10 コンテスト準備中
さて、『集まれ! ロリータガール! 一番可愛いのはあなた★ コーディネートコンテスト』だが、これは地域単位でやっている小規模な企画……などではけっしてなく、全国区の大イベントだった。
きちんと調べてみたら、ロリータガールの間では、このコンテストに名を残すことは大いなる名誉なのだとか。
そのため応募者数も毎年、軽く3000人は越え、審査も三次審査まであってとても厳しい仕様だ。
ナンバーワンロリータガールが、審査員長のお眼鏡に叶う子がおらず決まらなかった年もあると聞く。
なお審査員長の『バタフライ畠山』さんは、ロリータ界のレジェンドとも言われているお方らしい。
名前からまず強キャラの匂いがする。
――そんなコンテストに、俺と雲雀は今から挑むわけだ。
「……先輩、課題の作文の方を書いてきたのですが、念のためチェックして頂けますか」
「お、早いな。見させてもらうな」
雲雀がバッグから取り出した四百字詰めの原稿用紙に、俺はさっそく目を通す。
ここは前にも、雲雀と各々の事情を語り合った喫茶店。
向かい合わせでソファ席に座り、俺はコーラ、雲雀はまたもやメロンソーダを注文した。
俺たちの作戦会議は放課後、もっぱらここで行う流れになっている。
「うん、いいんじゃないか? 文章上手いな、雲雀」
コンテストの第一次審査は書類選考ということで、軽いプロフィールとロリータな写真、そして『あなたのロリータ愛を語ってください』というミニ作文を提出することになっている。
写真がもっとも重要なことは確かだが、作文も配点的に軽視はできない。
しかしながら危惧せずとも、雲雀の書いてきた文は、ロリータへの愛が伝わるいい出来だった。
「……将来の夢は、雑誌などのライターになることなので。文章を書くのはそこそこ得意なんです」
「えっ、そうなのか」
そういえば、前に将来の夢があるとかなんとか、チラッとこぼしていたな。
「だからこんなに手慣れていて上手いんだな。どうしてライターになりたいんだ?」
「なぜそこまで先輩に言わなきゃいけないんですか?」
「いや、言いたくないならいいけどよ……」
「言いたくないとは言っていません。尊敬する従姉妹がそういう仕事をしているから、少し憧れているだけです」
コイツは一度トゲを挟まないとまともに会話できないのか? とも思ったが、これでもすんなり教えてくれた方だろう。
従姉妹の影響か。
俺も美空姉さんの影響は強いし、シンパシーを感じるな。
「雲雀ならいいライターになれるだろうな」
「下手なお世辞は止めてください」
「いやいや、お世辞じゃないって。俺は雲雀の書く文章、好きだぞ」
ストレートにそう述べたら、オレンジの電球に照らされた雲雀の頬に、ほんのりとだが赤みがさした。
これは照れている?
毒舌の暗雲姫がまさかの照れ?
俺は畳み掛けてみる。
「それに雨宮さんのインタビュー記事も読んだけど、あれもすごくよかったし! 雨宮さんの可愛い魅力が存分に滲み出た、まさしく天才的な記事だった!」
生徒会を代表して雲雀が行った、雨宮さんへのインタビューは無事に終了。雨宮さんは『今月の注目人物』として記事になり、校内広報に掲載された。
普段は広報なんてほとんど俺は読まないが、雨宮さんの記事だけは穴があくほど読んだぜ。
俺が読んだって報告したときの雨宮さん、「も、もう! 晴間くんはこれ以上は読んじゃダメ……!」って恥ずかしがっていて可愛かったな。雨宮さん可愛いよ雨宮さん。
「……先輩は、雨宮先輩とはお付き合いをされているんですか?」
「ぶっ!」
口につけかけていたコーラを、ベタに危うく吹き掛けた。
あ、雨宮さんと付き合う?
付き合うってなんだ? ナンダ? ツキアウ?
「彼女かと思ったんですが。その様子じゃ違うようですね」
「カノジョ!? お、俺と雨宮さんは、と、友達で……!」
「――例えば、ですが」
きゅっと、雲雀が桜色の唇を一度引き結ぶ。
「本当に例えばですからね? 年下の……『後輩の彼女』とか、先輩はどう思いますか?」
「えっ、後輩?」
雲雀みたいな?
と首を傾げたところで、雲雀は「いえ、やっぱりなんでもありません」とプイッと顔を逸らす。
「戯れ言ですから、お気になさらず」
「お、おう」
「それより作文に問題がないなら、次は写真の打ち合わせをしましょう。あまり時間がないんですから」
雲雀が俺の手から作文を抜き取る。
腑に落ちないものを抱きながらも、俺たちはコンテストに向けて準備を進めるのだった。





