載るポスターが出回った日には、花火大会会場が大変なことになるぜ。
「浴衣のhikariもマジぐうカワ」
「うんうん、光輝くんの自信過剰は今日も絶好調だね! でもねぇ、このスタジオは今、他にも大物が来ているんだよねぇ」
ニヤリと、ココロさんがロリっ子フェイスで悪戯っぽく笑う。





